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インタビュー

【RIZIN】朝倉未来が失神、ムサエフがタップ──東京ドームを震撼させたサトシとクレベルの「三角絞め」とは何か

2021/06/14 19:06
【RIZIN】朝倉未来が失神、ムサエフがタップ──東京ドームを震撼させたサトシとクレベルの「三角絞め」とは何か

【写真】マルキーニョスを中心にチャンピオンベルトを巻く弟のサトシ、弟分のクレベル

 2021年6月13日(日)東京ドームで「Yogibo presents RIZIN.28」が開催された。

 第8試合の「RIZINライト級(71.0kg)タイトルマッチ」では、ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)が、2019年『RIZINライト級トーナメント』優勝者のトフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)と対戦し、1R1分12秒、三角絞めで一本勝ち。初代王者に輝いた。

 また、メインイベントでは、クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が朝倉未来(トライフォース赤坂)を2R1分51秒、三角絞めで失神させ、一本勝ちしている。

 地上波放送もあった東京ドーム大会で「カーフキック」に続いて、一躍注目された「三角絞め」とはどんな技なのか。

 試合後、ベルトを腰に巻いて会見場に登場したサトシは、「お父さんが得意だった三角絞めで勝てて、一番良かった」と涙を流した。

 ボンサイ柔術所属のサトシのMMAでの三角絞めでの一本勝ちは3試合目。2021年3月の徳留一樹戦に続いて連続の「サンカク」での一本勝ちだった。

 ひとくちに「三角絞め」と言っても、そのセットアップは様々だ。パウンド・ヒジ打ち有りの現代MMAでは、基本的に下になることはタブーとされる。自ら引き込んで三角絞めに入るためには、いかに上にいる相手の打撃を受けず、良い形で三角の形を作るかが重要だ。

 その点でサトシは、この2戦で異なる形でフィニッシュに繋げている。

 前戦では「QUINTET」でも極めの強さを見せていた徳留が得意とするハーフガードに対し、下から煽って極めたもの。

 MMAの中で「何年も三角で一本を取られていない」と防御に自信を持っていた徳留をして「普通の三角の入りじゃない」というサトシのそれは、最初は引き込んだ腕の逆側から組んで、足を組み直して左側で極めている。タップを奪う際に引き寄せたのは自身の脛をつかんでのものだった。

 そして、今回のムサエフ戦で引き込んだサトシは、徳留戦とは逆側の右側で三角絞めを極めている。

 ガードの中で上体を立てたムサエフに、サトシは瞬時にムサエフの右手を左手で掴んで、前方に押し出すと同時にガードの足を大きく開いて、まずは「四角」に組んでいる。

 同時にムサエフの左手を手前に引き寄せると、左手でムサエフの右足を手繰り寄せながら四角を解いて、右手で自身の左足を引き寄せてムサエフの頭を下げさせると、右ヒザ裏で両足をロック、「三角」の形を作った。

 一連のスピードが速いサトシに対して、ムサエフはパウンドを打つ間もなく、引き込まれた腕と反対側の右手を三角の中に入れてわずかなスペースを作るのが精一杯。

 左ヒザを立てて防御するムサエフだが、サトシは掴んだムサエフの左腕を伸ばしていったん逆側に捩じってから、その腕を内側に流して頭を引き付けると、最後は、ムサエフの右肩上から両手でクラッチして引き寄せ、タップを奪った。

 徳留戦で見せた左の三角とムサエフ戦での右の三角。サトシは、「両方出来るけど、今日絞めた方が私の得意な方。反対もやってるけど、私が好きなのと得意なのは右側。絞めたから相手がすぐタップした。右側はよりプレッシャーがある」と、明かした。
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 サトシの父、ボンサイ柔術の創始者アジウソン・ソウザも得意としていた「三角絞め」の起源は諸説あるが、寝技中心の柔道「高専柔道」から生まれた技ともいわれる。

 岡山第六高等学校高専柔道の金光弥一兵衛(起倒流備中派柔術、講道館柔道九段)と早川勝(後に八段)らが稽古中に編み出したとされる松葉搦み(三角絞め)はブラジルにも伝播。渡伯し、エリオ・グレイシーと引き分けている金光の町道場出身の柔道家・小野安一が関係しているともいわれる。

 サトシが極めた三角絞めは「前三角絞め」だ。向かい合った相手の腕を前に引き出し三角に組んで頚動脈を絞める。ほかにも、仰向けになって絞める「横三角」、相手の背後から絞める「後三角」などがある。

 現在では、そこから派生した両腿を絞める「肩絞」やティーピーチョーク、「両脚の中に相手の両腕を入れると極まらない」という定説を覆す、ラバーガードからの変化技デッドオーチャードなど、多くの技が編み出されている。

 そんななか、サトシやクレベルは、ベーシックな三角絞めを、たしかな技術でMMAのなかで極めてみせた。

 クレベルは言う。

「もともと柔術は日本がルーツだ。それを僕は、日本で出稼ぎにきて、このボンサイ柔術で習い、プロファイターになった。ミクルを極めたサンカクも、相手の間違いを見逃さない。すごくベーシックな三角、腕十字、オモプラッタ……昔の柔術でエリオ・グレイシーが言ってるように『柔術はオフェンスだけじゃなくて、セルフディフェンス(護身)』、それが大事。そのためには毎日練習。『1日、1時間』じゃない。3、4時間かけてやる。それが、私やサトシの柔術で、すごくオートマチックで考えないで動ける」

 果たして、サトシとクレベルは、RIZINでこれからどんな柔術を見せるのか。注目だ。サトシとの一問一答全文は以下の通り。

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