ダウン奪取でなぜダンスを踊ったか? グローブを合わせたとき、彼は言ったんだ。『さあ、学校に行こうぜ。教えてやるよ』って。だから──
試合は、オーソからサウスポー構えにスイッチも見せるガヌーが、3Rに左フックでダウンを奪い先制。フューリーのクリンチに削られることもなく後半戦に。7Rにもフューリーの入りにガヌーが右フックを合わせて、フューリーをスリップさせる場面を作り、8Rにも再び左ストレートから、近距離での左右フック、アッパーとガヌーは攻勢に。しかし、フューリーも左右にスイッチしてのジャブ、巧みなクリンチでポイントアウトした。
判定は、最初のコールは95-94でガヌーも、2者は96-93, 95-94でフューリーを支持。判定2-1のスプリットでフューリーが辛勝している。
試合前のオッズは、フューリーの1.07倍に比べ、ガヌーは9.20倍と大差のアンダードッグだった。
以前、UFCパフォーマンス・インスティテュートでパンチ力を計測したガヌーは、ファミリーカーが衝突する威力に等しい96馬力を記録し、それまでの最高記録を更新している。そのパワーハンドに注目がいきがちだったが、今回のダウンを奪ったそれは、オーソに戻したフューリーの2度目のワンツーに、ガヌーが左前手のフックをカウンターでシャープに打ち抜いたものだった。
試合後の『CompuBox』のパンチ統計によれば、3Rにダウンを奪われた後、フューリーはジャブで試合を組み立て直し、4R以降、フューリーは28発のジャブと24発のパワーパンチをヒット。トータルではフューリーが223発を放ち71発をヒット、ガヌーは231発を放ち、59発のヒットだった。フューリーはガヌーよりも17本多くのジャブをヒットさせている。しかし、パワーパンチに限ればフューリーが86発中32発を着弾、ガヌーが116発37発が着弾とフューリーよりも5発多くのパワーパンチを打ち込でいた。
The first highlight of the main event went to @Francis_Ngannou in round 3️⃣ 😲#FuryNgannou pic.twitter.com/ByNHW5lKR1
— DAZN Boxing (@DAZNBoxing) October 29, 2023
試合前のインタビューでガヌーは、「僕は実際MMAを始める前からボクシングをやっていた。だからボクシングからMMAに転向した形だ。時間をかけて自分のボクシングをMMAへアジャストする必要があった。ボクシングは難しい。本当に難しい。距離を作らなくちゃいけない。今はジャブで空間を作ることを勉強していて、反射神経と前進する力を強化してる最中だ。でも次の数カ月でそれらを身につける自信がある。僕には改善の余地がまだまだたくさんあるけど、それをする自信もあるよ」と語っている通り、ボクシングのバックボーンをMMAに活かし、再びボクシングにアジャストをしてきた。
同じタイミングでワンツーを高さを変えて打ってきたフューリーに対して、MMAでも培った近い距離での左を打ち抜いたガヌー。
その左はUFCでもミオシッチから王座を奪ったオーソからのカウンターの左前手の一撃だった。
年間ベストMMAコーチに選出されたエリック・ニックシック、K-1でも活躍した元プロボクサーのデューウィー・クーパーから指導を受け、今回の試合の花道では、マイク・タイソンに加え、同じアフリカ出身の元UFC世界王者カマル・ウスマンとイズラエル・アデサニヤが脇を固めていた。
ガヌーは試合後、自身のYouTubeチャンネルを更新。試合直前のリング上での出来事を明かした。グローブタッチ時、フューリーはガヌーに話しかけてきたという。
「グローブを合わせると、彼は『さあ、学校に行こうぜ。教えてやるよ』って言った。僕は、“このクソ野郎、学校になんか連れて行かれるものか”と。だからこそ、僕が彼をダウンさせたとき、僕は踊っていたんだ。“あんたは悪い教師だよ”って。“誰が誰を学校に連れて行く”って?」
試合後、左目を大きく腫らした顔を見せたフューリー。次のステップとして、12月23日にオレクサンドル・ウシクとの4団体統一戦が行われる予定だが、ガヌーとの試合で傷ついたため、日程が変更になる可能性がある。
フューリーは試合後、「全く予想通りにはいかなかった。フランシスは素晴らしいファイターだ。彼は強く、パンチ力もあり、予想以上に素晴らしいボクサーだ。(ダウンは)ボクシングにはつきものだ。また後頭部をとられた。まあ大丈夫だと思う。前回の試合から11カ月、それだけの長い間リングから離れていた。その影響が見てとれたと思う。錆びついていたことは否めない。しかし、彼は偉大なファイターだったし、いいパンチを貰った。左目の上には傷がある。それがヘッドバットによるものなのかは分からないけれど」と、淡々と語った。