(C)ONE Championship
2022年1月14日(金)シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE: HEAVY HITTERS」のONEストロー級(※水抜き禁止の56.7kg)で、池田仙三(パラエストラ千葉ネットワーク)がジェレミー・ミアド(フィリピン)と対戦する(ABEMA 格闘チャンネルおよびONE公式アプリで生配信)。
前戦のホイ・リアン戦での拳の怪我を乗り越え、およそ13カ月ぶりの試合に挑む池田仙三は、「今はもう戦えるところまで辿り着けることが奇跡で、それは当たり前じゃないんだなと思っているので、練習も試合の場に立てることも嬉しい。覚悟を決める必要もない。毎日、命賭けてやっている、戦うから特別なんじゃなくて、今一日過ごせていることが特別だなっていう気持ちなので。意識さえ飛ばされなければ、やられることはないと思っている」と、試合直前の心境を語った。
自分の方がとんでもない苦しい試合をしてきたと思うので。苦しい試合になった時の強さは自分の方が上
──シンガポール入りし、調子はいかがですか。
「減量真っ只中なので、少し体がだるいですね。1月10日の深夜2時くらいにホテルに着いて、だるさであまり眠れていないです。飛行機では映画2本くらい見て、仮眠してあっという間に着きました。キムタクの『マスカレード・ナイト』と『ヴェノム』を見れて、ラッキーでした(笑)」
──前回のホイ・リアン戦は調子が悪いように感じました。あの試合は……。
「前回の試合は、すごいキツかったです。始まってすぐ、20、30秒くらいで打った、1発目のパンチで拳が折れてしまったんです。めちゃくちゃ痛かったです。その後、1分くらいで金的で止まってその時も激痛で『うわ、これどうしよう』って考えていたら1Rが終わってしまって。このままじゃ負けるなって思ったんです。なので、考えるのを止めようと思ったし、(自分が怪我をしているって)悟られてもダメで下がったらやられちゃうから、ヒジとかヒザで前に出ようと思ってとにかく無我夢中でした。
スタミナもすごい切れてしまったし、動けなくて負けちゃうと思って必死に前に出ました。そうしたら、中盤に相手のスタミナが切れてきて、これはもう気持ちの削り合いに持っていくしかないなって思いました。向こうも後半から疲れが出てきて、自分も全然動けなかったんですけど、気持ちだけはとにかく前に出ていこうと思って、なんとか勝った感じでした。
勝利したとはいえ、自分の試合ができた感覚じゃなかったので、勝ってすぐはあまり嬉しくなかったです。周りは『良かったね、らしい試合じゃなかったけど勝てて良かったね』って言ってくれましたけど。拳が折れてからは、全然力入らず握れなかったんです。でも、その手も出さないとやっぱりガンガン前に来られるし、こっちが弱気なのがバレちゃうなって思ったので、壊れた方も要所では使っていました。痛みがヤバかったですね。勝ったから良かったけど負けていたら地獄でしたよ(苦笑)」
──それでも、ONE初白星を掴んだことになります。
「ONEに来てから苦しい試合しかしていないですけど、あの試合も苦しい試合の中でなんとか拾ったなって思います。気持ちで勝ったなと」
──仙三選手は今年40歳になります。ファイターとしての身体やコンディションの管理はどのようにしているのですか。
「ここ最近でだいぶ変わりました。特にここ1年でだいぶ変わりました。怪我と向き合う時間がすごい多かったので、“やらない”ように心掛けています。やって怪我しちゃうので、逆にやらないっていうのが最近は大事なんだなって思って、昔と比べたら練習の量を減らしていますね。その時の身体と相談して、練習をコントロールしています」
──肩や足、拳まで折るなど怪我が続いていた中、どのようにファイターとしての気持ちを維持してきましたか。
「ずっと自問自答でしたね。自分との戦いですよ。今の自分は『最後は、人と戦うのではなくて、いかに自分と戦って、自分に負けなければ、負けることはない』という考え方に辿り着きました。もう人との戦いじゃないというか。今回も、ジェレミー・ミアドとの戦いとは思っていないですね。自分との戦いだと思っています。
自分との戦いを続けてきたので、練習できない時間は長かったけど、自分と向き合ってきて、自分から逃げることはしてこなかった。格闘家として強くなったかとか、技術が上積みされたとかは分からないですけど、気持ちの部分では一回り上のものを手に入れられたのかなと思います。メンタルには自信があります。自分らしい試合ができると思うし、周りが面白いって思ってくれる試合ができるのかなと思います。何があっても逃げることはないし、ケージの中で諦めることは何があろうとないです」
──今回の試合に向けての調整はどのように過ごしてきましたか。
「練習がものすごく辛かったです。練習ってこんなにキツかったっけ? と参ってしまうくらいキツくて身体が動かなかった。試合が決まってからスパーとかを初めて、身体が本当に動かず、練習に行くのが嫌だなって思うくらい辛かったです。ただ、2週間くらい前からようやく自分の動きを取り戻して来たので、良い試合ができると思います。本当に気持ちの部分は世界トップの選手にも全く負けていないので。面白い試合できるんじゃないかなって思います」
──今回のジェレミー・ミアド戦のオファーがあったのはいつで、どう感じましたか。
「12月頭だったと思います。マジかって思いました。(2021年中にオファーが来ることは)完全にないと思っていたので。日本の『Road to ONE』とかでオファーがあったのですが、流れてしまっていたこともあって、もう2021年はないかなって思っていました。練習は思う存分できていなかったですけど、決まったらどんな状態でも試合をしようとは思っていましたけど。自分の身体もベストではなかったし、(試合が決まらないってことは)逆に試合をやるなって意味なんだなって捉えて、2022年にしっかり皆んなに試合を見せようって思っていたんです。そんな矢先に、ONEからオファーがきて、マジ? って不意打ちでしたね(笑)。
でも、本当に嬉しかったです。どんな状態でも試合をやれるってことが、本当に嬉しいことだなって。明日出来ることすら分からないし、明日格闘技の練習ができるかも分からない、そう思ってやっているので、試合に辿り着けることが嬉しい。前までは、負けるのが怖かったんです。応援してくれる人がいるので、結果が出なかったり負けたりするのが怖かったんですけど、今はもう戦えるところまで辿り着けるってことが奇跡で、それは当たり前じゃないんだなと思っているので、練習もそうですけど、試合の場に立てることが嬉しい。勝ち負けもそうですけど、試合に上がれるって嬉しいことだなって、よく考えると(試合ができることって)そう簡単なことじゃないなって。だから、どんな結果であっても、自分で今までやってきたことを全力でやって楽しみたいなって。みんなにも楽しんで欲しいなって思います。すごい楽しみです」
──ジェレミー・ミアドは前回の試合ではTKO勝利、中国のミアオ・リータオ相手に2連勝をマークしました。どんな印象を受けましたか。
「強いなって思いましたね。他の試合も見たんですけど、めちゃめちゃ良い選手だなと思いました。身体的に才能を感じるファイターですね。スピードも、バネもパワーもあるなって。身体的、才能で言ったら自分より上かなって思いましたね。すごい良い選手だと思います」
──ミアドは「センゾーはベテランでPANCRASEの王者、これまでで一番タフな試合になる」と話しています。相手をどのように分析していますか。
「強みは、やっぱり勢いですよね。勢いがものすごい、恐れ知らず。全く怖がらずガンガン攻める度胸もある。あとは身体的能力が高いなって。だから、一発もらったら危ないなって思います。ただ、メンタルで言ったら自分の方が全然強いじゃないかと思います。それだけ苦しい試合をしているのは自分。彼の過去の試合を見ても自分の方がとんでもない苦しい試合をしてきたと思うので。苦しい試合になった時の強さは自分の方が上なんじゃないかと感じますし、彼が今まで戦ってきた相手と自分は違うと思うので。
自分は意識さえ飛ばされなければ、やられることはないと思っているので。他の選手は彼の強さにビビっちゃっているというのがあったけど、自分は相手にビビるってことはない。向こうが僕の意識を飛ばさなければ、自分が100パーセント勝つなって思っています」