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2021年10月30日(土)深夜、アラブ首長国連邦・アブダビのUFCファイト・アイランド エティハド・アリーナで『UFC267』が開催される。
メインイベントは、王者ヤン・ブラホヴィッチ(ポーランド)が、同じく5連勝中のグローヴァー・テイシェイラ(ブラジル)を迎え撃つUFC世界ライトヘビー級タイトルマッチ。さらにピョートル・ヤン(ロシア)vs.コーリー・サンドヘイゲン(米国)のUFC世界バンタム級暫定王座決定戦も組まれている。
この2試合の見どころをWOWOW「UFC-究極格闘技-」解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛氏に語ってもらった。
ライトヘビー級の削り合い、後半が勝敗を分ける
――『UFC267』のメインは、ライトヘビー級王者ブラホヴィッチが2度目の防衛戦でテイシェイラと対戦します。この一戦どう見ていますか?
「どちらかと言うとブラホヴィッチはストライカーで、テイシェイラはグラップラーなので、一見、対照的に見えますけど、強さの質の部分でじつは似ていると思うんですよ。言ってみれば、二人ともめちゃくちゃ洗練されたMMAをやるタイプじゃない。もちろん高い技術は持っているけど、例えばブラホヴィッチの打撃は、ドミニク・レイエスのような洗練された打撃スタイルではなく、圧力で相手を下がらせて、ガードが開いたところに強打を叩き込んで、フィジカルで圧倒するような打撃なんです」
――前回のイズラエル・アデサニヤ戦でも、前に出る圧力で主導権を握らせませんでした。
「そしてテイシェイラも寝技のきめ細かさというより、トップキープから相手をドミネート(支配)する技術で、相手を削っていくタイプ。だから付け入る隙がないわけじゃないけど、自分の強みや勝ち方をよく知っていて、フィジカルも強いので、多少相手の打撃はもらいながらも自分のスタイルをやり通す強さがある。そんなゴツゴツとした、MMAがノー・ホールズ・バード(NHB=なんでもあり)と呼ばれていた頃を思い起こさせるような、そういう戦い方でここまでのし上がってきた選手なので、自分個人的にはすごく共感できる二人ですね」
――言わば現代MMAでは珍しい豪傑同士の戦いのような。
「そうですね。それでいて、二人ともベテランじゃないですか」
――ブラホヴィッチはキャリア14年の38歳、テイシェイラはキャリア19年の42歳と、両者ともに遅咲きです。
「だから長い月日を経て、自分の強みを最も発揮できるスタイルや試合の作り方を見つけた二人なので、すごく濃密な戦いが期待できると思いますね」
──勝負のポイントは、どの辺になりそうですか?
「テイシェイラは、低い構えで相手の懐に突っ込んでいきたいタイプ。もちろん寝技の強さには定評があるので、まずはテイクダウンが取れるかどうかでしょう。ただ、ブラホヴィッチはたいがいタックルを切るんですよね。フィジカルが異常に強いから、タックルを受け止めたり、ケージ際でしのいだりすることができる。だから、このテイクダウンの攻防が、1個のカギになると思います」
――ブラホヴィッチは寝技師相手だと、これまでホナウド・ジャカレイやルーク・ロックホールドにもテイクダウンを許しませんでした。
「そうでしたね。ただ、テイシェイラは身体のコントロールがすごくうまいので、タックルを切られ潰された状態からでも体をずらして足を取りにいって、そこからドライブして、もう一度テイクダウンを取りにいく動きも得意なので。もしブラホヴィッチが、前に突進してくる動きには強くても、ちょっと横にずらされた時の対応が遅れるようなことがあれば、テイクダウンが奪えるかもしれない。これまで、みんな正面でタックルに入って、正面で切られているので、ブラホヴィッチが体勢をズラされた動きっていうのを、まだ見られてないんですよ」
――そこが未知数であり、突破口になるかもしれないわけですね。
「その時、ブラホヴィッチがどう対応するのか。そこがカギになってくるんじゃないかと思いますね。ブラホヴィッチの必勝パターンは、プレッシャーをかけて下がらせた後、突進して強打を当てて、タックルに来たら潰して、上からパウンドやヒジを落とす。そうやって相手を削っていきますけど、テイシェイラは組みの攻防で粘ることで相手のスタミナを削ることができるので、後半のラウンドでどうなるかが勝敗を分ける気がしますね」