ドラッグを売ったり、ギャングに入る以外の選択肢はなかった。今ここにいられるのは信じられないこと
──あなたはいつもジムでの明るく振る舞い、周囲を和ませていると聞きます。
「トレーニングはみんな真剣にやっているから、少し笑うことができる余裕が必要で、真面目になり過ぎないようにしている。自分はストイックだから、特に自分のことを大事にしてくれる同じような選手とトレーニングするのは楽だよ」
──格闘技の魅力は何だと思いますか。
「格闘技は一対一で、自分自身で流れをコントロールし、成功を掴むことが出来る。常に向上することが出来て、動きや状況判断をトレーニングし、パワーもスピードも改善出来る。 一対一の格闘技では成功、敗戦について自分にすべての責任がある。そして体格などに恵まれていなくても、トレーニング次第で才能豊かな選手を倒すことが出来る。つまり“才能”とは厳しいトレーニングが出来るかどうかだ」
──そんなあなたが好きなファイターは?
「みんな好きだし、みんなの試合を観ている。自分と同じ階級の選手も好きなんだ。スタイルが好きだし、真似したり学びたいことがある。ネイト・ディアスやホルヘ・マスヴィダル、コナー・マグレガー、ダスティン・ポイエー、ジョン・ジョーンズ、スティペ・ミオシッチ、ダニエル・コーミエー、アマンダ・ヌネス……etc、すごい選手がたくさんいるし、彼らから多くを学ぶことが出来る。ただ、このスポーツが好きなんだ。毎週試合を観るし、自分が出ない試合でも楽しみながら観るのはいいことだよ」
──あなたはかつてジョン・ジョーンズのトレーニングを見て「一緒にトレーニングする機会をもらえないか」と頼み、チームメイトになった。元同僚のJJから学んだことは?
「ジョンから学んだのは、若い頃から彼が自分自身の将来を決めていたことだ。ただトレーニングパートナーと練習をするだけでなく、自分で考え、YouTubeを見て研究している。そうやって、彼は試合に勝ち成功してきた。彼は才能があるけどトレーニングもしっかりしている。彼が勝ち獲ったものは、すべて努力によるものだ」
──バンタム級王者になった後の展望を教えてください。
「ベルトを獲って次の挑戦者と闘う──シンプルだよ。チャンスを与えられたのだから、他の選手たちにも与えるべきだ。そして自分が最強であることを証明する。ランキングには意味がある。『再びランキングをグレートにして』意味あるものにしたい」
──将来について、どのように考えていますか。
「何が起きるか楽しみだよ。長い間闘ってきて、ようやくここまで辿り着いたから感傷的になる。感情のジェットコースターのようなものだったからね。今まで両親に言われたように、感情を表に出さずにコントロールしてきたけど、この事については色々考えたし、今の自分、そしてこれまで努力してきたことを誇りに思う。
生まれ育った環境ではドラッグを売ったり、ギャングに入る以外の選択肢はなかった。だから今ここにいられるのは信じられないことだ。自分がどういう人間か、今までの苦悩、そしてこれまでの軌跡を忘れないようにしたい」
──ファイターになる前は靴の販売員をして、生活するために学校でヘアカットもしていたそうですね。苦境を乗り越え、目標を達成するためのアドバイスを。
「人生では選択を迫られる時がある。その選択により問題が発生することもある。自分自身に真摯であれば、誰でもいい選択が出来ると思うし、時には運も必要だろう。悪い状況にあっても挽回するチャンスはある。自分より不幸な人がいると考えて、幸せに生きて健康でいることが大事だ。
酷い状況にいるなら出口を探そう。何を犠牲にすべきか、睡眠か、自由な時間か、夕食か、友人や家族に会うことか……自分にとって何が大切か? どこにいたいのか? 難しい選択だけど一度選んでからはすべてが楽になった。何をやりたいか、目標が何か分かっているなら、世界はそれができるように動いてくれるだろう」