(C)Kyoji Horiguchi/Mike Brown/Bellator/U-NEXT
2021年12月3日(日本時間4日)、米国コネチカット州アンカスビルのモヒガンサン・アリーナで開催される「Bellator 272: Pettis vs. Horiguchi」にて、RIZINバンタム級王者の堀口恭司(日本)が、Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティス(米国)に挑戦する。
日本でもU-NEXTにて生配信される同大会に向け、本誌ではコネチカット入りする前、フロリダのATTで最終調整を積む堀口とマイク・ブラウンコーチにリモートで取材を行った。
堀口は、2020年の大晦日の朝倉海戦から約10カ月、米国及びBellatorで戦うのは、2019年6月にマジソンスクエアガーデンで同王座を戴冠したダリオン・コールドウェル戦以来となる。
その後、2019年11月に、右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷の手術を行い、RIZINバンタム級王座とBellator世界バンタム級王座を返上。2020年の大晦日に、約1年4カ月ぶりの復帰戦でまずはRIZINバンタム級王座を朝倉海から取り戻し、今回、Bellator王座も再び腰に巻くべく、米国でサークルケージの中で戦う。MMA29勝3敗。
対するセルジオ・ペティスも堀口同様に元UFCファイターでオクタゴンで9勝5敗(MMA21勝5敗)と大きく勝ち越している強豪だ。2019年9月の最後のUFCでタイソン・ナムに判定勝ち後、Bellator入り。アルフレッド・カシャキヤンをギロチンチョークで極めると、リッキー・バンデハス、フアン・アーチュレッタに判定勝ちで王座を獲得している。今回のセコンドには米国ルーファスポーツに出稽古中の平本蓮も加わるという。
これまで日本人男子で北米MMAメジャータイトルを獲得したのは堀口恭司のみ。
米国フロリダのアメリカントップチーム(ATT)に所属し、修斗からUFCに参戦、RIZIN、Bellatorでも活躍。ベースの空手を最先端のMMAに融合させ、唯一無二のスタイルで勝ち星を積み上げ、チャンスをモノにしてきた。北米に置いて望まれる王者に──たしかな実力とともに、そのチャンスを掴む環境を自ら作り上げてきた。
堀口は、2016年のATT入り以来、5年間ともに練習し、戦ってきたブラウンコーチに絶大な信頼を寄せ、そのオリジナルなスタイルを進化させてきた。堀口を公私に渡りサポートしてきたブラウンコーチも、今回の王座戦を「真にキョージが世界的にリスペクトされるようになる時だ」という。
堀口&ブラウンコーチに「決戦」に向かう心境を聞いた。
格闘技のことだけ考えていれば成り立つからシンプルでいい(堀口)
──いよいよBellatorでのタイトルマッチが近づいてきました。その前に、堀口恭司選手の家に居候をしていたコディ・ロウ選手が、前回のBellatorで1R TKO勝ちを決めましたね。左でダウンを奪い、三角絞めをディフェンスしてのパウンドアウト。どうご覧になりましたか。
堀口 はっきり言ってやっぱりレベルが違うと思ってたんで。それでもKOってなかなか取れないものなので、しっかりKOを取れて良かったなと思ってます。
──対戦相手からカーフキックももらいましたが、ブラウンコーチはどう見ましたか?
ブラウン クリーンに入っていたね。バランスを少し崩したから危なかった。ただ、コディもカーフキックは出していたからね。ウチのジム(アメリカントップチーム)の選手は特にこの技を使う選手が多いから、ほとんどの選手は対策はできていると思う。いまやカーフキックの対策をしないのは、危険だよね。
──以前、一緒に家具を組み立てている動画を見ましたが、コディ選手はいまは堀口選手の家にいないのですか。
堀口 いないですね。コディはペンシルベニアからフロリダに来て、もともとアメリカ出身なので、自分が家を貸さなくても家は借りられたんですが、本当に最初だけ家が見つかるまでの期間だけ、別にいていいよ、みたいな感じだったんです。それで家が見つかってそこに移って。今は自宅に4部屋あるのに、1部屋しか使っていない。他は誰も居ないっていう。だから……掃除が大変ですね(笑)。
──では、いまはまたひたすらATTと家の往復、そして愛犬のロイとの2人暮らしですね。
堀口 ハハハ、そうですね。
──ブラウンコーチ、堀口選手がいつもストイックで心配になったりはしませんか?
ブラウン やり過ぎだって思う時はあるよ(苦笑)。
堀口 Not too much! やり過ぎではない(笑)。
ブラウン 分かると思うけど、彼は本当に努力家で手抜きを一切しないんだ。常に100パーセント。日々、全力で常に力を出している。これまで何度も“ちょっと軽めにしよう、少し休もう”って言ったんだけど。彼はそれを言われるのも嫌がるんだ。それでも身体を保てている。本当にこのペースで何年も続けている事に驚いているよ。彼はやっぱり特別なんだと思うし、皆と違うように身体が作られているんだろうね。
──堀口選手は、家から近いジムとの往復で、気持ちを切り替えることが難しくないでしょうか。
堀口 家に帰ったら格闘技のことは考えないし、休みの日は、結構近くに池とかあるんで釣りに行ったりしているので……でも毎週のようにUFCとかBellatorとかあったりするんで、それをオーナー(ダン・ランバート)の家に行って見たり、自分の家に皆を呼んで見たりとか、だから考えないって言っても、ほぼ格闘技ですね(笑)。
──ほぼ格闘技漬けじゃないですか(苦笑)。それでも煮詰まったりはしないんですね。
堀口 そうですね。逆に言えば、それだけ(格闘技のことだけ)考えていれば成り立つじゃないですか。だから簡単でシンプルでいいなと思うんですよね。
──簡単とは思いませんが、たしかに格闘技にフォーカスできていることは感じます。ところでマススパーで、堀口選手の打撃が入ってしまうと、ときどきブラウンコーチがやり返してくる事もあると。
堀口 遊びに毛が生えたような感じですけどね。当たっちゃうって言ってもたまにパツってかするぐらい。それを自分がからかうので(笑)。
ブラウン キョージはちょっとアメリカ人に変わりつつあると思うんだよね。彼が最初にATTに来た頃はもっと日本人らしくて、礼儀正しかった。パンチが当たってしまったら“ごめんなさい”って。ATTに何年かいて、ちょっとクソッタレになってきたね(笑)。
堀口 ハハハッ、だって「初めまして」で、そりゃパンチが当たって「KOだよ、今のは!」なんて言えないじゃないですか(笑)。もともとそういう感じですけどね、自分は(笑)。
ブラウン まあ、ほんとうのところは僕に対して、礼儀正しいし優しいよ。痛めつけられる事はない。ハードには来ないし、力の調整もすごく上手いしね。そもそもやり返そうと思っても、彼は速くて触れない。