日本の中で戦って「世界チャンピオン」と言っている選手もいる。ぜひ世界に出てきて「本当のチャンピオン」になりたいって思うような若い世代が出てきたら嬉しい
──チャトリ・シットヨートンCEO兼会長が、秋元選手の試合を大会のベストバウトと話していましたね。
「自分としてはやっている時は一杯一杯だったので、正直ボーナスを貰えるって考えていませんでしたし、本当にベルトを獲れて嬉しいという感じでした。ホテルに戻って試合を見た時に、自分が思っていたより良かったなと感じました。これだったら評価してもらえるような試合をできたなって思いました」
──ところでボーナスの使い道は?
「本当に物欲がないので、貯金になるのかなって思います。多分自分のことに使うことはないかなって思います。奥さんにプレゼントとか、両親にプレゼントとか、そういったことに使おうかなって思います。サプライズとかは苦手なので、欲しいものがあれば、と思います」
──『ONE X』で他の試合で印象的だった試合はありますか。
「面白かったなというか、フェザー級キックボクシングのタイトルマッチ、スーパーボンとマラット・グレゴリアンの試合。自分はグレゴリアンが勝つのかなって思っていたんですけど、ただあのプレッシャーをスマートにかわしながら、しっかりと攻撃を当てていたスーパーボンは印象的でした」
──デメトリアス・ジョンソンとロッタンによる特別ミックスルールの試合がありましたが、MMAへの挑戦なども興味があったりしますか。
「MMAは、チームのみんながMMAなので一緒にトレーニングをしてて、ウォーミングアップまでは一緒にやっていますね。レスリングの日も、BJJの日も一緒にやっています。興味は正直ありますね。ただ引退してからで良いかなって思います。今はしっかりキックボクシングに集中して、引退したらやればいいかなって思います」
──MMAファイターのエコ・ロニ・サプトラ(インドネシア)とも練習されたとか。
「階級は一つ下ですけど、パンチのパワーは結構あるなって思いますね。ストライキングの時間とかもペアを組むことが多かったので、その期間にめちゃめちゃ技術が上がったなって思いますね。これからが楽しみですね。自分が普段の普通のトレーニングでも気を抜くのが嫌いで、常にピリピリした集中した感じでやるので、彼もそれについてくるという感じですね」
──「絶対的なチャンピオンになりたい」とタイトルマッチ前に仰っていましたが、今はどんな気持ちですか。
「絶対的なチャンピオンになるためには、一番は基礎だったり本当にみんなが嫌がるような地味な練習、そういったことをコツコツやる選手が一番強いと思うので、そういったことをもっと集中してやっていきたいと思います。パンチのテクニックもしっかり上げていきたい。ボクシングのコーチについてもらったり、一つひとつレベルアップしてきたいです」
──さて、最初のチャレンジャーは誰が相応しいと思いますか。
「僕は誰でも良いかなって思います。やってみたい選手は……どうですかね。レベル的にいったらリマッチになるのか、もしくはチュー・ジェンリャンとカピタンが試合をして、その勝者とかなって思います。やりたい選手っていうのは本当にないです。組まれた試合を完璧にしたいです」
──久々に大勢のファンが会場にいましたね。かなり盛り上がっているようにも見えました。そんな中での試合でどう集中しましたか。
「すごく盛り上がっていたなとは思いました。空手の試合は周りがうるさくて、その中から小さいコーチの声を聞くっていうのを空手の時から意識をしていたので、今回もほとんどコーチの声しか耳に入っていなかったと思います。空手の場合は多いと8面とか同時にやって、その周りにお客さんもいて、その中で師範たちの声をこぼさないようにしていたので。僕の耳にはコーチとセコンドのション・ジンナンの声しか入っていなかったですね。二人の声だけは聞こえましたね。
シアーコーチが言っていたことは、この試合に向けて練習してきたことの中からさらに絞っていって、その中のコンビネーションについて話していたり、あとはプレッシャーかけていけ、倒せとかシンプルな言葉でしたね。セコンドが言っていれば相手も分かるじゃないですか、そのセコンドの声をフェイントに出来るという場面もありました。それも自分としては楽しんでいましたね」
──チャンピオンになってからの反響は。
「まだ家から出ていないので、あまりわからないですが、SNSだったり友人からのメッセージだったりは物凄くきましたね。今までの比じゃないくらいでした。何件来たかも分からないですが、印象的だったのは、ストーリーでタグ付けされたもので “彼氏がチャンピオンになりました”って書いてあって、それは面白かったですね。“あっ、彼女できた”って(笑)」
──ご家族、奥さん、お子さんからの反応はいかがでしたか。
「奥さんは会場まで応援に来てくれて、家でも喜んでくれましたし、娘は僕が次の日に家に帰ってきたとき、ベルトを見せたら喜んでいましたね。ベルトの意味を分かっているかは分からないですが、僕の仕事が格闘家だってのは理解していますね」
──ともに移住した家族の力が支えになったと。
「家族がいて、小さい頃から両親がこの環境を作ってくれたっていうのもそうですし、妻が支えてくれたっていうのもそうですし、娘が毎朝、『パパ、がんばってね』って言ってくれるのとかもそうですし。“ちょっと今日疲れたな、身体重いな”っていうときも、そういう言葉が力になるなって思います。それが結果につながったかなって思います。タイトルマッチが終わったので、シンガポールの周りの島とか。隔離なしで行けるところが出てきているので、そういったところに家族と旅行に行けたらいいなって思っています」
──日本人ファイターが日本を出て戦う意味は、秋元選手にとってどういうものでしょうか。
「世の中にはたくさん世界タイトルだったり、日本の中でも日本のタイトルがもの凄くたくさんあって、正直そのチャンピオン、タイトルの重さというのがどの程度あるのかっていうのが僕はちょっと分からない。世界で評価された舞台で戦うっていうのは、すごく価値のあることだと思いますし、日本の中で戦って世界チャンピオンと言っている選手もいると思うので、ぜひ世界に出てきて本当のチャンピオンになりたいって思うような若い世代が出てきたら嬉しいなって思います」