MMA
レポート

【格闘DREAMERS】平本蓮を感動させた弟・丈の勝利と涙。無慈悲な「入れ替え戦」が見せた格闘技の厳しさ

2021/04/20 21:04

「真面目に練習してるっていうのが伝わってきた」(岡見)

 入れ替え戦は、3分3R。

 石田光洋がレフェリーを務めるなか、セコンドの兄・蓮とケージ中央に歩む丈は、フェザー級の蓮とほぼ同体格。名津井と向き合うとその身体の大きはは際立つ。

「リズム、絶対合わせたらアカンよ、集中」という宇佐美の声のなか、グローブを合わせた両者。

 1R、ともにオーソドックス構えから、開始早々に名津井の左ロー、右ハイキックをかわす平本は、レガースありながら、右のカーフキック1発で名津井のバランスを崩していく。「いいね、カーフ」と丈に声をかける蓮。

 名津井はダブルレッグに入るが、一回り大きな平本ががぶると上に。すぐに脇を差して立ち上がる名津井のバックにつくとリアネイキドチョークを狙うが、「足をかけろ」という蓮の指示通りには右足が入らない。

 首を守り立ち上がる名津井はバックから崩して平本に尻餅を着かせるが、丈はすぐに立ち上がり、右で脇差す名津井に首相撲からヒザを突き上げる。

 中腰の名津井をダースチョークの形に捕え、下からヒザを突く平本。スタンドで頭をがぶられた名津井は見えない相手に右の拳をボディに突き上げるが、これが股間に。

 うずくまる平本。苦しげな表情の弟に駆け寄る蓮は、「ゆっくり、ゆっくり」と焦らず回復するようにうながし、「強いぞ、強い。すっげぇ強い、いいよ、動き。めちゃくちゃいい。タックルも全部見えてる。深呼吸して」と励ましていく。丈も立ち上がり、1R 残り1分から試合再開。

 名津井の左ローと平本の右ローが交錯するなか、すぐに右の蹴りに繋げるのは名津井。平本の右を掻い潜り、左で差して組むと回して前方に崩すが、パワー差もあるなか、どうしても捨て身気味に。立ち上がる丈が上を取るなど、スクランブルの展開は平本がサイドを奪う。名津井は腰を切り足を戻してガードの中に入れてブザー。

 両者の奮闘に「動きいいよね」という高谷。「真面目に練習してるっていうのが伝わってきた」と岡見も称える。

 2R、サウスポー構えから入る平本は左ロー。さらに左の三日月蹴りに組んで行くのは名津井。しかし、がっちり平本に受け止められると尻を着いてシッティングガードに。「腹効いたな」という高谷総監督の言葉通り、動きが落ちた名津井の立ち上がり際をがぶる平本は、名津井の首を胸下に入れて右腕を抱え込んだダースの形から金網に押さえつけてチョークを狙う。

 首を獲られたまま背後のケージを蹴って逃げようとする名津井をそのまま豪快に後方に投げる丈。クラッチはそのままで、回って逃げようとする名津井の足に、蓮は「足をかけろ!」と指示。最後は相手の脇の横で腕を組むアナコンダチョークの形で首を捻じ曲げられた名津井が苦しい呼吸音を出したところで、石田レフェリーが見込み一本でストップした。

「ヨッシャアーッ!」と咆哮する平本。タップしていないという仕草の名津井に「しょうがない、今のは」とつぶやく岡見。2R 30秒、レフェリーストップでの勝利に丈は金網にひざまずくと思わず涙。

 完全アウェーのなか勝利した丈は、笑顔で迎える兄・連に肩を抱かれハグをすると、緊張感から解き放たれ、号泣した。

 そんな弟を強く抱きしめた蓮は、「ちょっと感動しちゃったっス。(戦う)舞台がないと思ってた時も、ジム行ってずっと頑張ってたんで。いやー、マジ嬉しいですね。自分の試合以外で喜んだの初めてかもしんない。こんな心から喜べるのマジで初めてです」と、弟の勝利を祝福した。

「このあと所属を勝ち取る自信はありますか?」と問われる丈に、「こいつは行くっスよ、もうこうきたら」と割って入る蓮。兄と拳を突き合わせた丈は、「DREAMERS」に乗り込んだ“外敵”から、兄弟愛で入れ替え戦の一発勝負をモノにし、「DREAMERS」の一員となった。

 一方、「DREAMERS」を去ることとなった名津井は、チームメイトに「すみません」と一言。「いや、お疲れ様でした」「気合入ってたっスよ、マジで」と声をかけられるなか、指導陣にも「すみません、自分の実力の無さで」と挨拶。

 岡見ヘッドコーチは「気持ちは良かった。タップはしてないし。まあ……負けは負けだから」と、評価とともに結果を出せなかったとし、高谷総監督は「何も出せないで負けちゃうことなんか余裕であるから……しょうがねぇよ。結果だから」と、格闘技の厳しさを伝え、脱落を告げるのであった。

 帰り支度をする名津井は、「やっちゃったなとしか言いようが無いっス」と言葉にしつつも、27歳での挑戦に「格闘技もたしかに好きでやってはいたけど、それにプラスα、このEXFIGHTというのが、めちゃくちゃデカいんで、自分がやる気が出たという部分もあった。続けるのは続けるけど、プロの道はもういかないと思う」と、勝ち上がることの厳しさを痛感。最後に「こんな所でか……」と悔しさをにじませながらジムを後にした。

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