2021年5月6日(日本時間7日)、米国ニュージャージー州アトランティックシティのオーシャン・カジノリゾートにて「PFL 2021 #03」が行われた。
シーズン3大会目はヘビー級と女子ライト級。
メインでは、PRIDEで活躍し、Strikeforceでエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)に腕ひしぎ三角固めで一本勝ち、UFCでヘビー級王座も獲得したファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)が登場。LFAからPFL入りを果たしたヒーナン・フェレイラ(ブラジル)と対戦した。
MMA6勝2敗のフェレイラに対し、2020年7月のUFCでのアレクサンダー・グスタフソン戦での一本勝ち以来の試合となるヴェウドゥム(24勝9敗1分)は、開始早々にテイクダウンを奪い、三角絞めを極めに行くも、上からパウンドを受けてTKO負け。
しかし、フェレイラが三角絞めにタップと紛らわしい動きをしたため、試合後に両陣営がビデオを見返すなど、一時、会場内が騒然となった。
また、女子ライト級では、ロンドン&リオ五輪柔道金メダリストで、2019年PFL女子ライト級トーナメント覇者のケイラ・ハリソン(米国)が出場。修斗ブラジルで3連勝中のマリアナ・モライス(ブラジル)を投げ&パウンドで圧倒。連勝無敗記録を「9」とし、試合後にはYouTuberボクサーをこきおろした。
▼ヘビー級 5分3R○ヒーナン・フェレイラ(ブラジル)[1R 2分32秒 TKO] ※パウンド×ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)
1R、ともに右の蹴りから、いきなりシングルレッグに入るヴェウドゥム。シングルレッグに大内刈を合わせてテイクダウン! 金網背に立とうとするフェレイラに左で差してハーフから背中を着けさせる。
フェレイラのブリッジに合わせてマウントを奪うヴェウドゥムだが、再度ブリッジから首投げでリバーサルするフェレイラ。そこにヒョードル戦でも見せた三角絞めからの十字も狙うヴェウドゥム!
頭を引き付け絞めると、フェレイラは一瞬タップのように背中を一度目は強めに、2度目は触るようにあてるが、ヴェウドゥムは力を弱めたか、動きが止まると、フェレイラはすぐに三角のなかから鉄槌を落としていく。
フェレイラの拳がヴェウドゥムの顔面をとらえ、フェレイラはかついで三角を外すと鉄槌連打! ヴェウドゥムは動けず片手を広げてアピールも、レフェリーが間に入った。
試合後、ビデオを見なおしながら、ヴェウドゥムは「彼はダブルタップしてる。だから動きを止めたんだ。タップしても殴り続けるのはフェアじゃない」と抗議した。
解説のケニー・フロリアンとランディ・クートゥーも「タップだ」と語るなか、公式記録はヴェウドゥムのTKO負けに。この結果に、SNSのタイムラインでも、ファイターたちが次々に「タップだ」と投稿するツイートが拡散された。
UFC世界ウェルター級2位のギルバート・バーンズ、UFC世界ミドル級9位のケルヴィン・ガステラムは「あれはタップだった」とツイート。
UFCファイターで10thプラネットでもトレーニングするアラン・ジョウバンは、「2回タップしたように見えた。これは“ブラジリアンタップ”と呼ばれている。通常の3回のタップではなく、相手を欺くためのタップだ。公平を期すために、ヴェウドゥムが絞めを緩めたようには見えなかった。しかし、最終的にはタップであることに変わりはない」と、フェレイラの動きを“ブラジリアンタップ”と表現。
元ONE&Bellator世界ウェルター級王者のベン・アスクレンは、「あれはクレイジーだった!!! ヴェウドゥムが三角絞めをして、あの男をパンチで逃がすなんてありえない!」と記すと、「フェレイラは小さなハーフタップをしたようだ。ヴェウドゥムは怒るだろうね」と、動画とともにコメントをアップしている。
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▼女子ライト級 5分3R○ケイラ・ハリソン(米国)[1R 1分23秒 TKO] ※パウンド×マリアナ・モライス(ブラジル)
1R、ともにサウスポー構えから。いきなり左ハイから入るハリソン。モライスの右フックにカウンターで組んで右で差して金網まで押し込む。
いったん払い腰を狙うハリソンだが、そこで戻して両脇を差していく。ダブルアンダーフックのまま右ヒザを突くと、背中ごしに手を組みボディロック。
右に引き出してから左に崩して、右ヒザをモライスの外にあててテイクダウン! すぐに足を越えてマウントを奪うとパウンド。モライスが背中をむけると左右のパウンドラッシュでレフェリーが間に入った。
1R決着で6ポイントを獲得したアメリカントップチームのハリソンは、コーナーマンのマイク・ブラウンとハグ。
試合後のインタビューで「いいこと? これはトーナメントなんかなじゃくって、戴冠式なの。そう、私こそが女王。私は偉そうにものを言う人間ではない、でも、そうね、まるでボクサーからマヌケなYouTuberまでみんなが軽々しく入ってこれるように見えているところがあるけれど、これからはね、この場所でも、どこであろうともこの私こそが最高位」と語った。
PFLはロンドン&リオ五輪女子ボクシング・ミドル級金メダリストで、現WBC及びWBO世界女子ライトミドル級(スーパーウェルター級=69.85kg)王者のクラレッサ・シールズと契約し、2021年中にMMAデビューし、2022年シーズンに参戦すると発表済み。果たして、ハリソンとの対戦の可能性もあるのか。
圧倒的な強さを見せたハリソンは、試合後の会見で「私の目標はGOAT(the greatest of all time)になること、いま、アマンダ(ヌネス=UFC世界女子フェザー&バンタム級王者)がGOAT。だからいつか彼女と対戦したいと思っている。とはいえ今はPFLのチャンピオンになることが目標」とも語っている。
“女王”は今シーズンも無敗の道を歩くか。
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▼ヘビー級 5分3R○ブランドン・セイルズ(米国)[2R 3分42秒 リアネイキドチョーク]×モハメド・ウスマン(ナイジェリア)
※カウンターの右フックでダウン奪い、リアネイキドチョークを極めた。
▼女子ライト級 5分3R○ラリッサ・パシェコ(ブラジル)[1R 0分51秒 TKO] ※パウンド×ユリア・パジッチ(モンテネグロ)
1R、ともにオーソドックス構え。打ち合いのなかでいきなり左フックでダウンを奪うパシェコ! そのままマウントになるとパウンコ、背中を見せるパジッチをパウンドアウトした。6Pを獲得。
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▼ヘビー級 5分3R○ブルーノ・カッペロザ(ブラジル)[1R 0分46秒 TKO]×アンテ・デリア(クロアチア)
2015年のRIZINでテオドラス・オークストリスに敗れているカッペロザ。しかし、その後3連勝で2018年にRIZINに再参戦。今度は現UFCのイリー・プロハースカにKO負け。今回が初のPFL参戦となる。
1R、ともにオーソドックス構え。ワンツー、左ハイで圧力をかけるデリア。カッペロザは、右オーバーハンドをテンプルにかすめて当てると、デリアの足が泳ぐ。カッペロザは金網に詰めて左右の高速ラッシュ! 打ち合いのなかでアゴを打ち抜かれたデリアの動きが止まり、立ったままレフェリーが間に入った。6Pを獲得。
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▼女子ライト級 5分3R○ケイトリン・ヤング(米国)[判定3-0] ※30-27×3×シンディ・ダンドワ(ベルギー)
ヤングは2018年のRIZINでRENAに判定勝ち。その後、Invicta含め3連勝もパム・ソレンソンに判定負け。2020年7月の前戦でラトヤ・ウォーカーに判定勝ちし再起。今回がPFL初参戦となる。
対するダンドワは、UFCで1敗し、RIZINでRENAにスプリット判定勝利。4連勝でBellatorに参戦もオルガ・ルビンに判定負け。「European Beatdown」でも判定負けで2連敗も、2019年3月からローカル大会で4連勝。ヤング同様にPFL初参戦となる。
試合は、ともにオーソドックス構えで、圧力をかけるダンドワにヤングが右回りでジャブを突き刺し、右ストレートをヒット。ダンドワのノーアームギロチンチョークを防ぎ、首投げを切り返して上になるなど、判定3-0で勝利した。
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▼女子ライト級 5分3R○ジャナ・ファビアン(ニュージーランド)[判定3-0] ※30-27×3×ローラ・サンチェス(米国)
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▼ヘビー級 5分3R○デニス・ゴルソフ(ロシア)[1R 4分21秒 TKO] ※パウンド×ジャスティン・ウィリス(米国)
1R、ともにオーソドックス構え。ジャブ、右ローと圧力をかけるゴルソフが右ハイ! さらに左ミドルを効かせ、続く右ジャブにウィリスは下を向いてしまう。崩してテイクダウンしたゴルソフがうつ伏せになるウィリスをパウンドアウトした。
▼女子ライト級 5分3R○テイラー・ゴールダード(米国)[判定3-0] ※29-27, 30-26×2×エレナ・コレスニク(ウクライナ)
▼ウェルター級 5分3R○マゴメド・ウマラトフ(ロシア)[2R 0分07秒 TKO] ※右オーバーハンド×カイロン・ボーウェン(米国)
1R、ともにオーソドックス構え。ボーウェンは右ハイ。さらに右フックも、それに合わせてダブルレッグテイクダウンはウマラトフ。引き込み気味に下になるボーウェンを削り、鉄槌。
2R、右を振ってきたボーウェンにウマラトフは頭を左に傾けての右オーバーハンド! ボーウェンが後方にダウンし、TKO勝ち。