MMA
インタビュー

【RIZIN】なぜ平本蓮は鈴木千裕に敗れたのか──両者と陣営が語る、LANDMARKメインイベントで起きていたこと「鈴木千裕のやりたい事を相手に押し付ける作戦、徹底的にMMAをやろうと伝えました」

2022/03/07 14:03

朝倉未来の声に鈴木は「いつか戦うときに勝てばいい」、平本は「俺の方が絶対強い。必ずRIZINの頂点を獲る」

 鈴木と平本、ともに打撃を得意とするなか、MMAでは「出来ないこと・やらないこと」があることで、選択肢がひとつ狭まり、逆に選択肢の多い者にとって優位な状況が生まれる。そこでの打撃も、単に立ち技の打撃ではなく、組み技も混ぜられたMMAの打撃は、相手を迷わせる要因となる。

 テイクダウンディフェンスに進化を見せるも、自ら仕掛けるテイクダウンは少ない平本は、自信の近い距離での打ち合いを仕掛けたが、鈴木に投げられ、サイドを奪われた。立ち上がっても鈴木は、「近距離はストレートよりヒジ打ちが良いと試合の中で学びました」と、平本の接近戦に柔軟な肩回りからのフック、そしてヒジで対抗した。

「僕はKNOCKOUTのチャンピオンですが、前回戦ったタップロン選手と圧がすごい似ていたので、“あ、一緒だ似ている、これはキックで勉強しているな”と思って、そこまで焦らなかった」と、鈴木に立ち技で平本に苦手意識が無いことから、平本にとっては“相性が悪い”相手だったこともたしかだ。

 平本も打ち合いの距離になったことで、前がかりになり、自身の持ち味であるタイミングのいい打撃や、近い距離での蹴りが出なくなり、その際でテイクダウンも奪われた。

 練習と試合での乖離は想定はしていても、実際に埋めるには試合経験を積むしかない。

「ヒジを効かせたのもあって、試合なんでそれで倒しに行こうとちょっとこだわっちゃったかなっていうのがあって、“もっといろいろ出来たのにな”っていうのがあるので、ホントこんなんで終わりじゃないです。

 正直、試合になってみて、別物だとは練習していても分かっていたのですけど、本当に自分に足りないものは、総合格闘技の試合の経験だと思うので、それが今日はっきりすごく分かったから、どんどんもっと試合して、こんなんで引いてられないので、どんどんRIZINに出てどんどん試合していこうと思っています。自分の持っているものを最大限出せれば、すごい強い自分を見せれると思うので、もう止まらないです。死に物狂いでやって、RIZINで絶対に誰よりも強くなってみせます」と、平本は心を折らせることなく、今後、コンスタントに試合経験を積んでいきたいとした。

 MMA2戦目ながら、K-1スターからの転向の期待と、メインイベントの重圧のなか、配信メインの「LANDMARK」でSNSを駆使して試合をPRした。それは自身を追い込んでいなかったか。

「プレッシャーとかは別になかったです。マジ、くそ! って感じです(笑)!“またやってやる!”っていう。(SNSを控える?)そんな黙ってられるタイプじゃないんで」と笑顔を見せると、朝倉未来の「まだまだ話にならんな」のツイートにも「いや、どうも思わないです。俺の方が絶対強いと思うので。本当にどんどん試合して、必ずRIZINの頂点獲ります。絶対あきらめない」と、進化の手ごたえを得た敗戦だったと語った。

 一方の勝者は、フェザー級戦線でたしかに存在感を示したものの、MMAでは“その先”があることも認識している。

 試合後には「いつか」と前置きしながら、朝倉未来との対戦を望んだ。

「朝倉未来選手から『(平本に)勝てるよ』みたいに言われて、SNSで僕、返信したんですよ。『任せてください』と。SNSを見ている格闘技ファンの方から、『朝倉選手は同階級なのに媚びてるんじゃねえ』という声もあったんですけど、ただ、その日戦うのは朝倉選手じゃなくて平本選手だというのがあったし、激励をもらって、いつか戦うときに僕は勝てばいいと思っているので」と、朝倉が引退するまでに必ず強くなるので戦いたい、というリング上でのコメントには、そこで朝倉を越えることを目標としているという。

 勝利をセコンドの渡慶次幸平や塩田GOZO、クロスポイントの勝久トレーナーらチームのおかげと語る鈴木は、「セコンドが冷静にさせてくれて、活路をいつも作ってくれている。本当にチームで勝ったという感じですね。僕一人じゃここまで来れない」と、チームでの勝利と語った鈴木。

 塩田は、鈴木の成長を「前戦の山本戦もそうでしたが、セコンドの指示をしっかり判断できる戦い方が身についてきた」ところにあるという。

「今後は、より持ち味の打撃を活かせるUFCのトップストライカーのような選手に育って欲しいです。その為にも今後はオールラウンダーの選手にも、より組み勝てる組み技の底上げが必要だと思います。今の年齢を考えると伸び代は相当あると思ってます」と、今後のさらなる進化に期待を寄せる。

 また榊原CEOは、メインについて、「若き20代前半、22歳の鈴木千裕と23歳の平本蓮。きっとこれからもRIZINの舞台でも、RIZINの舞台を離れてMMAの世界の中でもすごいいい意味で刺激しあう、ライバル関係になるんじゃないかなとい思います。これが初戦で、2戦目、3戦目が見たくなるし、何年後になるかわからないけど、またMMAファイターとして、成長した2人の戦いは是非また見てみたいなと、そう思わせる、非常に気持ちがこもったいい試合だったと思います。

 常々思うんですけど、技術は時間とともに、その間ほんとうに血と汗と涙をどれだけ多くのものを流して精進したかによって、必ずスキルアップもするしレベルアップもすると思うのですけど、圧倒的な“ファイティングスピリット”っていうのはハートは鍛えようがないっていうのがある。

 やっぱり最後、あの行けるか行けないかっていうところで、鈴木千裕も平本蓮もしっかり戦う男としてのファイティングスピリットを持ち続けている。平本蓮に至っては負けた後でも“負けてない”っていう、自らに重たい十字架を背負わせる悔しさというか、あきらめない姿勢っていうのは本当に彼らを強くすると思うので、そういう意味では、鈴木選手においても平本選手においても、ハートの根っこの部分、RIZINのファイターとして持っていてほしいものはしっかり見ることができたので、期待はさらに増しました」と、高く評価。

 今後について、「鈴木千裕選手が1Rの早いタイミングで、拳を親指の付け根を骨折しているので、このあとドクターチェック、レントゲン撮ってみないと分かりませんが、打撃の展開で、3R通して平本蓮の求める試合スタイルに付き合えなかったというのはあると思いますが、総合格闘家としての成長度合いは両選手ともすごいスピードで成長していると思いますし、負けはしましたけど、平本蓮選手の成長もしっかり見てとることができました。怪我がなければね、本当にこの先も4月とかのRIZINの大会に出てきても、TRIGGERとかの大会でも面白いんじゃないかなと。これからも両選手の、鈴木千裕に関して言えばKNOCKOUTも当然、二刀流ですから続けていくことになると思います。

 平本選手については、ドクターチェック後、しっかり本人ともマネジメントとも話をしますが、僕は平本選手に圧倒的に足りないのは実戦経験だと思うので、キックの試合での経験は当然K-1でトップまでいった選手ですけど、紹介VTRで石渡伸太郎も言っていた通り、戦うまでの道場では本当に強いと思います、あとは本当にリアルに試合をする中での、引き出しをどう引き出すか、これは実戦でしか学べないことが多々あると思うので、ほんとうに早いタイミング、次回の4月のTRIGGERになるのか、ナンバーシリーズになるのか、もう1試合経験して、海外に戻ってトレーニングするとか、僕らとすると、もう来月の大会から、早速戦う機会を提供したいなと思っています」と、怪我の治り具合によるが、早めに3戦目を組みたい、と語っている。

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