普段出会えない自分に会える。それがMMAの魅力じゃないかな
──MMAは仮面がはがれるというコメントがあったが、実際に仮面がはがれたときの弥益選手はどんな要素が強い?
「すごく喧嘩腰ですし、攻撃的な部分もありますし、逆にすごく情けない、とにかく怯えてしまう相手が怖くてしかたがない面も試合のなかで自分は自分の中に感じたこともありますし、そんな自分が見られるっていうのはすごいことだなと。普通に暮らしていてこんな自分に出会うってないと思うのですよ。MMAは他の格闘技と違って選択肢がすごく多いので、だからこそ、その行動、とる選択肢に対して、その人の人間性がすごく反映されやすいと自分は思っているので。だからこそ、普段出会えない自分に会える。それがMMAの魅力じゃないかな。着地点が違いますが、そう思っています」
──今回で20戦目。
「え? 俺ですか? あ、そうなんだ(笑)」
──それでも毎回新しい自分と出会っている?
「そうですね、対戦相手が違うのでその数だけ自分は存在しています」
──今回の平本戦ではどんな自分に出会えそう?
「過去に見てきた自分が少し成長した姿になれてたらうれしいなって。あの時の自分よりちょっとよくなったな、ちょっとお前強くなったなとか気持ちが強くなったなとか、逆にまだここ弱いなとか。多分いろんなところがあると思うのですけど、過去と比較して自分の外面、内面、成長が見られる試合にできればなと思っています」
──今回もメインイベントに関しては?
「相変わらず『大丈夫か、RIZIN?』と思っていますね。『それでいいのか』って思っています」
──前回はばっちりだった。
「今回も勝っても負けても、一本かKO、大丈夫じゃないですか」
──本気で泣いたり本気で怒ることは普段ある?
「普段はないですね、やっぱり本気で泣くなんて格闘技の会場くらいなんで。だからこそすごく特別な場所ですし、自分が出ているときだけじゃなくて今までずっと、格闘技を見に行っていたときもやっぱり格闘技の会場って感情を出せる場所だったので。そういう意味でもかけがえのない場所ですね」
──まだ白い仮面がついているように見える。本当に素の自分を出すのは戦う時だけ?
「そうですね。あまりいい大人が全力で自分を出しちゃいけないと思うのですよね(笑)。それができる数少ない場所なので」
──キャッチウェイト戦は、ときにあることだが、「自分は足を骨折している」と事前に告げることは前代未聞かと思います。額面通りに受け止めるのか。そのことをどう考えて臨む?
「知らないテイでやるつもりです。何もその怪我の影響とかそういうものはないと考えて、試合に臨むつもりでおります」
──試合前に神経戦を仕掛けられても動じない?
「負けた時に俺が叩かれる要素が増えるんだろうなという気持ちですが、でもそれはケージの中に入ったら関係ないので」
──平本選手は、鈴木博昭戦を見る限り、テイクダウンディフェンスも強くなって持ち味の打撃の距離感も、空手稽古で変わって来る可能性もある。より戦略と仕掛けがでてくる神経戦になるなかで、MMAでのキャリアで勝る弥益選手としては、何が欠かせない、重要な試合になると考えている?
「心が削れないことですかね。本当に駆け引きが多くなる試合だと思うのですよ。だからこそ心のスタミナというか、そこの部分で削られない、逆に削ることができれば勝機はあるかなと思っています」
──そういう練習をしてきた?
「はい、そのつもりです」
──DEEPで芦田選手に2連勝し、DJ選手に勝って牛久選手に敗れた。本気で泣いた試合があったなかで、フェザー級でほとんど戦えていないRIZINでの平本戦はどんなモチベーションになる?
「ただ、平本選手と戦うっていうことは、この試合の意味ってやっぱり、駆け出しというか、まだ実績の少ない平本選手と、一応実績があるとされている弥益があるからこそ、議論が生まれていると思うのですよ。これが平本選手と同じくらいの戦績の選手の試合があっても、平本選手にフォーカスした試合にしかならない。自分のかけるものが大きいからこそ別の議論が生まれている。そう考えると、自分の今回の試合はDEEPでの試合があったからこそ、DEEPで自分が積み上げてきたものがあったからこそこの試合における意義が増えていると思っているので、DEEPがどうこうというのは正直あんまりないっちゃないですけど、その歴史の先にある試合だと思っています」