ムエタイの殿堂として歴史あるルンピニースタジアムでムエタイが行われなくなる可能性も。多くの外国人選手たちもルンピニーのリングに上がった
2021年2月4日(木・現地時間)にタイ陸軍のスポークスマンが会見を行い、ムエタイの2大殿堂のひとつであるルンピニースタジアム(もうひとつはラジャダムナンスタジアム)で、ムエタイの試合が行われなくなる可能性があることを発表した。
ルンピニースタジアムはタイの国技ムエタイ専用の競技施設で、1956年12月8日に開設。タイ国陸軍によって運営され、認定する王者はラジャダムナンと並んでムエタイの最高権威とされてきた。
激しい試合が多く、特に90年代に大物プロモーターであるソンチャイ氏が手がけた興行は人気で、日本のムエタイファンも魅了された。スタジアムの老朽化に伴い2014年2月にラーマ4世通り沿いからラムイントラ通り沿いに移転されている。
外国人キックボクサーにとってはラジャダムナンよりも難攻不落で、1999年5月にムラッド・サリ(フランス)が初めて外国人として王座に就いた。多くの日本人キックボクサーたちもルンピニーのタイトルを目指したが、日本人で獲得したのは2019年4月に王座決定戦で勝利した吉成名高(名高・エイワスポーツジム/エイワスポーツジム)のみ。
’(写真)ムエタイの2大殿堂であるルンピニースタジアム(ルンピニースタジアムの公式facebookより)
そのルンピニースタジアムでムエタイの試合が行われなくなるかもしれないという。どういうことなのか。
陸軍のスポークスマンによれば「陸軍はギャンブルに関係することを良しとしない」(タイではムエタイはギャンブルの対象)というのが現在の陸軍最高司令官の考えで、地方の陸軍基地の中にある競馬場での競馬と、ナコンラチャシーマー県とサラブリー県の2カ所の陸軍基地内のムエタイスタジアムでの興行は停止すると発表。
ルンピニースタジアムに関しては「これからどうするかを考える、ルンピニーで試合をしない場合の軍の損失なども調査する」とのことで、陸軍司令部は軍内部に(ルンピニースタジアムに関する)調査および研究プロジェクトチームを結成するという。
つまり、今すぐという話ではないが、調査結果次第ではルンピニースタジアムでのムエタイ興行はなくなり、スポーツ施設に移管するかもしれないということだ。
ムエタイは観光資源でもあり、外国人観光客のスタジアムへの入場料は貴重な収入ともなっている。しかし、最近ではテレビマッチが人気でルンピニーやラジャダムナンの権威が昔ほどではないとの事実もある。
それでもムエタイの伝統あるルンピニースタジアムが消滅することは、ムエタイの頂点を目指す選手たちにとっては大きな衝撃となるだろう。続報が待たれる。