近距離での戦いが持ち味の皇治だが「MMAに来たらひよっ子なんで」
CARPE DIEM三田で竹浦正起と練習する皇治。(C)@1_kouzi
一方で、“何でもあり”のMMAでは“何でもやらなければいけない”わけではなく、取捨選択して戦うことも可能だ。皇治は、「寝技はしませんよ」と、組み技・寝技はディフェンスを中心に練習し、相手の組みを切ってスタンドで勝負するスタイルで行くことを語っている。
近年、日本人K-1トップファイターでMMAに挑戦しているのは、平本連が2勝3敗、久保優太が1勝1敗。すぐには結果が出ないことが、別競技であることを示している。
MMAの距離は、K-1より遠い。皇治の打撃スタイルをいかにMMAで活かすか、アジャストが必要となる。
皇治は、近年こそ飯田裕トレーナーのもと、これまでより長くなったジャブ、ワンツー、そしてダウンも取れる左フックを武器としているが、近距離での戦いが持ち味。
しかし、その距離はMMAでは組まれる距離となる。
ムエタイ出身ファイターの中には、首相撲をMMAの組みにアジャストする者もいるが、組むことが禁じられた立ち技選手には、特有の組みの弱さがあることも多く、皇治は組む力がどれだけついてくるか。
UFC史上初の二階級同時王者となったコナー・マクレガーは、「精度はパワーに勝り、タイミングはスピードを凌駕する」と戦いを語るが、近い距離でタフに勝負する皇治は、いかにMMAのなかで、これまで培った武器を活かすか。
近年、痛めていたヒザの状態もMMAを戦うにあたり重要となってくる。
パンチより蹴りの距離は遠い。スタンドから始まるMMAにおいて、パンチ、蹴り、組みが連動しているのがMMAで、皇治にとってかつての蹴りが「組まれにくい蹴り」として戻ってくれば、ストライキングを軸とするMMAファイターの武器になる。
そして、テイクダウンされても立ち上がるためにも、ヒザのコンディションは大きくかかわる。
そのヒザの状態については、「(芦澤戦で)足どうこうは関係なく言い訳にはならない。右ヒザにいた60人の生霊も霊媒師に払ってもらったんで大丈夫です」と笑い飛ばしてみせた。
そして、皇治の対戦相手の誰もが舌を巻く「打たれ強さ」は、MMAではどうなるか。
オープンフィンガーグローブ(OFG)は、ボクシンググローブのような重さを伝えられないものの、殺傷力が高くなる。立ち技時代のような「打ち合い」はリスクが大きく、1発で「効かされる」場面も増えるだろう。
必然と距離が遠くなるなかで、皇治は困難な挑戦に向かうことになる。得意のボディ打ちの距離になっても、OFGでボクシンググローブのように効かせることができるか──などさまざまな面で異なる状況で、平本も久保も、自身の強みを見出している。
「MMAに来たら“ひよっ子”なんで、上で調子こいてるやつらとやれるように頑張ります」と語った皇治。
そのファイトスタイルは決してMMA向きとは言えないものの、「これまでも多くの人が無理ということを実現させてきた」皇治は、今回も同じようにMMAと向き合っている。