アジアが大好きだ。日本にも良い戦いの文化があるから行ってみたい。東京五輪で得たことは──
──ところで同時期に開催されているオリンピックは見ていますか。
「移動や準備があったから見ていないけど、ニュースやインスタグラムでは見ているよ。僕の友人であり、スパーリングパートナーでもあるムラ・アリエブが東京オリンピックでボクシングで出場しているからね。残念ながら彼は試合に負けてしまったんだけど(※スーパーヘビー級準々決勝で英国のフレーザー・クラークと対戦し「意図的なバッティング」で失格に。アリエブは試合後、リングエプロンに座って抗議した)、あれは本当にクレイジーだよね。彼は失格になったけど、ただ事じゃなかった。レフェリーはバッティングだと言ったけど、僕にはそう見えなかった。悪いレフェリングだった。これが今回のオリンピックで得た最大の収穫さ。良くない方のね(苦笑)」
──アマチュアムエタイの国際連盟であるIFMAがIOCの承認団体として認められ、正式種目化はまだですが、ムエタイはオリンピックへの進出が承認されました。そのことについてどう感じていますか。
「僕はムエタイ出身だから、それは本当に良いニュースだよ。僕がムエタイを始めた頃は、たぶん5カ月後くらいでコーチにリングに上げてもらって、試合に挑戦するたびに上手くなっていった。今後、ムエタイが僕の国のファイターたちにとって、より多くの人の目に触れ、機会を得ることができ、もしかしたら2024年のパリ五輪で、僕の国でスターになるチャンスがあるかもしれないし、それによってより多くのお金を得ることができるかもしれない。僕は、MMAがこれに追随し、MMAがオリンピック競技として承認されることを願っているよ」
──コロナウイルスが一段落すれば、旅行が始まり、UFCのイベントがアジアに戻ってきます。あなたはすでにUFCシンガポールとUFC釜山で試合をしていますが、他に戦ってみたい国はありますか。
「もちろん、アジアは大好きだよ。3~4カ月月の間、車で旅行に行ったことがあるんだ。たくさんの国を訪れたよ。タイはもちろんのこと、ラオス、カンボジア、インドネシア……。特にタイは大好きだから、そこで戦いたいと思っているんだ。中国には行ったことがないので、ぜひ行ってみたいね。そして、日本にも良い戦いの文化があるから行ってみたいよ」
──今回の試合に勝てば、次はUFCヘビー級チャンピオンのフランシス・ガヌー選手との王座統一戦が待っています。そのことについてはどう考えていますか。
「特に何も言うことはない。僕にとって、これはスポーツであり、彼はただの対戦相手だ。土曜日に勝てば、いい気持ちでタイトル戦に臨めると思う」
──フェルナンド・ロペス(※元カメルーンのMMAファイターで修斗ベルギー大会にも出場。かつてフランシス・ガヌーも指導)コーチにも質問を。シリルがフランシスと対戦する可能性について、どのように考えていますか。
フェルナンド もし、シリルがこの試合に勝てば、王座統一戦が行われるでしょう。ビッグマッチになるので、彼はフレッシュで集中しなければなりません。フランスの人々にとって、とても良いことだと思います。何があっても、この2人は同じジム、MMAファクトリーで同じコーチのもとに生まれたのですから。フランスはMMAが禁止されていた小さな国ですが、チャンピオンと暫定チャンピオンという、2人のヘビー級選手を育てました。それはアメージングなことです。ただ、私たちが目指すのは、尊敬と誇りだけで、他には何もありません。
──シリル選手は、まだMMAファクトリーにいたときのフランシス選手とトレーニングが重なっていた時期はあったのでしょうか。
「あまりないんだ。たしかに僕たちは同じジムで生まれた。僕がMMAを始めたばかりの頃、彼に会ったのは2回だけだった。だから親しくはないんだ。僕たちは同じコーチを持っているから、もし実現すれば、これは僕のコーチにとってはとても誇らしいことだ。多くの人がこの試合を待ち望んでいると思う。もしかしたら、この試合がパリで行われ、大きな成功を収めるかもしれない。
でも、それまでは今回の試合に集中している。どうやって(ルイスを)倒すか? いい質問だね。正確には分からないけど、“ボン・ギャマン”(ガーヌのニックネームで英語で「良い子」を意味する)スタイルで行くだけだ。僕の取り柄はグッドガイであること。“良い子である”ということは集団のなかでのことを指すのではなく、マインドセットのことなんだ。いつまでの子供のようにフレッシュなマインドを持ち続けること。やりたいことを、奢らずにやる。いろいろなことに対して、いいモチベーションで取り組む。それがボン・ギャマン、なんだ」