試合をする中でたくさんのレイヤーがある。多くのオプションを用意しているよ(ブラウン)
──対戦相手のセルジオ・ペティス選手の動画も多く見ているかと思います。懐深くフアン・アーチュレッタ選手の入りをさばいて、左右に追ったり、下がりながらもタイミングのいい右ストレートを打つことが出来る、王者の動きをどう見ていますか。
堀口 左右のステップは……速いですか? ステップっていうよりはべた足でジリジリと詰めていく感じで、フットワークではないですよね。
──たしかにベタ足で待ちのタイプかと。
堀口 どっちかっていうとカウンターが得意なタイプかなっていう感じですよね。
──となると、堀口選手の踏み込みを狙ってくることが考えられますよね。
堀口 当然、海君との試合は見てると思うので、そこは間違いなく狙ってくるんで、そこに合わせられないようにとか、いろんな事を考えながらやってますね。
ブラウン ペティスはもちろんキョージの動きに対応しようとしていると思うよ。だけどキョージみたいなスピードを持ったパートナーを見つけるのは難しいだろう。いいパートナーを見つけたと思っていたとしても、キョージの前に立った時に同じじゃなかったって気付くよ。
──朝倉戦は「プランA」で終わってしまいましたが、今回はいくつぐらい用意していますか。
ブラウン 単純なプランと言うより、試合をする中でたくさんの“レイヤー”(階層)がある。攻防のなかで局面ごとにキョージができる事が多くある。それがトレーニングの意味だからね。新しい攻撃を進化させて増やして、一番目の攻撃が「A」だとして、止められたとしても、レイヤーがたくさんあるから。一撃目、1レイヤー目に対応されても、まだまだ多くのオプションがあるんだよ。
──場面ごとにファイトツリーのように階層があると。
堀口 そうですね。対峙してみて全く通じない時とかもあるんで。それは相手の出方とか見て、場面場面で変えていくって感じですかね。
──セルジオがカウンターに長けた寝技が出来るキックボクサーだとして、組みについてはどうとらえていますか。パワフルなアーチュレッタがきれいに組ませてもらえない場面が多かったです。
堀口 アーチュレッタ自体がそんなに組みが強いって感じじゃなくて、入り方的にもあんまり強いなとは思わなかったですね。ガチャガチャして最終的に組みつくという。
──堀口選手が組みの場面になったら、異なる形になると。
堀口 まあ、分からないですけどね。組むか打撃で終わるのか。その場面、場面で。ただ打撃ということではなく、打撃のなかにフェイントがあったり、ただ打撃、レスリング、寝技だという風に分かれているのではない、MMAとしての使い方を練習してきたので、その選択肢は多いですね。
ブラウン それにキョージのグラップリング能力はとても高いよ。試合でこれまで実際にあまり見せる事はなかったと思うけど、それは見せる必要がなかったからだし、キョージが組みを使うっていうカードを試合で選択した時、世界レベルだと皆が気づくはずだ。何と言うか……彼はどの場面でも食物連鎖のトップにいるんだよ。
──食物連鎖のトップ! 百獣の王ライオンだということですね。グラップリングの猛者であるブラウンコーチをしても、キョージライオンに食われることがあるのでしょうか。
ブラウン 毎日だよ。
堀口 ノー!(笑)
ブラウン いやほんとうに毎日、何度もこのリトル・モンスターにタップをしなきゃいけなかったよ。
堀口 I can submit you, but you can submit me(僕がサブミットもするし、マイクも僕をサブミットするでしょ)
ブラウン まあね。いまや僕の方がタップが多いけど(苦笑)。
──セルジオ選手には、下からのスイープ、ヒップスローなど柔術的な動きもあります。
堀口 そうですね。組んで上よりも下からしかないのかなっていう感じですよね。何て言うか……昔の柔術って感じかなというイメージですね。
──“昔の柔術”ができる人もATTにはいますね。
堀口 そうですね。柔術のクラスもあるし、柔術とキックが得意な選手は多いですから。
──どんな選手と練習することが多かったですか。
堀口 具体的には……日によって違ったりしますけど、ペドロ・ムニョス、アドリアーノ・モラエス、パウロ・サントスとか、デカい選手とも練習してきたので、力負けもしないですね。
──現ONE世界フライ級王者のアドリアーノとは練習する機会が多いようですね。彼の強みはどんなところに感じていますか。
堀口 同じくらいの体重なんで、練習することが多いんですけど、手足が長いところが強みで、立ちも寝技もちゃんとできて、レスリングもそこそこできる。やっぱり“何でもできる”ところが強いところかなと思います。
──ATTの環境は、アドリアーノ、ムニョスを含めて色んなタイプの選手がいることが強味で、それが今回の試合への自信にもなっているでしょうか。
堀口 それもあります。「試合での自信」というのは練習からですね。自分は試合って練習と同じだと思っているんで。ただの考え方の違いかなと思います。“いつもの練習を試合のようにやっている”ので、試合でも別に緊張とかもしないんですよ。