北米のトップコーチを招聘してファイトキャンプを
本誌の取材に、アーチュレッタは試合前のミット打ちで、対戦相手の距離を対策した細かいステップと強弱のある連打のなかに、テイクダウンのフェイクを入れ、「何が来るのか分からない」動きを見せていた。強いフィジカルを保つ減量方法、「MMAとして」打撃も組みも寝技も連動し、融合させる。各ジャンルの専門コーチが意見を横断させて、選手個々のスタイルのなかで、最適解を生み出していた。
2016年1月に日本のKRAZY BEEからアメリカントップチームに移籍した堀口恭司は試合後、「技術的なものが日本は遅れているのかなと思って自分は海外に行ったので、今回の試合を見てもやはり技術的には遅れているのかなと思いましたね。(その技術差を埋めるには)自分がやっているように、アメリカへ行って直に肌で感じる。技術やコーチの差を実際に感じないと人間って分からないので、世界に出た方がいいんじゃないかなと自分は思います」と語っている。
MMAは個人戦だが、チーム戦でもある。RIZNも対抗戦のチームをバックアップしてきた。
今回、RIZIN軍は、大将を務めるホベルト・サトシ・ソウザ(ボンサイ柔術)の練習パートナーとして、米国からジョニー・ケースの招聘に協力している。稀有な柔術スキルを持つサトシに、ボクシングとレスリング巧者であるケースを組ませることで、敵の大将AJ・マッキーを攻略しようとしていた。
しかし、サトシは一矢報いることが出来ず。マッキーのバックを奪うもニアフィニッシュに至らず、判定3-0で敗れ、かつて父アントニオ・マッキーが敗れたアリーナでのAJによるリベンジを許した。
5戦全敗を喫したRIZINの榊原信行CEOは、大会後「現状我々のポジションはここ。圧倒的フィジカル差を感じた。スコットと話しをしているのは次は、2回連続でRIZINルールでということにはならないから、アメリカに渡ってユニファイドルールでケージに入らないといけない。その対策は選手個々にやってくださいではなく、せっかくチーム戦なので北米のトップコーチを招聘してファイトキャンプを組むなど、そういう環境を選手たちに提供することをぜひ前向きに考えたい」と、チームジャパンで立ち向かう必要があるとした。
北米ジムのコーチ、トレーナーによっては、担当選手の勝敗が収入に影響してくるため、そこに責任も生じ、対戦相手の分析、個々の選手に応じた練習・戦略を授けることで勝率を上げることに専念。さらにメガジムでは各分野のコーチがその選手の情報を共有し、試合に臨むことになる。
【写真】得意の首投げで投げたクレベルだが、パトリシオはその勢いを利して離れて立ち上がった。
北米から練習相手を招聘したサトシ、タイで出稽古に取り組んだクレベルともに、自身の強みである柔術を、Bellatorの頂きに立った相手に、RIZINのリングでいかに活かすかに取り組んできた。
これがケージでユニファイドルールならば、さらに練り込むべきことが出て来る。日々アップデートされるMMAの技術のなかで、いかに最適解を見つけるか。そのトータルのコーディネートを誰がするか。
対抗戦の先鋒戦で、ハビブ・ヌルマゴメドフ率いるダゲスタン軍団のガジ・ラバダノフ(ロシア)と激闘を繰り広げた武田光司(BRAVE)は、2022年の年末に向けてハワイのユナイテッドMMAで、ONE王者のクリスチャン・リーらとトレーニングし、ロータス世田谷やパンクラスイズム横浜への出稽古で、世界を知る青木真也や松嶋こよみらと練習を重ねてきた。
試合後、ハビブから熱闘を賞賛された武田は、直接、ラバダノフにダゲスタンでの練習を申し込んでいる。
結果を見れば5戦全敗だが、いずれもクロスゲームで局面ごとに光明はある対抗戦だった。しかし、最後に競り勝ったのはBellatorチーム。もし大海に乗り出すなら、今度は他流試合になる。交わることでようやく背中は見えた。その距離は遠いか近いか、手をかけるためにすべきことも明らかとなった、大晦日の決戦だった。