MMA
インタビュー

【UFC】髙阪剛がセフードvsモラエス、シェフチェンコvsアイのW王座戦を解説「階級離れしたフィジカルを“持つ者”と“持たざる者”の攻防戦になる」6月9日(日)『UFC238』

2019/06/04 11:06
【UFC】髙阪剛がセフードvsモラエス、シェフチェンコvsアイのW王座戦を解説「階級離れしたフィジカルを“持つ者”と“持たざる者”の攻防戦になる」6月9日(日)『UFC238』

(C)Getty Images

日本時間の6月9日(現地時間6月8日)、米国イリノイ州シカゴのユナイテッド・センターで『UFC238』が開催される。


【写真】※左よりヘンリー・セフード、マルロン・モラエス、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ、ジェシカ・アイ/Getty Images

メインイベントは、バンタム級の前王者TJ.ディラショーの王座剥奪を受けて、現フライ級王者ヘンリー・セフードとマルロン・モラエスによるUFC世界バンタム級王座決定戦が行われる。セフードはこれに勝てば、UFC史上4人目のUFC二階級同時制覇となる。

さらに、王者ヴァレンティーナ・シェフチェンコにジェシカ・アイが挑むUFC世界女子フライ級タイトルマッチも行われる。

この2大タイトルマッチの見どころを、WOWOW『究極格闘技-UFC-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。

セフードvsモラエスはエリートvs野生の闘いになる

――フライ級王者ヘンリー・セフードが、4連勝中のマルロン・モラエスと、現在空位のバンタム級王座を争うこととなりました。この一戦をどう見ますか?

「最近、二階級制覇を狙う選手が増えていますが、やはり一番問題となるのは、体格差とフィジカル差なんです。ただ、セフードの場合、フライ級王者ということで、バンタム級から見て一階級下ではありますが、フィジカルに関していえば、下手したらバンタム級以上、フェザー級ぐらいの力があるのでは、と思っています」

――一階級どころか二階級上のフィジカルですか。

「例えば今年1月、当時のバンタム級王者TJ.ディラショー相手にフライ級王座防衛戦をやったときも、スタンドの攻防の最中に、セフードが両手でプッシュしたら、ディラショーが吹っ飛んだシーンがありました。普通、あんなに吹っ飛ばないですから。あの瞬間、ディラショーは“これはヤバいぞ”と感じただろうし、逆にセフードの方は“いける”と思ったはずです。他の試合を見ても、組んでのフィジカルは当然として、スタンドで構えてプレッシャーをかけると、どんどん相手が下がっていっている。これは、おそらくフィジカルの強さが構えからもにじみ出ているからでしょう。さらにガードの上からでも“これを食らったらまずいな”と相手に思わせるような打撃を5ラウンド終始できてしまう。そこが彼の一番の強みなのではと思いますね」

――圧倒的なフィジカルとともに、体幹の強さから繰り出される軽量級離れした重いパンチが最大の武器だと。

「そうですね。打撃を打つときに一切、下半身がブレないんですよ。ヒザが伸びて打っているパンチなんてホントにない。あれを5ラウンド続けられるのは、驚異的としか言いようがないです。強弱をつけずに“強”だけですから。前フライ級王者のデメトリアス・ジョンソンなんかは、ペース配分がわかっているので、途中でうまく流すんです。ステップを使って翻弄したり、ごまかすテクニックを持っている。でも、セフードにはそれがない。セフードは北京五輪のレスリング金メダリストですよね。過去にもオリンピックのメダリストが何人かUFCのリングに上がっていますが、本物の中の本物が来ちゃった、という感じがします。他の選手からしたら“これはまずいヤツがきたな”“俺らのところに来るんじゃねえ”と思ってるんじゃないかな(笑)」

――もともと素質がすごいのに、ここ数試合、MMAに完璧にアジャストしてきたわけですからね。

「チャンピオンでありながら、ここ数試合、まだ急成長している。闘いの中で技術の取捨選択をしていって、自分の型を見つけたことで、本人も驚くほどMMAファイターとして強くなっている気がします」

――対するマルロン・モラエスは、激戦区バンタム級で4連勝中の選手ですが、いかがですか?

「モラエスは3試合連続で1ラウンド勝利中ですが、試合を作るタイプというより、とにかく試合を終わらせることを考えて闘う選手という印象ですね。打撃の一発一発が“KOで勝つための最短距離の打撃がこれだよ”というものなんですよ。感覚的に、勝つ=KOか一本という気持ちができている。だから今回の試合でも、セフードはプレッシャーをどんどんかけていって、ペースを握ろうとすると思いますが、モラエスはそういうのをあまり考えず、いつもどおり倒しにいくのでは、と考えています」

――相手がどんな戦法でこようと、最短距離で仕留めにいくだけだと。

「とは言っても、むやみに前に出るのではなく、自分の射程圏内で常に試合をすると思います。距離の設定がモラエスの方が、少し遠いんです。だから、プレッシャーをかけたいセフードからしたら、モラエスが得意としている前足の蹴りはすごく嫌な攻撃になるはず。そこでもしセフードがじれて、“もう、行ってまえ!”ってなったとしたら、モラエスにとって大きなチャンスが舞い込むかもしれない」

――モラエスが、セフードのプレッシャーに左右されず、自分の距離や闘い方を貫けば、勝機が訪れると

「全体的なポテンシャルの高さはセフードの方が上回っているかと思いますが、要所要所で仕留める力はモラエスもかなり高いものを持っているので、勝つ可能性は大いにあります。モラエスは野生の勘が研ぎ澄まされている感があるので、この試合はエリートvs野生の闘いになると思いますね」

シェフチェンコvsジェシカ・アイ、攻略には“形の維持”と“打撃対策”が必須

――セミファイナルは、シェフチェンコがジェシカ・アイ相手に女子フライ級王座防衛戦を行います。この一戦はどう見ていますか?

「シェフチェンコもまた、この階級ではフィジカルが飛び抜けています。前回、元ストロー級王者のヨアナ・イェンジェイチックとの試合でも、テイクダウンもタックル云々ではなく、組んで持ち上げてのスープレックスで投げていますから。シェフチェンコはアマンダ・ヌネスと一階級上のバンタム級タイトル戦をやったことがありますが、フィジカルに関しては互角でしたからね。シェフチェンコもまた、セフードのように、同級選手たちから“来るんじゃないよ”って、嫌がられているかもしれない(笑)」

――しかも打撃に関しては女子全階級でもトップクラスですし、キックボクシングで世界タイトルをいくつも獲得しています。

「あの打撃技術は相手選手にとっては脅威ですよ。相手のローキックなんかも上半身を動かさずに脚だけでさばいて、目線を外さずに打撃が打ち返せる。結局、それが相手にとってはすごくプレッシャーになるし、怖いんです。かつ、要所要所でいろんなコンビネーションを出してくるので、相手からすると、嫌なところを全部突かれてしまう。そうやって相手の形を崩すのがうまいんです。“いつもだったらこう動くのに”ということをできなくさせる、そういうタイプの強さですね」

――対するジェシカ・アイはバンタム級では連敗していたのが、フライ級転向後は無傷の3連勝と、こちらも覚醒した感があります。

「ジェシカ・アイの方もハマればかなりの強さを発揮すると思います。打撃の打ち方が綺麗で、自分の設定距離にスパンとハマれば、相手にかなりダメージを与える打撃ができますからね。ただ、シェフチェンコは手数が多くないけれども、相手の打撃をブロックしてから返しの打撃が強いので、ジェシカがその対策をどう練っているのかが、ひとつのポイントになるはず。そこで自分の形がキープできれば、必ずチャンスはくると思いますが……それがなかなか一筋縄ではいかない(苦笑)。だから今回のダブルタイトルマッチは、どちらも同じようなことが言えると思うんです。モラエスとジェシカ・アイが、軽い階級とは思えないフィジカルの強さを持つ相手をどう攻略するか、そこがポイントですね」(提供=WOWOW、取材・文=堀江ガンツ)

【放送日程】

WOWOW『UFC-究極格闘技-』
『生中継! UFC‐究極格闘技‐ UFC238 in シカゴ
豪華ダブルタイトルマッチ! セフード二階級制覇なるか!?』

6月9日(日)午前11:00[WOWOWプライム]生中継
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)
6月11日(火)よる9:00[WOWOWライブ]リピート
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)

【主な対戦カード】
▼バンタム級王座決定戦
ヘンリー・セフード
マルロン・モラエス

▼女子フライ級タイトルマッチ
ヴァレンティーナ・シェフチェンコ
ジェシカ・アイ

【出演】
解説:高阪剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
進行:福長英未

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