髪を切り毛も剃るというクレベルに、サトシは「無駄だ」と諭した
最後に体重計に乗る時間が近づいていた。
「あと10分で、最後の計量の14時。私はクレベルに『ごめんね、でももうしょうがない。水が出ないから、後もう5分で行こう』って言いました。このとき、彼は『もう信じられない、最後まであきらめない』って言って、彼は結構泣いた」
クレベルは、サトシに手足の毛も剃って髪も切る、と主張したが、サトシは「それは無駄だ」と諭した。
「私は彼の気持ちはよく分かるね。試合のことだけじゃなくて、皆が待っているからね。彼のRIZINのベルトの初の防衛戦。ファンもスポンサーもRIZINもみんな待っているから、彼が出来なかったから、ほんとうに気持ちが分かる。一番悲しいのは、ほんとうに彼は頑張った。たくさんの選手が体重オーバーするけど、“あーもうしょうがない、私、出来ないな”と思っている。でも彼は最初から最後までほんとうに頑張った」
最終計量は66.40g。「400g」の体重超過でクレベルは王座剥奪となった。
試合は規定により、クレベルに20パーセントの減点(イエローカード)が課せられた上でスタート。鈴木が勝利した場合のみベルトを獲得。クレベルは試合前に王座剥奪となり、勝利しても「ノーコンテント」で白星はつかず、王座は空位となることが発表された。
クレベルに限らず、すべてのファイターは、この試合前の“もう一つの試合”ともいえる計量を戦い、マットに向かっている。サトシは言う。
「なんで水が出ないのか、なぜ今回だけ彼の身体が変なのか分からない。1個だけ今回は違う。いつもRIZINで試合をするときは東京とか大阪とか、いつも車で行く。今回は北海道だから飛行機で行った。私、彼とちょっと話したのは、たぶんこれかな、と思っている。2時間で早く着くけど、飛行機の問題は高いからプレッシャー(気圧)が。それだけ私は考えた。それじゃないかもしれないけど分からない」と、気圧が身体に影響を与えた可能性を語る。
「計量失敗後に彼はたくさん泣いたけど、私は彼と話した。『仕方ない。これからベルトは無し。絶対にあなたのヘイトの人たちがいろいろ悪いことを言うから、それはしょうがない。体重オーバーはもちろんあなたのせい。それは変わらない。でも絶対また応援している人がサポートをするから。もちろん嫌いな人はもっと言うけど』」と、クレベルに声をかけた。