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インタビュー

【RIZIN】浅倉カンナ、冷静と情熱のあいだで──「(トラウマは)正直あるけど、ここを超えなきゃ次に行けない」

2019/08/09 23:08
【RIZIN】浅倉カンナ、冷静と情熱のあいだで──「(トラウマは)正直あるけど、ここを超えなきゃ次に行けない」

2019年8月18日(日)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催される『RIZIN.18』でアリーシャ・ザペテラ(アメリカ/SCORPION FIGHTING SYSTEM)と対戦する浅倉カンナ(パラエストラ松戸)が9日、パラエストラ柏で公開練習を行った。

ミットを担当したのは、第5代PANCRASEフライ級王者で2019年にパラエストラ千葉ネットワークに移籍、現在ONE Championshipで活躍中の仙三。その仙三が持つミットに浅倉はサウスポー構えから長いジャブ、そして鋭い左ストレートを何度も打ち込んでみせた。

練習後の囲み取材では、「ここまで順調に来てます。今回の試合は負けるのが怖くて、その分練習に向き合ってここまでこれたので、順調かなと思います」と、「順調」と「怖い」という相反する言葉を並べながら、葛藤があったことを明かした浅倉。

続けて「(負けると怖いというのは)RIZINで2連敗してるので、試合が怖いというよりも負けるのが怖いなという思いがあったんですけど、今の状態で(恐怖を)打ち消せているので、あとは来週しっかり仕上げて試合に臨みたいです。いつもと違う感覚で焦りがありました。(負けるのが)怖い分、集中してやってこれたので、いい仕上がりに出来たと自分では思っています」と、大晦日の浜崎朱加戦の一本負け、6月の山本美憂戦の判定負け(※3月DEEP JEWELSでは前澤智に判定勝ちしている)から、今回の再起戦に臨むまでに怖さを払拭できた、と語った。

対戦相手のザペテラはリオ五輪の元米国代表候補というレスラー。山本と同じレスラー相手との連戦になることについて、「トラウマがあるのでは?」の問いに浅倉は、「正直それはあるんですけど」と不安を吐露しながらも、「ここを超えなきゃ次に行けないので、そういう相手をRIZINが用意してくれたのは“ここを越えろ”という意図があるのかなと思うので、しっかり倒して次にいきたいと思います」と前を向いた。

「パッとしない試合が多いので、しっかり判定ではなく勝ちたいです。前回はフィジカルとか打撃もダメだったので、今回は打撃もできるぞというところも見せたい。名古屋での大会は初なので、普段観に来られない方もいると思うので、格闘技の魅力だったり、自分の魅力を知ってもらえるような試合がしたいです」と、再起戦に向け気丈に語った浅倉。

同門の先生でもある扇久保博正が7月大会で強豪の元谷友貴にスプリット判定で競り勝ったことも力になったという。「扇久保先生を筆頭にチームでやっています。扇久保先生が勝って試合が終わってすぐなのに指導に入ってくれて。そういった部分でも負けられないです。それに今回も征矢くんと一緒に出られるので、今回こそ一緒に勝ちたいと思います」と、いつもセコンドにつく両者の勝利とともに、自身も勝ち名乗りを受けることを誓った。

囲み取材後、本誌は浅倉に単独取材。連敗の不安のなかで、それでも「Bellatorの試合を観て、海外には強い選手がたくさんいるなって。自分がちっぽけに見えて、挑戦していきたいなという気持ちが湧きました」と、前向きな想いを語った。

浅倉「自分には戦いでキレる、そういう才能がなかった。でも……」

──6月の美憂戦の敗戦から2カ月後の再起戦となりました。短めのスパンでの連戦になります。

「正直、8月は止めようかなという思いもありました。今までは負けた後もすぐに試合をした方が自分も気持ち的に上がったんですけど、今回は落ち込みすぎて……なかなかそういう気にはなれなかったんです。全部をもうちょっと改善して試せるくらいになってから試合がいいなとも思っていて。でも、声をかけていただいて、そういう(時間を置くのも)必要だけど経験も必要なのかなと思って、今回、出ることを決めました。決まれば決まったでやるしかない。そこは気持ちを切り替えられたし、その分、短期間でどれだけ自分が悪かったところを変えられるかという、ほんとうに濃い練習ができたので、今回、試合に出させてもらえてよかったなと思います」

──RIZINでは「連敗」ということが大きかった?

「大きかったですね。今まで(連敗は)なかったんで。いままで勝ち続けたプレッシャーはあったんですけど、連敗は不安ばかりで、もう試合やりたくないって、大丈夫かなって思ったんですけど、その分、この試合に賭けて集中して練習することができました。それがいい結果に出るんじゃないかなと思います」

──矢地祐介選手も連敗のなかで大一番に臨みました。

「自分も同じ立場にいると思うので、あの中でああいう試合を続けている矢地さんを尊敬しているし、自分も負けるのは怖いですけど、負けを怖がらずに勢いも必要なのかなと思います」

──浜崎選手が、挑戦してくる若い選手としては「カンナちゃんが抜けていると思う」と評価していました。

「そんなことを言ってくれたんですか。でも2連敗で下まで落ちちゃったんで、また浜崎さんのベルトまで行くのにはもうちょっと時間がかかりそうなので、まずは次に勝たないと後がないので、しっかりいい勝ち方をしたいですね」

──前戦では、あの山本美憂選手を首投げで投げ、テイクダウンから上を取ることもありました、がそこから切り返されたりもしました。どう課題をとらえましたか。

「そうですね……ほんとうに悔しすぎて、実は自分の試合を1回も見返していないんですけど、テイクダウンはできているし、自分のなかではフィジカルと打撃と下からの極め(が課題)かなと思って、そこを重点的にやってきました」

──美憂選手の小手がとても強いように感じました。そして際の打撃も多くなって。

「いやー、小手もパワーも強かったです。組んだ瞬間に圧がありました。男子選手と同じくらいの」

──今回フィジカルも強化しているようですね。

「試合後、一回、気持ちが折れてしまったんですけど、だけどフィジカルだけは次の試合、ということだけでなく、今後もやっていかなくちゃいけないことなので、やり始めてました」

──まだまだ成長期ですし、段階的に強化されていくのではないでしょうか。

「柏にもトレーニングマシンがあって、ほんとうに自分もウェイトを(メニューに)入れてから気づいたんですけど、簡単につくものじゃなくて、やっぱりまだ成果が出ているかというとそんなにはっきりと分かることではないんですけど、これが1年先、2年先と続いていくなかで、成果がでてくるのかなと思っています」

──対戦相手のザペテラですが、レスリングで実績があり、豆タンクのような試合ぶりでした。

「そうですね。結構低くて、自分が怖がらずに行ければ行けるんじゃないかなと思います」

──手足は長くないけれどパワフルなテイクダウンを持っています。ただ前足重心なので蹴れたら、とも思いました。

「そうですね。打撃はスピードよりもパワー系だなと感じました。今回、自分のなかで打撃を試してみたいと思っています」

──プロデビューから5連勝にはInvicta FCでアンバー・ブラウン、ジュリアン・ディコーゼイに判定勝ちというしっかりとしたキャリアを持ちながら、前戦では魅津希選手に判定負けしているヴィヴィアナ・ペレイラにザペテラは判定負けしています。そこではペレイラのジャブに手を焼いていました。

「はい。しっかりジャブをつきたいです。打撃の時間を多くしたいと思っています。あまり試したことがないので、鶴屋先生にもちょっとやってみたいです、と話しています」

──浅倉選手の世界での立ち位置も確認できそうです。年末のBellatorとの対抗戦も発表されて、対世界に出ていきたいという気持ちもありますか。

「そうですね……前回の(RENAの)Bellatorの試合も観にいかせてもらって。負けてすぐだったんですけど、そこでちょっとモチベーションが上がったんです。やっぱり海外には強い選手がたくさんいるなって。自分がちっぽけに見えて、挑戦していきたいなという気持ちがありますね」

──ところで、今回は特に悪夢を見るそうですね。

「なんででしょうね(笑)。試合が怖いというのはみんなあると思うんですけど、今回は特にほんとうに見てますね。相手は1回も出てこなくて、まったく別の何かに追われたり、誰かがいなくなってしまいそうな夢とか……起きて“あっ夢か”って」

──それは試合が終わると見なくなるのですか。

「全く見なくなります(笑)。普段は夢は見ないんですよ。疲れているからぐっすり眠れるはずなんですけど」

──試合中はどんな気持ちで戦うのでしょう。相手を潰してやる、と殺気立つ状態を作る選手もいます。浅倉選手は?

「なんていうか、自分は格闘技に向いていない性格だと思うので、そういう気持ちになったことがないんです。その分、冷静に戦えてはいるんじゃないかな、というのはあります。ほんとうはそういう気持ちもほしいんですけど、そういう気持ちを出せるのも才能だと思うんです。自分にはそういう才能がなかったので。たとえば打たれたらナニクソッて思う人もいると思うんですけど、自分は“ヤバイ、打たれてる、どうにかしなきゃ”って思う感じで(苦笑)、だからプチッて試合で切れる人がうらやましい部分もあります。スイッチが入る人。そういうのが自分はなくて作れるものでもなくて……」

──でも、山本戦でもスタンドでバックから顔を殴られながらひとつずつ手順を踏んで正対して組み直して四つから思い切りよく投げた。ああいった場面を見ると、冷静さとともに気の強さを感じます。

「はい。その分、冷静にいられて別の部分でカバーできていると思います」

──人生のなかでキレたことはあまりない?

「いや、怒ることはありますよ!(笑)。あるんですけど……なんていうか、自分の感情を人に伝えるのが苦手で、あまり表に出さないで生きてきたので、怒っていても笑って済ましていたのかもしれません。人よりプチンとなることはないですね」

──そうしてため込んだものが悪夢になって出てきているのかもしれませんね。

「あー、そうかもしれないです」

──怒ったことは表していいと思いますよ。「そんな質問しないでください」とか、「鶴屋先生、それはできません」とか(笑)。

「あー言ってみる(笑)……それを言ったことで“あー言っちゃった”って怖くなって悪夢を見そうです(苦笑)」

──束の間の休息で花火を見ることができたようですね。

「花火も見たんですけど、夏はまだあれしか感じてなくて(苦笑)、練習の暑さでしか夏を感じられていないです」

──試合で勝って夏を楽しみたいですね。

「はい。勝っていい夏を過ごしたいです!」

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