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2021年8月7日(日本時間8日)、米国テキサス州ヒューストンのトヨタセンターにて「UFC265」が開催される。
メインイベントでは、ヘビー級2位のデリック・ルイス(米国)と、3位のシリル・ガーヌ(フランス)が暫定王座を争う。
今大会に準備が間に合わなかったという正規王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)とは、ガヌーのフランス時代に同じコーチのもとで練習を行った。もし、ガーヌが今回のルイスとの戦いで勝利し、暫定王座を獲得すれば、地元フランスで、元同門同士の「王座統一戦」の可能性も出てくる。
2020年まで15年間プロとしてのMMAが禁止されていたフランスで、MMAファイターとして成長した2人が交わるときは来るのか?
シリル・ガーヌは、フランス西部のラ・ロッシュ=シュル=ヨンで、グアドループ(カリブ海の西インド諸島)をルーツに持つ家庭に生まれた。
10代の頃はサッカーとバスケットボールで活躍。その後、高級家具の販売員として働くためにパリへ移住し、友人の紹介でムエタイを始めた。
2016年6月にプロムエタイデビュー。AFMTの91kg級王座を獲得すると、K-1参戦経験を持つブリース・ギドンに3RTKO勝ち(※ギドンは、2009年8月「K-1 WORLD GP 2009 IN TOKYO」でリコ・ヴァーホーベンに判定勝ちしている強豪)、WBCムエタイ世界スーパーヘビー級王者のヤシネ・ブガネムにも判定勝ちを収めるなど、プロ13戦全勝(9KO)の戦績を残している。
2018年8月にカナダ・モントリオールのTKOでプロMMAデビュー。フランス系カナダ人の多い同地で、ボビー・サリバンを相手にノーアームギロチンチョークで1R 一本勝ち。いきなりTKOヘビー級王座獲得に成功した。その後、2度防衛しUFCと契約。
2019年8月、UFC初参戦でハファエル・ペソアを肩固めに極めると、ドンテイル・メイエスにもヒールフックで一本勝ち。続けてタナー・ボーザーを判定で退けると、2020年12月に当時ヘビー級ランキング7位のジュニオール・ドス・サントスも右ヒジで2R TKO。
2021年2月には、4位のジャルジーニョ・ホーゼンストライクとメインの5Rで戦い、リーチを活かしたジャブと多彩な蹴りで完封。6月には5位のアレキサンダー・ヴォルコフをスタンドの攻防で終始圧倒して判定勝ちを収めるなど、UFC参戦後も6連勝と、MMA連勝・無敗記録を「9」に伸ばしている。
ニックネームは“Bon Gamin(ボン・ギャマン)”。その意味と大一番に向けた心境を聞いた。
僕はデリックに触れるけど、彼には決して触れさせない
──トヨタセンターでのメインイベントに向け、体調はいかがですか。
「最高だよ。少しだけ時差ぼけがあるけど、それはいつものことで、僕のミッションは、夜寝る時間になる前に寝ないこと。太陽に従うこと。これが個人的なルールさ」
──あなたはいつも「これが仕事だ」と言っていますが、UFCヘビー級の暫定王座を得ることは、あなたにとってどんな意味がありますか。
「そうだね……、暫定王座戦は大きなことだけど、最終的なものではない。ただ僕は、自分の試合と勝利、そしてどうすれば勝てるかということに本当に集中しているよ」
──ホーゼンストライク戦、ヴォルコフ戦と、立て続けに5Rを経験した感想を聞かせてください。
「初めての経験だったけど、ほんとうに快適だったよ。以前から、5Rであればもっと快適に過ごせるだろうと思っていたからね」
──ヘビー級の体躯で、5Rをこなすためのカーディオやパワーをどのように維持しているのでしょうか。
「僕はアスリートになるために生まれてきたのだと思う。まず、僕は良い遺伝を持っている。ちょっと不思議な話だけど、どの競技でも自信があったんだ。10代の頃はサッカーやバスケットボールで活躍した。さまざまなスポーツを練習してきたことで、あらゆる部分で身体能力が向上したんだ。
コンディションだけでなく、ファイトIQ──つまり試合中にいかにエネルギーをコントロールできるかが重要だと思っている。これはとても重要なことなんだ。コンディションが良くても、1R目ですべてを使ってしまう選手もいるからね。その管理が僕の“秘密”さ(笑)。もちろん、コンディショニング・コーチであるライアン・ジレットが新しいメソッドを持っていて、いかにして身体を守るか、マインドセットや神経系、試合中に起こるすべてのことを対象にコンディショニングを行ってくれている」
──対戦相手のデリック・ルイス選手は、KOに特化したストライカーですが、テイクダウンの防御力もあることを示しています。対戦相手としての彼をどうとらえていますか。
「この選手は本当にタフで、グラウンドで押さえ込むのは簡単じゃない。でも可能ではある。最初のうちはそれは僕のゲームプランじゃないね。もし試合がグラウンドになったら、もちろん仕留めようと思う。でも、一番危険なのは彼のレスリングのディフェンスじゃないから。
ホーゼンストライクとの試合と少し似ている。(ルイスは)大きなKOパワーを持っていて、そういう相手に触られるとダウンしてしまう。ディフェンスの技術的なトレーニングを行ってきたけど、ホーゼンストライク戦でもやったことをすべてうまくやって、動いて距離をコントロールするつもりさ。これは魔法じゃないからね」
──本当の意味での死闘になるでしょうか。それとも我慢強い自分のままで、得意なムエタイのスナイパーになるつもりでしょうか。
「その通り、いい画が描けている。僕は彼に触れるつもりだけど、彼には決して触れさせない。それが僕の目標さ。もしかしたらラウンドを重ねるごとに、最後にはフィニッシュを決められるかもしれないね」
──KO決着のプレッシャーはありませんか。
「このスポーツを始めてまだ3年だけど、僕にとってはそれが普通だ。数年前に始めたばかりだからなのか、プレッシャーは無いし、ファンのためにショーをしたいと思っている。
でも、僕のスタイルは僕のスタイルさ。例えば、(フロイド)メイウェザーのような選手は、KOを取るようなタイプじゃなく、テクニシャンのファイターだ。人々が(KOを)求めているのは分かるけど、僕はプロ9戦中、サブミッションが3回、TKOが3回、判定が3回ある。つまり、僕にはすべてが可能なんだ」