柔術
インタビュー

【柔術】箕輪ひろば「自分が強くなるために柔術の大会に出場しているので、王者になったから出ないという選択はなかった」=箕輪×中井祐樹

2021/08/19 13:08
 修斗世界ストロー級王者で、現在ONE Championshipで活躍中の箕輪ひろば(21・総合格闘技道場STF)が、2021年7月22日のJBJJF東日本選手権にアダルト紫帯のライトフェザー級に出場。準優勝となった。  ジュニア修斗、アマチュア修斗、プロ修斗を経験し世界チャンピオンになった箕輪は、柔術もジュブナイル(16歳~17歳)から始めている。所属する総合格闘技道場STFの阿部直之代表から「満遍なくやるように」と言われてきた箕輪は、今後も柔術大会に出場していくという。  2021年3月の『ONE:FISTS OF FURY 3』では、柔術黒帯で元ONEストロー級世界王者のアレックス・シウバ(ブラジル)と対戦し、パスを狙うシウバにそれを許さず、最後は判定で競り勝っている。  柔術と総合格闘技の日本の先駆者である中井祐樹JBJJF会長との今回の対談では、箕輪が所属するSTFの成り立ちから、柔術への挑戦、今後のジュニア修斗の展開まで、修斗王者同士が語り合った(記事・写真提供=柔術ナビ) 柔術は柔術で結果を残して帯を上がりたい(箕輪) ──JBJJF第8回東日本柔術選手権で先程、試合を終えたばかりの、修斗世界ストロー級(-52.2kg)王者の輪ひろば(総合格闘技道場STF)選手にお話をうかがいます。 箕輪 はい、よろしくお願いします。 ──そして、箕輪選手たっての希望で、元プロ修斗ウェルター級王者・パラエストラ代表の中井祐樹JBJJF会長をお迎えしての対談となります。司会は、JIU-JITSU NAVI編集長の新明佑介です。宜しくお願いします。 中井 よろしくお願いします。 ──箕輪選手は現在、ONE Championshipにも参戦中ですが、柔術大会に出場したきっかけは何だったのでしょうか。 箕輪 以前からコンスタントに柔術の試合は出ていました。「修斗杯柔術選手権2019」などにも出場しましたし、タイミングが合えば柔術の試合に出場したいと思っています。MMAをやる上で柔術は、すごい大切だなっていうのが自分の中であるんで、今回タイミングあったので出場させていただきました。 中井 これまでもたびたびMMA選手は柔術の試合に出てますね。今大会でも、アダルト茶帯で上久保周哉(頂柔術)選手も出ていましたし。 ──箕輪選手は現在紫帯ですが、青帯の時は何大会ぐらい出ていたのでしょうか? 箕輪 3大会ですね。青帯時代は、基本的には全部勝っています。 中井 MMA選手がコンスタントに出場している例はあまりありませんね。定期的に出場するという意識の人はそんなに多くないような気がします。連盟としては、うまく柔術の試合を利用してもらえれば良いんじゃないかと思います。喜ばしいことです。 ──修斗のチャンピオンになってからは、柔術の試合は本日が初ですか? 箕輪 そうですね。前回は修斗杯だったので、チャンピオンとしては初ですね。 中井 そういうのになるともっと過去にいないんじゃないかな。 ──たしか、ジュニア、アマチュア、プロ修斗を経験し世界チャンピオンになったのは箕輪ひろば選手が初ですよね。世界チャンピオンだと、アマチュアの柔術大会には出辛いようにも思います。 箕輪 僕それが嫌だったんですよ。自分が強くなるために柔術の大会に出場しているので、チャンピオンになったから出ないという選択はなかったです。 中井 海外では、たしかベンソン・ヘンダーソンがUFCチャンピオンの時に青帯で出場して3位だったというのがあったね。UFC世界王者がまだ色帯でしかも優勝ではない、ということがありました。箕輪選手が出場していてそういうことも思い出しました。日本にもそういう選手が出てくるんだという。 ──道衣やルールも異なる別競技ですが、箕輪選手のMMAのなかに活きていると。今日は残念ながらライトフェザー級決勝で負けてしまいました。 中井 優勝した岡泉海(パラエストラ古河)はまだ10代なんです。高校出たぐらいです。 ──箕輪選手はおいくつですか。 箕輪 僕は今22歳です。ジュブナイル(16歳~17歳)からやっています。 中井 箕輪選手が決勝で対戦した岡泉選手は、茨城県のパラエストラ古河で少年部からやっているので期するものがあったと思います。相手(箕輪選手)が名が知られている選手との決勝で勝利ですし。古河という土地柄かホープなんですが、意外と取り上げられていないんですよね。注目してほしいという気持ちはなくはないですが、僕はあんまり声高に岡泉海の名前を出したことはなかったんですよね。自分の実力で上がった人が世に出るだけの話なんです。 箕輪 相当強かったですね。久々じゃないですかね。ちゃんと負けたっていうのは。ポイントで14対0で完封されました。 ──箕輪選手は1回戦・2回戦は絞めでの一本勝ちでしたね。 箕輪 はい。たぶん岡泉選手はその2試合で僕のことを研究していたと思うんですよね。テイクダウンが取れなかったですね。うまかったです。 ──STFのジムの先生も、箕輪選手に柔術の試合に出ることを推しているのでしょうか。 箕輪 はい。僕の師匠の総合格闘技道場STF代表の阿部直之先生からは、基本的に昔から「満遍なくやるように」と言われています。 中井 STFは修斗&柔術という感じの道場ですよね。昔からしかも早い段階で。STFってめっちゃ古いんですよ。パラエストラ和泉の吉岡広明代表はパラエストラ東京入りする前の所属はSTFなんです。STFはパラエストラ東京より歴史がある。その当時はまだ常設じゃなくてサークルみたいな形だったと思うのですが、僕も『格闘技通信』や『ゴング格闘技』の仲間を募集してる記事を見つけて、修斗のオフィシャルチームになりませんか? と連絡してそこから視界に入ってるんです。 ──STFと修斗との関わりは中井さんがきっかけなんですね。 中井 そういう全国で「仲間募集して練習してます、一緒にやりましょう」みたいなのが、「文通しましょう」じゃないんですけど、各雑誌に載ってる時代だったんです。 [nextpage] 「パラエストラフレンドシップサークルネットワーク」で総合の仲間を増やし、柔術でも転用した(中井) ──インターネット以前の時代ですね。 中井 その人達に「修斗のオフィシャルチームになりませんか」みたいな話をしていって、そうすると全国的にどのくらいの人が総合格闘技をやっているのか、マップが出来るんです。総合格闘技道場STFは、そういうのを始めようとしたきっかけとなった団体の一つなんです。埼玉県富士見市なんだ、とか。そういうのを一つひとつ調べていって、修斗のオフィシャルチームの案内を送ったんです。その初年度はほとんど無料にして。それを後に柔術連盟(現JBJJF)に転用したんですよ。 ──そういう成り立ちだったんですね。 中井 いわゆる格闘技道場の全国マップを作ったのも私なんですよ。修斗オフィシャルジムみたいなものの礎を。全国で総合やっている仲間がこの県には何件あって、ということが分かるようになるから良いだろうと思い、作りました。「一網打尽」と言ったら非常にいやらしいけど、これで全国で地方にある総合格闘技のジムは修斗だってことになったんですよ。 ──いまのように総合格闘技の団体も多くなかった頃ですね。 中井 今となっては修斗じゃないプロモーションもあるわけで。ほとんど総合格闘技がない時代にオフィシャルジムだけの力じゃ無理ってどこかで判断したんです。だから当時、全国でやってる人たちを「修斗になりませんか?」って(声をかけた)。そういうことで、みんな「修斗をやってる人」にしてしまうと、まあずるいですよね(笑)。僕はやっぱりそういう考えがあるんですよ。素人からやってるから、そうやって、素人で入ってやってきた方々が地域にもいるので、全国の人たちにオフィシャルと言ってあげたいっていう。それを基本的に後の柔術にも応用して、全部連盟に渡したということですね。「パラエストラフレンドシップサークルネットワーク」という名前でした。そうやって、パラエストラの仲間ですってしたのが始まりですね。 箕輪 めちゃくちゃ貴重なお話を聞いていますね。 中井 それで格闘技を始めた人が、キッズの時代から初めて修斗のチャンピオンになっているんですね。箕輪選手のように。箕輪選手は何歳から格闘技をやっているんですか? 箕輪 僕は12歳からですね。 ──阿部先生の年代は……。 箕輪 52歳ですね。 中井 僕より一つ上なんだ。 箕輪 僕は阿部代表から全部教わっているんですけど、代表曰く「総合に必要なのは“グラップリング”じゃない。“柔術”なんだ」と言うんですよ。総合の世界は、1回レスリング&ボクシングの時代があったと思うんですが、それが今ちょうどひっくり返って柔術が注目されてるじゃないですか。代表はさすがだなって思います。 ──どちらかと言うと打撃よりも柔術の方が好きな感じですか? 箕輪 まあ、万遍なくいろいろやってきて、特にどれが苦手とかはないですけど……僕は、テイクダウンして寝技で一本を極めるのがかっこいいなとは思っています。 中井 修斗チャンピオンであり、今はONEにレギュラー参戦して、2戦2勝ですよね。それでONEの元ストロー級世界チャンピオンのアレックス・シウバ選手に勝っていますからね。シウバは黒帯柔術家ですよ。 箕輪 世界選手権(※CBJJOコパドムンド王者)も優勝していますよね。 ──アレックス選手は、内藤のび太選手とも激闘を繰り広げていましたね。ONEも一時期、コロナ禍で止まっていましたが動き出しました。箕輪選手はONEで世界チャンピオンを目指すことになりますね。 箕輪 そうですね。より本格的に動き出すと思います。 中井 黒帯のシウバ選手に勝っている箕輪選手が紫帯なのかよっていうのもの面白いですね。 箕輪 「黒帯に勝ったから黒帯あげよう」っていうのは、黒帯を巻いてる人に失礼だろうって。柔術は柔術で結果残して帯上がりたいです。 ──リスペクトがありますね。ONEでの次戦はいつ頃を考えていますか。 箕輪 年内にもう1試合やりたいんですけど。体調面もあって試合ができない期間があったり、そのうちに世間がコロナ禍になったりっていうがあったんで、年内にもう1試合できれば。 ──ではもう1度、柔術に出るチャンスもあるかもしれない。 箕輪 そうですね。本当にタイミングが合えば出たいですね。今日みたいに中井選手ともお話させてもらえましたし。僕らの世代じゃなくて、僕らを教えてくれている世代が「中井先生! 中井先生!」って、みんなそう言われているので、僕も存じ上げていたんです。そんな中井先生にSNSで(試合結果などを)拡散していただけるって、もう嬉しいとかじゃないんです。恐れ多いなって。もしタイミングがあれば、お話しさせて頂きたいなと思っていました。 中井 組んだことも直接話したこともなかったですし、そういう選手が修斗のチャンピオンとして出てくるというのが、良いですね。 ──そして柔術会場で会って話せると。 中井 今の選手達には、試合に出ている時点で全リスペクトなんです。修斗のチャンピオンであり、ONEのタイトル戦線に絡んでいくであろう箕輪選手の活躍を、僕のSNSには今のMMAを見ていない人もいるので、こういう選手がいるんだということを紹介したいと思っています。まだみんなを紹介しきれてはいないですけど。 箕輪 自分のことを中井さんに知ってもらえていると思いませんでした。嬉しいです。恐れ多いですけど、やっぱり中井先生に会って、紹介してもらえたら若手選手も嬉しいと思います。発信して頂いたりして、何かの間違いじゃないかと思いました。 中井 何よりも見てもらえるのが良くて。幸いいまはYouTubeで手軽に見れるということがあるので、知ってもらえるという環境ですよね。 ──柔術の練習はどれくらいの頻度で行っていますか? 箕輪 週2回ですね。打撃にレスリングに、と日々やっています。 ──トライフォース赤坂にも練習に来られていますよね。 箕輪 はい。今も朝行かせてもらっています。 ──STFではキッズの指導もやっておられる。 箕輪 はい。やっています。今度、僕が主催で「JSCC」というジュニア修斗のベルトを作って大会(※8月15日開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の状況により延期)をやります。キッズ達の何かのきっかけになれば良いなあと思っています。子供の頃からやっているとやはりめちゃくちゃ強いんですよね。今日、柔術やっていてもそれを決勝の岡泉選手から感じました。 ──今後もぜひ柔術に定期参戦してもらって、MMAではONEのチャンピオンを目指していただき、みんなで応援したいと思います。 中井 これからも注目しています。 箕輪 ありがとうございます! よろしくお願いします。
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