フライ級が盛り上がっているので、キング・オブ・パンクラシストとして他団体に乗り込めたら
一方、トーナメントで猿飛流に敗れながらも王座挑戦の機会を得た上田は、「このお話をいただいた時、正直言って猿飛流選手にも小川選手にも申し訳ないという気持ちがありました」と逡巡があったことを認めながらも、「でも、PANCRASEさんから『上田選手が諦めない限りチャンスは来るんです』と言っていただいて。僕は、ずっとこのPANCRASEで戦い続けて来ました。だからこそ来たチャンスだと思いますし、ここに全てをぶつけて、もし勝つことができれば、戦う相手はもう決まっている。なので今は、小川選手とのこの一戦だけに集中して、全力で獲りに行きたいと思っています」と、迷いを振りきってベルト獲りに集中していることを語った。
これまでの両者の戦績は上田が2勝。初戦は、2017年8月に上田がスプリット判定で勝利。2戦目は2018年12月に上田が歴史に残る右ハイキックで2R KO勝利と連勝している。
これまでの2戦と比べての進化について王者は、「負けたのは4年前と3年前という結構前の話です。そこから僕はMMA自体の捉え方を改めて勉強して、3年前とは捉え方も考え方も違います。3年前の僕はずっと打撃にこだわった試合をしていました。いまはMMAをやるようにして、その中で打撃だったり、寝技だったり組み技だったり、を採り入れてやっているので、そこが以前と一番変わったところです。過去には2回、上田選手に負けていますけど、それに対して怖さもありません。僕としては“3戦目”という感覚ではなくて、今、自分ができることがあるので、それを貫けば絶対勝てると思っています」と、過去2戦の勝敗は影響しないとした。
対する上田も「1回目も2回目もしんどくて、ギリギリの戦いでした。今回は3回目になるんですけど、初めて戦う相手だと思ってしっかり準備して臨みたいと思います」と、2勝しているアドバンテージは考えないと答え、勝負のポイントを「打投極全てが要です。1回目も2回目も、どちらかというと組みにこだわっていたところがあるので、今回はしっかり打撃の面でも強化している部分がありますので、そちらも見ていただければ」と、小川同様にトータルで強さを増していると語った。
王座戦は、5分5Rのタフな戦いだ。
上田は「5R戦う覚悟でやります。ただ、その中でチャンスを掴めれば、しっかりそこで一本やKOを狙って行きたい。5Rになれば、ドロドロの展開になる可能性もあります。でも、そうなったらなった時で、しっかり盛り上がる試合をしたいと思います。そして、出来れば完全決着で勝負を決めたいと思います」とフルラウンドの死闘も視野に「完全決着」を望む。
迎え撃つ小川は、「全局面で勝てるようにして行きたい。初めてのメインイベントで、終わった後にお客さんや関係者の方に『この大会良かったね』と思ってもらえるような、判定でもKO決着でもしっかりと締まるような試合をしたいです」と、王者としてメインを締める完勝劇を描く。
勝者はケージの中でベルトを巻くことになる。
2019年7月に翔兵にTKO負けでベルトに手が届かなかった上田は、「今回2度目のタイトルマッチで、やっぱり僕はずっとやってきて、ずっとここで戦って来ることができたから今の自分があるという気持ちです。その集大成でチャンピオンになりたい。そして、今、同じ階級、フライ級はどこも盛り上がっているので、できるかは分からないですけど、キング・オブ・パンクラシストとして他団体に乗り込めたら、という気持ちもありますし、PANCRASEでも他団体の選手と戦ってみたい。やっぱりPANCRASEの選手が他団体で負けるのはすごく悔しいですし、勝てばすごく嬉しい。ですから、もしキング・オブ・パンクラシストになれば、同じ階級で無敵のキング・オブ・パンクラシストになりたい」と、最強のPANCRASE王者としてフライ級の頂点に立ちたい、と展望を語る。
アマチュアPANCRASEからネオブラッド・トーナメント優勝、フライ級トーナメントと、プロの試合のほとんどをPANCRASEで戦ってきた暫定王者も、PANCRASEへの想いが強い。
小川は「僕はアマチュア時代からTTF、Road to ONEを除いてPANCRASEでしか試合をしたことがありません。正直言って、今ランキングに入っている選手ではやりたいなっていう相手がいないので、他団体の強い選手とやってみたいと思っています」と、PANCRASE王者として、外に打って出る構えであることを語った。
タレントが揃い、名勝負が続くなか、バンタムから下げる選手も現れ、ますます激化するフライ級戦線。PANCRASEのベルトを初めてケージの中で腰に巻くのは、小川徹か上田将竜か。