ヤンとサンドヘイゲンは「異種格闘技戦」と呼びたいくらいタイプが違う
――続いてセミ・メインイベントは、当初、ピョートル・ヤン相手にバンタム級初防衛戦を行う予定だったアルジャメイン・スターリングが首の手術からの回復が遅れたため、ヤンvs.コーリー・サンドヘイゲンのバンタム級暫定王座決定戦になりました。
「サンドヘイゲンは、7月にTJ・ディラショーに判定負けしながら、急きょチャンスが巡ってきたわけですよね」
――ディラショーは試合後、ヒザの手術をしたため今回の暫定王座決定戦には出場できなかったわけですが。そもそもあの試合は、ほぼ互角の内容で、「サンドヘイゲンが勝っていた」との声も多い試合でした。
「自分もサンドヘイゲンの勝ちじゃないかと思ったんですよ。ただ、ディラショー戦で勝負の分かれ目になったポイントがあって、今回のピョートル・ヤン戦でも、そこが肝になるかなと思うところがあるんです」
――それはどんな部分ですか?
「サンドヘイゲンは本当のオールラウンダーで、穴がないように見えるんですけど、なんでもできるが故に、相手の強い部分でも勝負してしまうところがあるんですよ。例えば寝技で下になっても、ロールと呼ばれる回転する動きでスタンドに戻したりするのが得意なので、“テイクダウンディフェンスでフィジカルを使ってしまうくらいなら、自分から下になって回転して脱出すればいいや”みたいなところが見えるんですよ。ただ、それってジャッジの印象は、あまり良くないんです」
――サンドヘイゲン本人の感覚では全然ピンチじゃないのに、ジャッジからは「寝技で上を取られた」と判断されかねないわけですね。
「そうなんです。TJ・ディラショーとの試合でも、そこをジャッジに判断されて、微妙なラウンドを落としたことで、判定負けにつながってしまった部分があると思うんですよ」
――そこが強みであり、落とし穴でもあったわけですね。対するピョートル・ヤンはいかがですか?
「ヤンはそれとは全く逆のタイプで。自分が不利な体勢でタックルを仕掛けることはないし、もし相手がタックルに来たら何がなんでも切る。フィジカルが強いから、しっかり切れるんですよね。打撃に関しても、スターリング戦では不用意に手を出さず、前に出るプレッシャーで相手の体力を削り、ポイント、ポイントでしっかり当てる打撃を打ちにいく。それで相手が疲れたところで勝負をかけていくような、クレバーな試合をやるようになっていた」
――自分の勝つためのスタイルが固まっているのがヤンで、局面ごとにいろんな技術を駆使しようとするのが、サンドヘイゲンだと。
「そうですね。サンドヘイゲンは技が多彩なので、勝負所で畳み掛けるというより、持っている技術のどれが相手に有効なのか、探りながら試合をやっていくタイプだと思いますね」
――では、勝負のポイントはどの辺になりそうですか?
「タイプがまったく違うことと、あとは身長差がかなりあって、サンドヘイゲンが10センチ高いんですよね。身長180センチというのは、バンタム級ではかなりの長身ですから、サンドヘイゲンはその身長、リーチを使って、遠い間合いからでもパンチを届かせることができるし、対角線のローキックもズバズバ決めていくし。あれは、相手が距離感をつかめていないから、もらってしまうんです。
そういうサンドヘイゲンを攻略するのは、本来かなり難しいんですけど、ヤンにはそれを崩せるだけのフィジカルと、強い打撃を当てる感覚を持っている。長い距離で、多彩な技術を駆使するサンドヘイゲンを、ヤンの圧力と踏み込むスピード、打撃の破壊力が切り崩すことができるかが、鍵になるでしょうね。
その意味では、同じバンタム級同士の試合とはいえ、異種格闘技戦と呼びたいくらいタイプの違う二人なので、これまで見たことがない、異次元の試合になるかもしれない。また、ここから何かが生まれるような試合を期待したいですね」(取材/文・堀江ガンツ)
UFC 267: Blachowicz vs. Teixeira
2021年10月30日(土)アラブ首長国連邦アブダビヤス島
エティハドアリーナ
【メインカード】
▼UFC世界ライトヘビー級選手権試合 5分5R
ヤン・ブラホビッチ(ポーランド)28勝8敗
グローバー・テイシェイラ(ブラジル)32勝7敗
▼UFC世界バンタム級暫定王座決定戦 5分5R
ピョートル・ヤン(ロシア)15勝2敗
コーリー・サンドヘイゲン(米国)14勝3敗
▼ライト級 5分3R
イスラム・マカチェフ(ロシア)20勝1敗
ダン・フッカー(ニュージーランド)21勝10敗
▼ヘビー級 5分3R
アレキサンダー・ヴォルコフ(ロシア)33勝9敗
マルチン・ティブラ(ポーランド)22勝6敗
▼ウェルター級 5分3R
リー・ジンリャン(中国)18勝6敗
カムザット・チマエフ(スウェーデン)9勝0敗
▼ライトヘビー級 5分3R
マゴメド・アンカラエフ(ロシア)15勝1敗
ヴォルカン・オーズデミア(スイス)17勝5敗
◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール
『UFC‐究極格闘技‐ UFC267 in アブダビ ライトヘビー級ブラホヴィッチ防衛戦&バンタム級暫定王座決定戦』
10月30日(土)深夜3:00頃[WOWOWオンデマンド]※先行ライブ配信
10月31日(日)午前11:00[WOWOWプライム]※終了時間変更の場合あり
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
11月6日(土)午前10:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【出演】
解説:高阪 剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
■10/30(土)深夜の先行ライブ配信前後に出演陣のYouTube配信!
『スタジオ裏トークUFC267』
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