カーフキックを嫌う選手が増えると、テイクダウンしやすくなる
カーフキックがMMAのひとつの技として組み込まれていくことで、今後は「カーフキック」に繋がる技も、効果を発揮することになる。
カーフキックを受ける相手の反応によって攻め手も変わってくる。カットして足を上げることによってどう重心が変わるか、その体勢のときに対応しにくい攻撃をすればいい。
たとえば、パンチの場合では、「スウェーでかわす人」「ブロッキングする人」「ヘッドスリップする人」「バックステップする人」、それぞれの対応により、どの足に重心が乗っていると、どの蹴りやパンチで反撃しにくいかが決まる。
同じようにMMAのなかで、カーフキックの対応によって、その次の技のトランジション(移行・繋ぎ)も変わってくる。
金原は、その一例として、動画のなかで「僕がよく使うのは、カットしてくる選手に、ローを蹴るふりをして相手の外側に足を運び、それに相手の足を引っかけるようにして、外側の手で相手を後方に倒す」というムエタイのこかしに似た動きを披露。
さらに、「その手の捌きを、外足を引いてステップバックされたら、そのまま詰めてボディロックやシングルレッグでテイクダウンに行くこともできる」と、カーフキックからの展開を実技している。
「カーフキックを嫌う選手がもっと増えてくると、テイクダウンしやすくなったり、いろいろな攻撃のバリエーションも増えてくると思います。みんなバカみたいに蹴ってくるようになってくると思いますが、絶対に防げない技じゃない」
そう語る金原は、冒頭で記した通り、カーフキックに傾倒することで、技術の幅が狭まることも危惧している。
「距離を取って、カーフで組み立てる人もこれから増えてくるでしょう。ケージレスリングの技術が向上していくなかでポイントゲームになるように、競技性が高まると仕方無い部分はある。リスクを負わずに勝てるならそれにこしたことはないと考える人も増える。時代の流れだとは思いますが……」と言いながらも、パンチとカーフキックの最強コンビネーションだけでは勝ち続けることは出来ない、とも語る。
「カーフキックに対して、距離を潰せれば問題ないんです。楽をしようとせず、組むことが出来ればもらわない。あるいは構えを考える。広いスタンスで近距離で、ひたすらテイクダウンを切ってパンチ狙いで組まないという構えだと、カットが出来ない」
距離が変われば、蹴りもパンチも組みも変わる。冒頭に記した通り「相手に対してリズム感や距離感が合わなければ、パンチも蹴りもテイクダウンも合わせることはできない」のがMMAだ。
技術は巡る。かつて猛威を振るった三日月蹴りは、MMAの動きのひとつとして、効果的な効かせ方とその防御方法も認知されつつある。
「対処が出来ていないと、ひとつもらってしまうだけで、ゲームの流れが変わってしまう」可能性を持つカーフキックの、今後の展開に注目だ。