こんなに挑むって思ったのは本当に初めてだった
──組みがあるMMAにおいて、組みがあるから打撃というところから自分が打撃を使って相手を組ませたという感覚はつかめた?
「そうですね。嫌がりながら組ませるというか。最初の足関をとった時とか、効かせて上を取った瞬間に『これはもう組み負けないな』と思った。ただ、弥益選手のグラップリング、寝技は基礎的なものより変則的なものが多くて、欲を出しすぎて思わぬ初見殺しみたいなのを喰らうのは警戒があったので、今回は付き合わずにコントロールして立たせてというか。強いレスラーが何回もテイクダウンして、これはもう無理、これは立てないなと思わせるのと同じ逆バージョンを作れたのかなって思いますね」
──前足で移動ではなく後ろ足で移動する意識は稽古では出来ていても実戦で使うのは難しい。今日は出来ていたのではないか?
「岩崎先生の声がすごい大きくて。試合中も落ち着いて『出るな』っていうのが。自分の今までのパンチってジャブもワンツーもステップで入るボクシングの基本の動きだったんですけれど、そのタイミングで萩原にテイクダウンをとられていたので、自分は動かずに足を出さずにその場で、というのを徹底してやってきた部分だったので試せてよかったですね」
──あとは置くパンチみたいなものは出来たかなと思うが?
「そうですね、自然に。左が当たったら右が伸びているというか。バン、バンじゃなくてババンってひとつの音にするようなパンチが出来たんじゃないかなと思いますね」
──鈴木千裕選手が、平本選手は本来いい人間なのに悪ぶっていて、いい人間と使い分けていると。いつも素でいるべきだと言っていたが?
「ああ、じゃああいつは逆なんですね。普段いい人ぶってるけど本当に性格悪いじゃないですか。だから僕、道徳とか教えてやりますけれどね(笑)」
──ケージの試合だったことでディフェンスもよかったと思うが、今後リングよりケージでずっとやっていきたい?
「もう1回、次もケージでやりたいですね。次の試合もケージでお願いします(笑)」
――そうなると大晦日は難しくなるかも。
「またLANDMARKかもしれないですね(笑)」
──試合中に、ここまで効かせたら倒して終わりたい欲求はなかった?
「いや、相手が意識途絶えるまでぶん殴ろうというので。最後は意識もけっこうきつかったと思うんですけれど、欲を出さずに自分の勝利を信じて戦ったというか。逆に2戦連続コントロールが続いて、自分のなかでどんどんコントロールできているんじゃないかと。元シュートボクシングの鈴木選手との試合では、打撃の選手なのでテイクダウンに来なかったので勝負どころを作りづらかった。向こうも危機回避能力というか、打撃のスペシャリストでもあるので、この人は入ってこないなと思って。途中からこれはKOないなと気付いたんですけれど、ああいう風(弥益)にテイクダウンを織り交ぜる選手ほどあの瞬間が生まれるというか。勇気を出す瞬間ですよね。そういうのをしっかりポイントにして攻められたから、よかったかなと」
──アレを繰り返して最後に相手が倒れたらそれでいい、と。
「そうですね。本当に終わりだなと思った瞬間に仕留めようと思っていたんですけれど、あれで全然」
──弥益選手に試合直後に声をかけていたのはどんな会話を?
「それは秘密です(笑)」
──弥益選手は効かされすぎていて覚えていないと。
「自分を信じてやれたのもよかったし、自分が今まで子供の頃からいろんな試合をしてきて、こんなに挑むって思ったのは本当に初めてだったので、すごく勇気をもって戦いました。弥益選手がいたからそれも成り立ったのかなと」
──そういうことを伝えた?
「はい、そうです」