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【RTU】原口伸「対戦相手が変わってもやることは何も変わらない」、上久保「“戦うのはもういい”って思ってもらう」=8月27日(日)『ROAD TO UFC 2』準決勝

2023/08/26 14:08
 2023年8月27日(日)シンガポール・カランのシンガポール・インドアスタジアムで開催される『ROAD TO UFC 2』エピソード5&6の前日本計量が現地時間9時から行われ、日本人4選手が計量をパスした。  しかし、原口の対戦相手のバテボラティ・バハテボラ(中国)が計量開始から1時間20分後に計量、161ポンド(73.02kg)の大幅体重超過。試合を望む原口に、バハテボラのメディカルとコミッションのチェックの結果、非トーナメント戦に入っていたAFCライト級王者のパク・ジェヒョン(韓国)が新たに原口のトーナメント準決勝の相手となった。  奇しくも26日の『ROAD FC 65』で原口伸の兄の央が「63キロ級トーナメント準決勝」で対戦予定だったラザバリ・シェイドゥラエフが失格となっており(※10月29日の決勝で原口央はキム・スーチョルvs.ブルーノ・アゼベド戦の勝者と対戦)、今回の『RTU』での伸の相手が体重超過で、兄弟そろっての対戦相手の計量ミスに見舞われている。  パク・ジェヒョン(韓国・6勝1敗・2KO/TKO 2SUB)と急遽トーナメント準決勝で対戦することになった原口伸は、フェイスオフで、178cmの大きな身体のジェヒョンと向かい合うと、計量後のU-NEXTのX(旧ツイッター)にて、「自分のやりたいことを貫くだけ」と語っている。 「練習部屋で僕のタックルをずっと見ていたらしくて──」 ──計量後のリカバリーは? 「特に可かもなく不可も無く普通に戻せていて、いつも通りです」 ──対戦相手のバテボラティ・バハテボラ(中国)が、ライト級で155ポンド+1ポンド規定のなか、161ポンドで2.26kgの体重超過でした。今回のパク・ジェヒョン(韓国)への対戦相手変更の試合を行う最終決定に至るまで、長い時間がかかりました。その時間経過における心境は? 「去年、風間選手の準決勝が無くなったみたいに“試合が無くなるのかな?”と思って“ここまで準備したのにな”と思っていました。そのあと『もしかしら、できるかもしれない』と。そしたらまた今度は『リザーバーがいる』(非トーナメント戦に出場を予定していた)と。二転三転して、ちょっと、動揺してないといったら嘘になるのですが、こういうトラブルも含めて、あとにこの先に繋がる糧になるって信じて、これくらいで動揺していたらUFCの本戦が決まったあとにも動揺してしまうなと思って、ここはドンと構えようと思いました」 ──突然対戦することになった相手のことは、やはり決定時まで特に情報も無かったのでしょうか。 「昨日、(ホテル内の)トレーニングルームが一緒だったんですよ。その時、打撃がめちゃくちゃ本気で。相手がサウスポーからオーソドックスに変わったので、右の攻撃とか気をつけなきゃいけないと、あやふやですが今のところ思っています。自分のスタイルは相手に選択させるもので、自分は自分のやりたいことを貫くだけなので、そこにちょっと変化を加えるぐらいで、やることは変わらないです」 ──フェイスオフで向かい合っての印象は? 「骨格は結構でかいなと。クリスチャン・リーに似ていますね……危ない、厄介です」 ──トレーニングルームで何か、あいさつ程度でも、機会はあったのですか? 「特ににお互い水抜き(※当初、パク・ジェヒョンはクイラン・サルキルドと対戦予定だった)なのでこう(ぐったり)していたんですけど、セコンドによると僕のタックルをずっと見ていたらしくて。試合やるとは分かっていなかったはずですが……」 ──お兄さんの原口央選手も『ROAD FC』で対戦相手が計量失敗するということが起きました。ご自分の状況は連絡しましたか? 「真っ先に『相手が2キロオーバーしているらしい』と(言ったら)。(央から)『どうするの? やるの、やらないの?』と聞かれて、『UFC運営は準備しているみたい』と言ったら、『どっちが来てもいつも通りやれ』というメッセージをもらいました」 ──急遽の対戦相手変更ですが、明日(27日)の試合に向けて、意気込み、メッセージをお願いします。 「対戦相手が変わってもやることは何も変わらない。いつも通りしっかり気合いを入れて、相手をフィニッシュできるよう頑張ります。僕のスタイルを知っている人は分かると思うのですけど、やることは一つなので、しっかりいつも通りやることを変えずにしっかりぶちのめしたいと思います」 [nextpage] 対戦相手変更前に原口伸が語っていたこと「『This Tournament is Mine=このトーナメントは私のものです』って言おうと思っていたら、マイクを取られてしまって──」 (※以下は対戦相手変更前に原口伸に聞いたこと) ──当初は対海外勢ということで、フェザー級での「RTU」参戦を目指していた原口選手が、今回「ライト級」での減量というのはいかがでしょうか。 「いったん78kgぐらいまで頑張って増やしたのですが、ちょっと汗をかいたら、すぐに73kgまで落ちちゃってヤバいと思って(苦笑)。一生懸命食べて。それでもフレームは変わりませんが、動きには全然キレが出てきましたね」 ──フェザー級での参戦を希望しながらもライト級で、と言われるなかで、出場を決めたのは? 「ここで『やはりフェザー級で』と言って、次にどんなチャンスが回って来るか分からないですし、出場のチャンスがあるなかで、やろうと決断思しました」 ──そんななかで中国のバテボラティ・バハテボラ選手ともすでに会ったそうですが、どのように感じましたか。 「ちょうどすれ違って挨拶したくらいですが、計量前ということもあり、それほど大きさ、圧力は感じませんでしたね」 ──シンガポール入りした雰囲気はいかがですか。 「前戦は『ROAD TO UFC(以下『RTU』)だけの大会だったんですけど、今回は前日に『UFCファイトナイト』があるということで、UFC選手たちと同じホテル空間にいるので、いつもとはちょっとそこが違うなと感じました」 ──ワークアウトの部屋なども用意されていますが、すでに会った選手も? 「メインイベンターのコリアン・ゾンビ選手とか、ギルバート・バーンズ選手も見かけました。職業病と言うのか、なんかこう“デカいな”“この体格で戦ってるんだ”みたいな感じで、身体をまじまじと見ちゃいます。“組んだらどれくらい強いんだろう?”とか、ちょっと想像したりします」 ──試合まであと3日となりました、現在の心境を伺えますか? 「『RTU』が決まってからは、もう本当に優勝するとことだけを頭に入れて、ずっと心の中でブレがあんまりないんで、今もリラックスして落ち着いて、本当にいい緊張感を持って取り組めてます。精神的にもそうですし、体的にも特に大きな怪我もなく、いいかもしれない。減量幅もあまりないので、いつも通り問題ないです」 ──アジアでの開催で、何より時差の問題がありませんし、大きく環境は変わらないですが、調整も問題なく? 「レスリング時代からインドなど海外で遠征を繰り返してたので、その頃と比べたら、比較的いいところだなって感じがしています。UFCはホテルといい、関わる人といい、レベルが違いますね(笑)」 ──レスリングでの同世代の選手というのは……。 「自分は70kg級(2019年全日本選手権フリースタイル同級優勝)で、階級は違いますが、65kg級には同じ歳に乙黒拓斗選手がいましたね」 ──それはすごい年代ですね。今回、出稽古もされたかと思いますが、日本のBRAVEではどんな選手と組むことが多かったでしょうか。 「武田光司選手、野村駿太選手ら同階級の選手たちですね。ただ、いつも同じメンバーだと、互いに手の内がバレてしまって(苦笑)。それで、国内ではロータス世田谷にも少しだけ、練習で行かせてもらいました」 ──青木真也選手ら、グラップリングの猛者が集う場所での練習はいかがでしたか。 「分かってはいたことですが、青木選手にかなりやられまして……でもそれがいい気づきになりました」 ──いつもと違う環境で、いつもと異なる相手を欲して、出稽古を行ったと。海外ではプーケットのタイガームエタイにも出稽古したそうですね。 「自分の中で……マンネリじゃないですけど、このままでいいのかな、みたいにふと思って。2回戦を控えていて。自分の中で、“何かを壊す”ために行こうと思って。いろんな世界、いろんな人と触れて殻を破れたらいいなと思って」──殻を破れました? どんな選手がいましたか。 「めっちゃ破れました。タイガームエタイにはラファエル・フィジエフ(UFCフェザー級6位)選手もいて、あとどうも強いなと思ったら、ONEで秒殺勝利したアクバル・アブドゥラエフらもいて。フィジエフ選手とスパーしたときは、やはり圧力を感じて、がっちり固めても中に入り辛かったですね」 ──そういった練習環境のなかで、試合当日までどんなふうに過ごしていきますか。 「徐々に日を重ねる毎に、自分の中で試合モードになっているのを感じているので、今以上に“本当に試合するんだ”っていう実感を踏まえながら過ごしていきます。しっかり準備できたかなと思います」──先ほど「いい緊張感」とのことでしたが、ネガティブな意味で、ナーバスになったり、緊張はしていないですか? 「そうですね。本当にレスリング時代はそういう、3日前ぐらいにナーバスになる気持ちが分かりましたが、今はもう仕事してる舞台で、そういうふうにナーバスになることはなくて、前回もなりませんでした」──そのライト級トーナメント初戦では、ウィンドリ・パティリマ選手を相手に原口選手は2R、パウンドによるTKO勝利を収めながらも、そのフィニッシュには不満が残っているようでした。 「自分の中では、終わった瞬間、“ああ、またパウンドに頼っちゃったな”とか、“スタンドの打撃をもうちょっと見せられたらな”と思ったりしたんですけど、周囲の関係者の方々からも『今回はトーナメントだから、勝つのが第一だから』って言われて。『あの戦い方でいいから』と。“ああ、じゃあ、もう自分の持ち味を発揮して、この戦い方でいいんだ”と自分を肯定することができました。それまでは“一本とかで勝ちたいな”って、“パウンドってどうなんだろう”って思ってたんですけど。でも、終わってから肯定してくれる人がいっぱいいたから“これでいいんだ”と振り切ることができて“これで行こう”みたいな感じになりました」──海外の強豪勢相手にそれで勝ち切る強さが重要ではないでしょうか。そうして自己肯定できたことで、“魅せる勝ち方をしたい”ということに気持ちが捕われる懸念がなくなったと。 「そうですね。なので、(トーナメントで優勝して)UFCと契約を果たして、それから勝ち星を重ねてから、そういうことを考えればいいっていうくらいになっています」──前戦の試合から、今後に向けて参考になったことはありましたか。 「試合の映像で見ていた、全く同じオクタゴンでやれたことは、自分でもなんかこう“おおっ、本場だ!”と思いながら、本当に楽しんでやれたので、そこは良かったかなと思います。だからといって浮かれた気持ちはなく、地に足が着いていた感じがします。(試合をする場所としての感覚は)今までとは変わらないけど、UFCなんだなとテンションが上がっているような」 ──準決勝の対戦相手であるバテボラティ・バハテボラ選手の印象は? 「前回の試合だけだと、1Rは相手にずっとプレッシャーかけて押したりしてたんで、結果は反則勝ちですけど、打撃とか侮れないというか、普通に強いなって思って見ていて、それ──以前のLFAの試合とかも結構見返して、打撃は強そうだなと思いました」──打撃を強みとする選手と、グラウンドを強みとする2人の戦いと見られるところはあると思いますが、ご自身はどのように見ていますか?「自分もそうだと思います。それで、どっちの得意分野が勝つか、みたいな勝負になると思うんですけど、そういう時に意外と打撃が当たったりとかするのかな、とか思いながらしっかり打撃の練習もしてきました」 ──原口選手の打撃を見ると、レスリング時代と同じ右前足の右利きサウスポーでしょうか。 「そうですね。前足に入りやすいというのがあるんですが、今回は相手もサウスポー構えなので、練習でもサウスポーの人といっぱいやってきました。テイクダウン、タックルを見せてからの打撃とかをいっぱい取り組んできて、相手がぶん回して来たら下に入るとか。やっぱりレスリングだけじゃ通用するレベルじゃなくなってくるのかなっていうのもあって。MMAとして意識しています」──バハテボラ選手で一番警戒しているのはどんなところですか?「いろいろセコンド陣とも話して『打撃は重そう』っていう指摘は“確かにそうだな”と思うのと、相手が左利きのサウスポーでストレートがすごい伸びてきます。僕は右利きのサウスポーだから、そことのところも気をつけないといけないなという感じです」──では、相手に関わらず全体的に強化してきたことや、成長したことはありますか?「レスリングという主軸は変えずに+αで、先ほど言ったような、下を見せて上とか、逆に上を見せて下であるとか、そういったことを重点的に取り組んできました。今までだったら、ちょっと距離が縮まったからタックル、みたいな感じで、本当に気持ち+α出来たかなと。変に相手と距離を取らなくなったり、下がったりするということが減ったので、前よりはちょっと試合を進めやすくなったのかな、というイメージです」──バハテボラ選手は前回反則勝利となりましたが、キ・ウォンビン選手と対峙していました。その点で、中国の選手はやはり脅威になってきていると感じますか? 「勝負の世界というのはもちろんですが、こういう“何かがかかった”時の試合って、みんな“実力以上の何か”を発揮してくることが多分、多いと思います。たとえばレスリングだと、オリンピックがかかるとみんなの目の色を変えて、“あれ? そんな強くない選手だったのに”という選手が勝つみたいなことも結構あります。やっぱり、プレッシャーなどを色々潜り抜けて、勝たないといけない、そういう舞台だなという感じです」 ──どんな試合を見せたいですか? 「自分の得意なところ──タックルだったり、パウンドだったりをガンガン出して、全ラウンドで深海に引きずり込むような試合をして、テイクダウンのその先まで、しっかりフィニッシュできるように頑張ります」 ──今は目の前のトーナメントに集中していると思いますが、契約を勝ち取ってから向き合うことになるUFCロースターの選手たち、とりわけランカーについて現在はどんなふうに見ていますか。 「自分はもしタイミングが合えば、フェザー級に下げることも考えていて。小さいので。ともかく、ライトでもフェザーでも、やっぱり“戦ってみたらどうなるんだろう”とか、もちろんレベルがまだ違うっていうのも頭では理解しつつ、“こうすれば戦えるんじゃないかな”っていうことを頭に入れて見るというのは最近増えました」──前日のファイトナイトのメインがフェザー級のトップどころの試合です。試合前日ですが、確認しますか? 「一応日本人選手とメインは会場で見られたらいいなと思っています」──ところで、前回、試合後のマイクで最後に何かを言おうとしてマイクを取り上げられてしまう場面がありましたね。 「ハハハ(笑)。前日に、英語でひとこと言おうと決めていて。『This Tournament is Mine=このトーナメントは私のものです』って言おうと思っていたら、マイクを取られてしまって言えなくて(笑)」 ──多分、そう言おうとしていたことはどこかで話されていますよね?というのも、個人的に、お兄さん=原口央選手が、ROAD FCのトーナメント初戦の時にその言葉をマイクでおっしゃっていたのを聞いて、伸選手がそう言っていたと思い込んでいて、「兄弟でそれを言うんだ!」とエモーショナルになってしまいました。 「あれは普通に、マイクを奪い取られました(笑)」 ──おそろいの決め台詞にしようと約束していたわけではないのですね(笑)。今回、央選手が25日に2回戦となる状況で離れ離れの戦地に赴いている状況ですが、近くにない不安はありますか?「いや、そんなに(笑)逆に、兄貴も試合だから、一緒に勝てればいいかなぐらいの感覚で。不安はないです。兄と互いにミットを持って、相手のシミュレーションもして、相手ののビデオを見てやってみることで、自分の学びにもなりましたね」 ──央選手の2回戦の相手はかなりデンジャラスだなと前戦を拝見して思いました。「化け物ですよね…。今、23歳とかですよね?兄貴としても、修羅場が来たなって感じですね(※対戦相手の体重超過で試合中止)。僕は高校時代にキルギスの選手とやって負けちゃったんですけど、柔らかいし、力あるしみたいな感じで。ゴリゴリではないんですけど、力もあって、柔らかくて。……ってイメージです。体の使い方がうまいというイメージがありますね」──そういうイメージは共有しているのですよね? 「そうですね。7月にタイガームエタイに練習に行ったときも、キルギスの選手とも3人ぐらいやって、やっぱレスリングのディフェンスがうまかったので、そのことも兄貴には情報として伝えたりしました」 ──タイガームエタイはロシア語圏の選手がとても多いですよね。 「はい、ダゲスタンの方とか何人かいて。戦績が9勝0敗だとか、そういう無名だけどめっちゃ強いみたいなダゲスタンの方といっぱい組みました」 ──では、新しい原口選手の一面が見られることを楽しみにしています!最後に、U-NEXTでご覧になる方にメッセージをお願いします。 「僕は28日のエピソード6の一番最後で、日本人選手としても大会としても一番最後のトリなので、しっかり締められるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします」 [nextpage] 上久保周哉「『戦うのはもういい』って思ってもらうようにします」  2023年8月27日(日)『ROAD TO UFC 2』(シンガポール・インドアスタジアム)バンタム級準決勝で、日本の上久保周哉(頂柔術/TRY H Studio)が、中国のシャオ・ロン(Xin-Du Martial Arts Club)と対戦する。  上久保は、日本人バンタム級最強の一角。様々なテイクダウンを武器に、相手を寝かせて削って極める、MMAグラップラーだ。2018年7月からONEに参戦し、スノト、モハメド・アイマン、キム・デファン、ブルーノ・プッチ、ミチェル・チャマール、トロイ・ウォーゼンに勝利し、サークルケージで6連勝。  UFC挑戦のために、ONE Chmpionshipとの契約のマッチング期間を消化し、『ROAD TO UFC』に参戦し、5月の1回戦は組みに行ったところに中国のバーエゴン・ジェライスの下からのヒザ蹴りにダウンを喫し、テイクダウンディフェンスにも苦しみながら、最後は組みで上回り、スプリット判定を制した。8年間負けなしで10連勝、MMA13勝1敗分けの28歳。  シャオ・ロンは、一回戦で野瀬翔平にスプリット判定勝ち。序盤の野瀬のヒザ十字に苦しめられたが、テイクダウンを切ってコントロール。組みにも細かい打撃を入れて上回り、スプリット判定をモノにした。25歳でMM25勝7敗の戦績を持つ。 山場だと思っている。集中して向こうの100パーセントをぶち破る ――減量の調子はいかがですか。 「減量はいつも通りじゃないですか。前回ちょっと楽すぎたから、もうちょい体重残したいなとは思ってやってきたんですけど、相変わらずいつも通りです。日本と同じ夏で暑いなとは思うんですけど、何回も来ていますから、散歩もしやすいし。いい国ですね」 ――何度も試合をしたONEとは異なり、UFCで水抜きが可能になって2試合目。そうナーバスにはならない感じでしょうか。 「前回はちょっと久々の水抜きありだったので気を付けようとは思ってたんですけど、前回たぶん気を付けすぎたのかな」 ――前回は135.51ポンド(61.46kg)で、+1ポンド規定の136ポンド(61.68kg)よりちょっと少なかった。 「余裕だったというか、もうちょい残しといても良かったなみたいなのは前回思った感じです。今回は、それでも前回よりちょっと残したいな、とやりながら、結局いつも通りでしたが」 ──練習環境は所属の頂柔術、TRY H Studioに加え、出稽古もされてますね。 「そうですね。ロータス世田谷、ALLIANCE、それにCARPE DIEMではグラップリングの練習でお世話になったりしてます」 ――打撃専門のジムには? 「打撃だけというのはあんまりやっていないですね。打撃専門の人とやると、ちょっと競技が違うというか。MMAファイターの人と打撃スパーをするなどはありますが」 ――出稽古先でも、練習している誰もが上久保選手の組み技の強さを語ります。そうなると同階級で上久保選手より強い寝技師の存在が必要なんじゃないかと思ってしまいます。 「そう言ってくれるなら嬉しいですが、MMAとしての寝技もまだ直すところがいっぱいあるし、全然完成してないし、正直頂柔術とかで練習してても、別に自分が一番強いわけじゃないです」 ――それは柔術、ギありということではないですか。 「柔術もノーギも、自分より強い人はいっぱいいるし、学ぶことあるし、自分の知らないことを知っている人はいっぱいいます」 ――そのノーギでも『UNRIVALED』での吉岡崇人戦など、上久保選手がやろうとしている寝技は、そこにMMAが想定されていると感じました。 「まあ寝技というか、グラップリングだけやっていても、ポジション──MMAにおいてこれはどういう場面なのかというのは、“殴れるか”もそうだし、“相手が何がここで出来るのか”というのも、やっぱり常に頭によぎるというのはありますね。自然と。ただ、あんまりMMAのためだけにグラップリングをやってないというのもありますが」 ――グラップリングをグラップリングとして行う部分もあると。それは自身の引き出しということでしょうか。 「引き出しを増やしたいし、何より楽しいからじゃないですか。柔術もグラップリングも楽しいからやってるし、これを“MMAでは使える・使えない”とかで、“使えないからやらない”というのももったいない。それに、グラップリングだけの技と言っても、それをMMAに生かせるかどうかは自分次第なところもあるし、何でも1回やってから、自分が決めるという感じです」 ――「生かせるかは自身次第」、たしかに。そういう中で、前回の試合では、バーエゴン・ジェライスが自身の組みの強さをテイクダウンディフェンスに特化してやってきた。その上で上久保選手は上回った。あの試合を経て、修正したこともあったでしょうか。 「修正するべき点とかは、わりかしありましたね。うまくいった場面でも、もっとこうすれば良かったなみたいな、より良くするための方法みたいなのもいっぱいありましたね」――それはバックテイク出来ているけれど……という部分もありますか。 「テイクできてるけど、もっとうまく楽にというか、もっと早い段階で出来たんじゃないかと思う場面もあるし。単純に自分があの場面はこうすれば良かったな、と思うシーンとかもあったので、そういうのは見て、改善はしました」 ――ダウンを喫した場面に関しては、ご自身で十分把握できていたのですよね。 「そうですね。あれは試合のあの瞬間でも自分がミスったのが分かったので。頭が下がり“あっ、ヤバッと思ったときにヒザをもらいました。もらうべくしてもらったのは自分で自覚しているという感じです」 ――「見えていれば効かない」という言葉もありますが……。 「あの瞬間はよぎりましたよ。“見えていれば効かない”というワードは本当によぎりました。ちゃんと見えていましたからね。見えて、次の瞬間には尻もちついてたから、試合のあの攻防の瞬間は、“見えていれば効かない”って嘘じゃんって、ちょっと大沢さんに訴えかけてました(笑)」 ――でもそこからすぐにリカバリーしてラウンドを取り返しました。 「まあ見えていたから失神しなかった。完全に失神しなかったとも言えます。苦戦はしたけれど、あの試合は絶対に勝っていたと今でも思うし、試合が終わった時に自分が勝ったと思いました。あれはトーナメント全体を通して“お前、油断するなよ”っていうメッセージだったんじゃないかと思ってすべてちゃんと吸収して、もう1回準備してきました。  相手が強いのはある程度想定はしていたし、弱い奴が出てくるわけないだろうと。むしろ自分は強い奴と試合がしたいと思って、ここに来たので、初っ端からああいう相手とやれたのは自分にとってはありがたいかなと。まあ、でも単純に強い人と試合できるのは楽しいですよね」 ――MMAにおいて、タイトに組んで削ること、相手を動かしてコントロールすることという塩梅はとても難しいことだと感じました。「いわゆる緩急です。自分の寝技は相手を動かさせた中でのタイトさが、動けるけど動けないみたいな。そういう状態を作っていくことは常に目指して練習しているので」 ――自分がイニシアチブを取っている組み手というか、形になっていないといけないと。前回のジェライス戦では、UFC上海PIがある中国勢の強化体制や対戦相手の研究についても触れられていましたが、今回も同じ中国のシャオ・ロンということで、情報はかなり伝わっていると考えられます。 「当然。相手は自分のことを100%警戒して、100%対策を立ててくるんだなっていうのが改めて分かったし、今までの相手は、どこかで自分のことを下に見ているようなところがあって。常に相手も自分の方が強いって思ってる中でやる試合の方が多かったから、前回はそういう意味では、相手はチーム全体で、何が何でも“100回に1回(の勝利)”を持ってこようとしてたんじゃないかな、とは思って。そういう100%対策してきてるところを越えなきゃいけないというのは、実際に体感したことです。  だから、今回ももうすでに1個自分のプレッシャーがかかっている状態で試合は始まります。向こうも後出しじゃんけんができるから、しっかり準備はしてくるだろうし、対策も待ち受けている。自分もそれをもう1個、読んだ展開を考えて練習はしてきましたし、うまくいかなかったときにどうするかという対応力もしっかり準備しています。プラン1が上手くいかなくても、ちゃんと2、3、と次に切り替えられるようにしていこうと思っています」 ━━シャオ・ロン選手の印象は? 「トップキープが強いし、パンチも強いな、とは思います。本当のところはグラップラーなんじゃないかな? っていうのは見た感じの感想です。触れてみないと分からないところはあるんですけど、ここを越えないと。自分が感じる“強い人”という試合は、まだシャオ・ロンは見せていないかなと。それが自分の時に来るかもしれないし、それを自分は現場で越えていきたいから、こんなところで負けるわけにはいかないよ、と思っていますよ」 ━━警戒している点があるとすれば? 「警戒……をしているとすれば、相手が自分を警戒していることに警戒しています」 ――打撃面では、シャオ・ロン選手をどう見ていますか。 「強いパンチを持っている選手ではあるし、でも、かといって打撃偏重で偏っているわけではない。リアクションもいいし、そこは彼が30戦くらいの試合経験で作ってきたものなんじゃないかなと(※25勝7敗・4KO/TKO 9SUB)」 ――シャオ・ロン選手にスプリット判定で敗れた野瀬翔平選手の試合では、テイクダウンを防ぐ。あるいは、サブミッションに打撃を入れた、あの形を見て、得るものがありましたでしょうか。 「簡単にはテイクダウンできるタイプじゃないなという感想はありますけど。でも、野瀬戦も無尽蔵のスタミナではないし、彼には彼の得意な部分と苦手な部分がしっかりあるというのは、試合を見て、こっちも研究しました、ちゃんと」 ――カウンター待ちの相手に対しても最終的には上回ることができた中で、今回もそういう試合を想定して練習してきたのでしょうか。 「まあそうですね。相手がまずしっかりディフェンスしてくる。そのうえで、向こうも組んでくるのか、打撃で来るのか、両方のシチュエーションは想定してやってはきました。『全局面で上回る』ってみんな好きな言葉だですが……何が一番上回っているかな。ケージの中で相手に対して意地悪な部分が出せるっていうことに関しては、自分のほうが上じゃないですかね  向こうもパンチが強いけど、本質はグラップラーだと思うので、そこのスクランブル、向こうが自信持ってるところで、自分が勝負して負けないというものを作ってきたし、自信もあります」 ――ONE Championshipで6連勝して、UFCとの契約のために、この『ROAD TO UFC』から参戦した上久保選手にとって、あと二つ勝てばという状況をどうとらえていますか。 「前戦を経て、“どんな内容でも勝つことがすべてだな”っていうのは思いました。とにかく目の前の一勝をみんなが取りに来ている。当たり前のことですけど。途中で負けたら何の意味もないということで、いい試合をしたいです。トーナメントだからって先のことを考えてもしょうがないですからね、目の前の試合にちゃんと勝ちたいと思います。  それに、相手も100パーセントで来るから、向こうは自分に勝ちさえすれば、あとは(決勝に進出すれば)どうにでもなると思っているんじゃないですか」 【写真】上久保チーム。頂柔術の礒野元代表の左手は、自転車での負傷とのこと。 ――たしかに、中国勢のためのトーナメントと言っても過言ではないかと思います。その意味では、この準決勝が……。 「山場だと思っています。集中して向こうの100パーセントをぶち破る。向こうが怪我していてとか、体調が悪くてとか、そんな言い訳ないくらいにしっかり打ち破って勝ちたいし、向こうも上海PIの選手だから、設備が良けりゃ勝てるわけじゃないぞ、と思わせたいなと思っています」 ――どんな試合になると考えていますか。 「また5分3Rやりたいですね。フルラウンドやりますよ。フィニッシュは目指してますけど、僕は5分3R、やりたい。終了間際にフィニッシュするくらい、時間いっぱい戦っても勝つ。相手が“次やれば勝てる”とか言い出さないような試合をします」 ――キツい試合をする、という宣言ですね。 「はい。(上久保と戦うのは)“もういい”って思ってもらうようにします」
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