MMA
インタビュー

【超RIZIN】渡辺華奈「『世界一』になりたい。そのために今回も勝ってベルトが欲しい」=7月30日(日)『超RIZIN.2』

2023/07/25 11:07
 2023年7月30日(日)さいたまスーパーアリーナにて『超RIZIN.2』が二部構成で開催される。その前半のBellatorパートで、ヴィタ・アルテイガ(米国)と対戦する渡辺華奈(FIGHTER'S FLOW)が、本誌のインタビューに応じた。  Bellator女子フライ級3位にランクされる渡辺は、柔道時代に全日本指定強化選手としてオリンピック選考会に3度出場するなど社会人柔道で活躍。  2017年にMMAデビューするとDEEP JEWELS、RIZINを主戦場に活躍。2021年にBellatorと契約し、初戦でイララ・ジョアニに3R TKO勝ち。2戦目でアレハンドラ・ララにスプリット判定勝ちで連勝。2021年6月に現王者のリズ・カムーシュに1R TKO負けを喫するも、2022年5月のデニス・キールホルツ戦で三角絞めによる一本勝ちで復活を遂げた。  しかし、2023年4月の前戦ハワイ大会では、地元のイリマ・レイ・マクファーレンにスプリット判定負け。今回は、Bellator女子フライ級王座に挑戦経験もある強豪アルテイガを相手に3カ月ぶりの再起戦に臨む。  日本での試合は、2019年12月の『BELLATOR JAPAN』でのジョアニ戦以来、3年半ぶりのホームでの試合となる渡辺は、「身近な人に生で試合を見てもらえる」と言い、柔道時代には挫折した世界の頂きに、三十代でMMAで挑戦する姿で勇気を与えたい、と語った。 ハワイではブーイングがすごくて思わず煽ってしまい── ――いよいよ7月30日(日)の『超RIZIN.2』(さいたまスーパーアリーナ)が迫ってきました。これまでBellatorの日本以外での大会で戦うことが多かった渡辺華奈選手ですが、今回のようにホームで試合をするのと、アウェーで試合をするのに良し悪しはどれほどありますか。 「どうですかね。あんまり変わらないかなって、今となっては。自分、たぶんすごく図太くて、あんまり気になんないんですよね。逆にアウェーのほうが楽というか。今回ホームだからちょっと緊張するなと思ってます(苦笑)。でも、試合前ってそうやって思うことがあるんですけど、やっぱり試合が始まってみて、入場のときに、すごい声援とか聞こえると、やっぱりなんとも言えない高揚感というか、“うわあ、頑張ろう”って思うんですよね。だから、今回もそれを期待してます(笑)」 ――(本誌の入場シーンの表情を見ながら)この表情は、スイッチ入ってますよね。 「ハハハ、これは入場のときですね。あんまり考えてないんですけど、けっこう入場で花道に上がると──しかも前回なんてめちゃくちゃブーイングすごかったので」 ――ハワイの英雄的な存在のイリマレイ・マクファーレンのホームでの試合でした。配信ではそこまでブーイングが起きてたとはわからなかったです。 「向こうの選手がハワイの大スターなので、すごかったです。最初の選手コールで、『カナ・ワタナベ』、即『ブーッ!』みたいな(苦笑)」 ――即ブー……(苦笑)、ただ強気な表情だったように覚えています。 「逆に高まっちゃって。全然楽しくなっちゃって。煽ってます。大ブーイングに『来い、来い!』って両手を挙げてやってて。あとで周りからすごい突っ込まれました。あれのせいで判定で負けになったんじゃないの? とか(苦笑)」 ――心証を悪くしたと。それくらい気持ちが入っていて、ブーイングも気にならなかったわけですよね。 「不思議な感じですね、やっぱリングの上とか、ケージの上って。今までの柔道の畳の上とは全然違う。高まりますね」 ――Bellator JAPANのさいたまスーパーアリーナはゲンのいい大会でもありますね。イララ・ジョアにTKO勝ちしています。 「そうですね。前回もやらせてもらって、あれも『対抗戦』だったんですけど、去年の対抗戦がすごすぎて忘れられてません?(苦笑)」 ――いえいえ忘れていませんよ。あのとき騎馬を組んで渡辺選手が先頭にいて、朝倉未来選手をかついだ。 「実は、今日の公開練習でもそのはちまきを持ってこようかなと思ったんです。なんかちょっと『公開練習にかけた思いが』とかいって(笑)。誰も覚えていないだろうけど、ナチュラルにそれだけやろうかなと思ったんですけど、ちょっと難しそうでした(笑)」 ――公開練習でそんな伏線を張ろうと。 「そうそう。知る人しか知らない(笑)」 ――そんななか、今日の公開練習は道衣を着てのものでした。 「いま、プロを目指している名門・帝京大柔道部出身の子(東京学生柔道体重別選手権女子52㎏級準優勝の坂本野乃袈)がいて、その子に一緒に受けてもらって、柔道の練習をしました。完全にピュア柔道の練習でした。もうまったく総合じゃない、ピュア柔道!」 ――柔道時代の得意技は? 「内股です」 ――とはいえ、いまでも柔道技はMMAでアジャストして使ってますよね。 「今でもやってます。ゴリゴリにやっています(笑)。1試合に1回はやっていますね」 ――MMAになると引き手、釣り手で道衣を掴めないから、手を持つということ自体が難しいときもありそうですが、そこも渡辺選手の動きで注目点ですね。 「そうですね。そこを持ち手を変えたり、脇を差したり、リストコントロールしたり、やっぱり海外選手に足技は不慣れな部分もあるので、使っていますね」 ――いまでも道衣を来た柔道をやることはあるのですか。 「なるべく、たとえば週に1回とかはやりたいなと思っているんですけど、なかなか時間を割くことができなかったり、柔道は怪我も怖いので、なかなか簡単には出来ないところもあります」 [nextpage] 「冷蔵庫」みたいなアルテイガを止めること ――今回の『超RIZIN.2』での試合に向けては、どんな練習環境でしたか。 「MMAの練習と打撃の練習を中心にやってて、グラップリングとか寝技だけの時間はいつも通りという感じです。打撃は前回同様に、ARROWS GYMで矢口(哲雄)先生のところに、だいたい週3くらいで行かせてもらって。ほかはFIGHTER'S FLOWのチームで、ほぼ毎日練習してという感じです」 ――ご自身のなかで打撃の手ごたえも得てきているのではないですか。 「手応えはかなり練習ではあるんですけど、なかなかやっぱり試合で出せないと実力じゃないので、まだまだというところですかね。早く試合で使いたいんですけどね」 ――今回の対戦相手のヴィタ・アルテイガの打撃という面では、どうとらえていますか。 「やっぱりグイグイ出てくるので、ちょっとやりにくいかなとは思うんですけど、逆に自分のほうがリーチが全然長いので、それを活かして、相手が入ってきたところを止めるような打撃はいろいろ矢口先生と練習はしてきましたね」 ――「グイグイ前に」という通り、以前は階級上の選手でしたし、上半身が大きいですね。 「冷蔵庫みたいな、この(ジムにある)自動販売機みたいな体型してますね(笑)。非常にタフなファイターでスタミナとガッツがある。相手をどんどん削っていくファイトスタイルなのかなと思います」 ──その圧力は、これまで互いに対戦した相手との試合から、どう見て取れていますか。 「身長が小さい(163cm)けど横がけっこう大きい。たしかに共通の対戦相手がけっこういっぱいいて、3人くらいいるのかな。(デニス)キールホルツと(イリマレイ)マクファーレンと、あとアレハンドラ・ララともやっていて。ララにはけっこう苦戦していましたね、長いリーチを生かされて。いまとは異なるところはあるものの、あの試合は参考にしましたね。どれだけ相手の前に出るところを止めるか、調子に乗らせないようにしたいです」 ――冷蔵庫は……勢いづけたくはないですね。 「そう。冷蔵庫が突進してくると、やっぱそういう選手ってどんどん調子が上がってきちゃうので、前に出させないのって、打撃だけじゃないじゃないですか。相手が振ってくるならそこに組みつくこともできるし、タックルも合わせられる。  寝かせてしまえば、そういう荒削りなところも消せるので、どんな人が来ても大丈夫です。やっぱり相手は組まれたくないと思っているだろうから、そこもうまく利用して。今まで試合で駆け引きをあんまりちゃんとできていないので、そういうのも今回できたらなとは思っています」 ――駆け引きといえば、前回のマクファーレン戦の判定は非常に厳しいジャッジだなと感じました。投げてコントロールした部分があまり評価されていないとしたら、あの試合の教訓から、今後、どんな試合をと考えましたか。 「教訓はめちゃくちゃありましたね。まずはポイント的な部分で、どこを意識しなきゃいけないのかということ。打撃の面だと、もらったりしたときに全然効いてなかったんですよ。だから、効いていないからそのまま組みに行っちゃえと思ってしまったところもあって……。  でもそれって自分の主観でしかなくて、審判から見たら、効いてると見えている。そう見えないようにする必要がありますし、たとえばグラウンドでももっとパウンドを打って、ダメージを印象付けないといけないとか。そういう部分がすごく勉強になって、一本を取りたいという気持ちと同時に、ポイントによるゲームメイクもしっかり考えてやらないといけないと思いました」 ――ジャッジにもアピールできるように、誰が見ても攻勢に見えるような形が必要だと。 「たとえば押さえ込んで、サブミッションに行くにしても、しっかりと押さえ込んでパウンドを入れてから行くとか。そのパウンドも、小さいパウンドじゃなくて、大きいパウンドを打つ──最近練習でも、『ただ押さえ込んでいたらマイナスだと思え』とか言われてやってるんです」 ──押さえ込むだけならマイナスとは厳しい練習ですね。その先に極めがあるだけに……。 「逃してもいいからパウンドを打ったりしろとか言われます」 ――強いパウンドを打つために振りかぶるとスペースが空いて立たれてしまう。それでも練習からそれくらいの意識付けをやっているということですね。 「はい。でも、試合になるとなかなか簡単にはできないかもしれないんですけど」 [nextpage] 挫折した自分でも頑張れている ――さきほど「相手が振ってくるなら組みつくこともできるし、タックルも合わせられる」ということでしたが、アルティガはすごく腰が強いというわけでもない代わりに、様々な組み手を変えるフロントチョーク系を持っています。あのギロチンの対処は、その使い手もいる、ここFIGHTER'S FLOWでは万全でしょうか。 「そうですね。キールホルツにも投げられたりはしてたので。テイクダウンディフェンスがめちゃくちゃ強いというわけではなく、むしろテイクダウンに合わせてギロチンしたりというタイプですね」 ――あのギロチンは、パワーギロチンからグリップを変えて、ハイエルボーにしたり、警戒が必要ですね。 「そうですね。鈴木隼人さんにもいつもかけてもらって。まずはそこのポジションに入らないこと。顔の位置だったり、胸を合わせる位置だったり、ギロチンを食らうポジションを細かく把握して。それにあのギロチンって、けっこう相手が疲れてちょっと雑になったところに、ギロチンを合わせるのが得意なんですよ」 ──たしかに、初回からいきなりではなく中盤以降に極めてますね。 「けっこう打撃でプレッシャーをかけて、相手が嫌々タックルに入って来たところにギロチンを合わせたりするので、やっぱりそういう場面でも雑にならないというのは大事ですね」 ――なるほど。今回の試合、女子フライ級3位の渡辺選手にとっては、7位のランカーとの試合になります。再び上位戦線にというところで惜敗して、負けられない試合が組まれた。今回の試合をどう位置付けていますか。 「やっぱり自分が前回負けているので、相手を選ぶ権利もないですし、自分よりランキングが下ですけど、強い選手なので。強い選手を相手に、挑戦者のつもりで戦うという気持ちですね」 ――今月号の『ゴング格闘技』本誌では、神龍誠選手と、セコンドの上田貴央代表と鼎談をしていただきました。その中で、渡辺選手は、「Bellatorのベルトを獲ることを考えています。それはベルトが欲しいわけではなく、『世界一』になりたいということで、Bellatorのベルトを獲ればそのトップの一人になれる」と発言されていました。というときに、もう一つの頂のUFCの女子フライ級もご覧になることはありますか。 「はい。見ます。全部チェックしているわけではないですけど、U-NEXTさんで見れるので」 ――その中で、自分だったらと考えることもありますか。 「ありますね。アレクサ・グラッソ選手がチャンピオンで、元王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコ選手が1位。自分だったらどこまで行けるかなとか、Bellatorでチャンピオンになったら、マイケル・チャンドラー選手みたいに行くこともあり得るのかなと思って。『世界一』になるためにも今回の試合に勝って、Bellatorでもベルトが欲しいなと思って見ています」 ――今回の試合でどんな試合を見せたいですか? 「やっぱり自分のことを知らない人とかもいると思うので、強い日本人の選手がいるぞというのをしっかり見てもらいたいです。あとは、自分ももう34歳で、今年35歳になるんですけど、それでもまだ全然トップで活躍できるんだぞというところを見せて、何かをチャレンジしようとしている人の後押しになれればなっていう思いで、ずっとやっています」 ――格闘技的には、まだまだ伸びしろを感じさせます。 「柔道をずっとやっていたので、そのときからの怪我の蓄積はありますけど、年齢による影響はそれくらいで、体力的に落ちたりとかはまったく感じてないし、技術的にも伸びているとは思うんです。でも柔道ってすごく引退が早くて……」 ――そういえば、渡辺選手は引退した2016年の実業団体では、前年の講道館杯優勝者の石川慈選手を破っていますね。でも、その年の年末にコーチ転向への打診を受けた。その後、選手としてまだやりきっていないという思いから退社して、MMA選手への道を切り拓いた。 「そうですね……。あと、風潮的に、たぶんみんな30代でやってる人なんてあまりいないし、25過ぎたくらいから、もう引退を考え始めている選手が多いので、そういう子たちにもいい刺激を与えられたら、と思います」 ――自分次第で戦えるのだと伝えたいと。そして、それが“何でもあり”になることで選手寿命が延びているとしたら興味深いことです。 「リズ・カモーシェ選手(現Bellator世界女子フライ級王者)とかも39歳ですもんね。MMAはけっこう年齢層が高い。それだけ難しく工夫ができるもの。自分は柔道で1回挫折して、MMAでやっているので、そんな挫折した自分でも頑張れている。そういう部分でも、思うところがある人に見てもらえたら、勇気を与えられたらと思います」 ――わかりました。さきほどホームでもアウェイでも戦える強さをうかがいましたが、さいたまスーパーアリーナで戦うということは、そういった人たちに直に、試合を見てもらえる機会になります。“パト”時代(柔道時代の愛称)の人たちも見に来られるのではないですか。 「来ます、来ます! そうなんですよ。でもチームメイトとかにもこれまで試合を見せられてないんです。セコンドの上田さんしか見ていない。だから、今回は身近な人にも見てもらいたいです」 ――入場時のスイッチが入る表情から注目ですね。髪色も。 「いまは金髪にして下地を作っていますから。当日、派手に行くので、楽しみにしててください!」
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