武尊戦、そしてキックボクシング人生を振り返った那須川
2022年6月19日(日)東京ドームにて開催された『THE MATCH 2022』のメインイベントで、武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者)に判定5-0で勝利し、キックボクシング42戦無敗で終えた那須川天心(TARGET/Cygames/RISE世界フェザー級王者)が試合後インタビューに答えた。
質問の合間にはYogiboに寄りかかって目を瞑るなど、かなり疲れた様子だった那須川だが、30分近く記者との質疑応答に丁寧に答えた。以下、その全文。
格闘技最高だろと日本中に伝えられたと思います
「解放されました。全て終わったなという感じです」
――対戦を終えての武尊選手の印象は?
「印象はずっと同じでしたね。本当に気持ちの入ったファイターで。マジで出会えてよかったなと。感謝しかないですね。ありがとうございます」
――満員の東京ドームで試合をした感想は?
「めっちゃ気分良かったですね。格闘技、日本のエンタメの中でも一番盛り上げた大会だと思うので、格闘技も捨てたもんじゃないと。格闘技最高だろと日本中に伝えられたと思います」
――今回がキックボクシング最後の試合。今後の展望は?
「1回休みたいです。全てから解放されて1カ月、2カ月、3カ月、4か月、5カ月…くらい休みたいです(笑)。ちょっと休む。やるんでやりたいことはなんだろうな。格闘技のことを1回考えない日々を送りたい」
――入場の時にゴンドラに乗って登場しましたが、どんな風景だった?
「めっちゃキラキラしてて星みたいでした。逆夜空みたいな。空から夜空を見た感じでした。俺が地球になったかなってそんな感じでした」
――1Rから右ジャブが冴えていた。あれは作戦通り?
「あれはそうですね、何パターンか用意しておいて。右が当たらなかったらどうしようと考えていたんですけれど、ジャブからしっかり組み立てることが出来たので。右のジャブが自分の中のキーポイントだったのでそこから組み立てることが出来て、いつもより落ちついて戦えましたね」
――武尊選手の右ジャブへの対応は?
「僕、相手のセコンドの声がよく聞こえていて『ジャブは捨てろ』と相手のセコンドがずっと言っていたので、あえてジャブを踏み込もうと思って思い切り打ちましたね。それでジャブで止めることが出来たので。本当はジャブをポンポンと(軽く)打とうと思っていたんですけれど、相手セコンドの声が聞こえたので踏み込んで強く打とうと思って打った感じです」
――1Rのダウンを奪った左はどんな左だった?
「会心の左でしたね。カウンターというかコンパクトに狙う、大きくならないで刀のように刹那というか、それを意識していた。最後に確認したパンチでダウンが取れましたね」
「そうですね。そこで集中力が…切れてはいないですけれど、ちょっとやべぇって感じになって。偶然のバッティングなので仕方がないんですけれど、ちょっと視界がボヤけて。こっち(左)は見えるんですけれどこっち(右)がだぶちゃったから、ちょっと落ち着かないとっていうのはあった。そういう中でもしっかり対応できたのでよかったですね」
――3Rにその視界は戻った?
「いや、戻らなかったですね。今はだいぶよくなったですけれど、こっち(右)はずっとぼやけていたから、しっかりと冷静になっていかないとなって」
――その状態で3Rの展開は?
「展開的には相手は絶対に来るから、そこに全部合わせる、そういったイメージでやっていましたね」
――武尊選手の強さを感じた部分は?
「一番感じた部分としてはプレッシャーっていうのを凄く感じましたね。今までやった選手の中でも、一番強かったんじゃないかなって。本当に僕と真逆のスタイルだったけれど、そこの中で勝ち切れたのは大きいですね」
「ダウンを取った時に本当にゆっくり見れたから、そこでスコーンっていう。本当に力を入れなかったんですよ。斬るってイメージで、それがよかったですね」
――最後のマイクで「キックボクシング最後だった」と言っていたが、そこまで意識していなかった?
「そうですね。最後とかじゃなく武尊選手と戦うってことをずっと意識してやっていました」
――終わってみてキックボクシング最後っていう感慨は出てきた?
「どうだろう…まだちょっとしばらくないんじゃないですかね。でも終わりだもんね。悲しくなりますね」
――最後は涙もあったが、武尊選手とはどんな言葉を交わし合った?
「『天心君がいなかったら俺はここまで続けられていなかったし、本当にありがとう』という気持ち。まだいっぱい話したんですけれど、そういう感じの話ですね。まあ、そこは2人の男話として」
――しばらく格闘技のことを考えたくないというほどの日々は、どんな感じで過ごしていた?
「俺マジで負けたら死のうと思っていたんですよ。本当に思っていて。僕、動画を撮って『これ遺書です』みたいなことをやっていたんですよ。ずっとそういう気持ちでした。だから次の日をやっと迎えられると思えて、今本当に良かったって。心の底から良かったって思っています。だから俺はずっと今日は人生最後の日だって思っていました」
――武尊選手が死んでもいい気持ちでとよく言っていたが、全く同じ気持ちだったと?
「そうですね。死んでもいいと思っていたから、終わるんだと思っていたから。良かったです、生きれたから」