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2021年2月22日(月)東京・TSUTAYA O-EASTにて『Road to ONE:4th Young Guns』が開催され、メインイベントの女子アトム級で、平田樹(フリー)が、中村未来(MARS GYM)に2R、パウンドでTKO勝ち。プロ戦績を4勝無敗とした。
終わってみれば、最後は必勝パターンの首投げ、袈裟固めからのパウンドできっちりフィニッシュも、勝者・平田の顔には笑顔は無し。試合後に、解説の青木真也から「俺は褒めない。パターンが決まっちゃってるからもっと練習しなきゃダメだ」と期待のダメ出しを受け、涙も流した。
21歳、女子でメインイベントを張った平田は一夜明けて「自分に納得いかない。自分に腹が立つな。みんなが求めてる試合じゃなかったし、自分でも求めてる試合じゃなかった内容」とツイートしながらも「ひとつだけ言わせて。正直、試合楽しかった。ケージの中最高だった」と前を向いた。青木は「平田樹はこんなもんじゃない。未来しかないぞ!」とnoteに記している。メインをフィニッシュで締めた平田はなにひとつ満足していない。平田との試合後の囲み取材での一問一答は以下の通りだ。
自分だけが攻めている試合は……ずっとそれでは通用しない
──試合前に言っていた「フットワークを使っての打撃」に行けなかったのは、試合が始まってみて何か違和感がありましたか。
「出来る、と思っていたんですけど、結果よりも、その後のことを考えていたので、“結局それかよ”みたいなものを周りに思わせたくない、という思いが一番ありました。試合をしたのに、試合をしてないような、このモヤモヤ感が一番、嫌です」
──ご自身のなかでテーマを持って臨んだメインだったと思います。いつもの必勝パターンに頼らない勝ち方のなかで、出来たこと・出来なかったことを、どう考えていますか。
「いや、もうほぼ出来なかったです。一個やったのはタックルで倒すことくらい。打撃もせっかく1年も練習してきたのに──(前戦からのブランクの)1年の期間が長かったというのもありますけど──それを理由には絶対にしたくないんで、もっと出来ることが、たくさんあったのに、出来なかったのが一番悔しかった。試合をしたのに試合をしてないような、この感覚が嫌なので、明日にでもすぐに練習を再開して、次の試合も、もうすぐ決まると思うので、そこに向けてやろうかなと思います」
──最後は多少、強引ながら首投げから袈裟固め、パウンドでした。
「寝技で勝つんだったらもっと違うパターンもあったし、もっと自分のできることはたくさんあったのに、なんであれに行くのかも……やっぱり練習で出来ても試合で出来ないのは嫌でした。練習じゃないところで何かが欠けているな、というのも思いました。でも、1年ぶりの試合で出来たことは、一番、良かったかなと思います」
──メインで“万が一”もあってはいけない、というプレッシャーはありませんでしたか。
「いや、特に負けるってことは全く考えてなかったです。勝つという自信には満ちていたのですが、勝つだけでなく内容にこだわりたかったので、そこが一番、悔しいです」
──今回は1年ぶりの試合でした。進化するには、練習と試合を繰り返すしかないでしょうか。
「『すぐに次の試合を組んでください』とお願いしているので、もう長い期間を休むことは考えたくないです。もう試合をして勝っても負けても自分に課題が残る試合はしたいと思っていました。でも今回みたいに勝ってこういう悔しい思いをするのは初めてです。次はこうならないようにしたいです」
──試合後、青木真也選手から、どんな言葉を掛けられていましたか。
「『みんなは良かったよ、と悪いことは言わないと思うけど、俺は褒めないよ。どんなに頑張っても(練習してきたことが)全然試合に出てないし、ちょっと狙いすぎじゃない? パターンが決まっちゃってるからもっと練習しなきゃダメだ。次の試合はもうすぐだから、そこをどうするかは自分次第だよ。とりあえず俺は褒めない』と言われました」
──試合のなかでしか得られないものもあるでしょうけど、ただ試合をして同じ形になっては得るものが少ない。練習内容も含め、さきほど「何かが欠けている」と感じたのはどんな点だと思いますか。
「やっぱり“やられ慣れる”じゃないですけど、打撃も寝技も、もっと自分が攻めるよりも、攻められたときにどうするかを練習したいなと思いました」
──テイクダウンして寝技の部分でも、パスガードのバリエーションと、パスしながらも足を戻されて立ち上がられるなど課題を感じました。
「今回は、パウンドアウトか打撃と決めていたので、そこに拘り過ぎたし、もっと練習はしてきても試合で出ない部分をどうするか、ですね」
【写真】カウンターのダブルレッグのほかに大内刈でのテイクダウンも決めた平田。
──もっと攻防を試したかった?
「攻防もそうだし、自分が受けてからの打撃も。自分だけが攻めている試合は……ずっとそれでは通用しない。今までは通用しても、そこを変えられたときにどうするかのパターンをもっと練習したいなと思いました」
──試合後にNext Young Guns Award賞を受賞したのは、敗者の中村選手でしたが、そういう試合をさせたことにも、もやもやがありましたか。
「うーん、絶対(自分には)ないだろうなと確信していたので、そこを獲りたかったけど、ここで貰ったらほんとうにおかしいので、当たり前だなと思いながら、ずっと控え室で青木さんと『このままじゃダメだよ』と話していて、“まさにこれからだな”と感じていました」
──終わってみれば、きっちりフィニッシュはした。プロキャリア4戦で、ここまで期待をかけられてハードルを課せられていることについては、どう感じていますか。
「そこは全く関係ないです。キャリアのことを言われるのも多いのですが、こういう気持ちになれたのはいいことだけど、(ほかの選手のキャリアに関係なく)自分は自分なので、もっともっと試合をしないと、こういう経験も味わえない。次の試合に向けて、すぐに切り替えないとなと思いました」
──最後にマイクで「女子の試合でメインをやれたのは、男子だけの格闘技じゃないし、女でも戦えるということを見せたかった」と語りました。男子選手がほとんどのなかでメインを張った自負はいかがですか。
「こうして男子選手がいる中でも女子選手が上の位置でメインを張れるのは、一番胸を張れるところで、その中でも男子に負けない試合をしたいというのが一番でしたが、これじゃダメだなって。女じゃないみたいな試合をしたかったのに、これじゃあまだまだだなと課題が残りました」