2020年12月31日(木)さいたまスーパーアリーナにて開催された『Yogibo presents RIZIN.26』のメインイベントで、朝倉海(トライフォース赤坂)が持つRIZINバンタム級王座に挑戦し、ベルトを奪還した堀口恭司(アメリカン・トップチーム=ATT)。
試合を決めたのは、堀口の強烈なカーフキック。その後、「カーフキック論争」を巻き起こした堀口の独特の空手ステップとカーフの相性、ATTでのマイク・ブラウン一派による朝倉海対策。そして──これからについて1時間、堀口が語りつくした。
2021年1月22日(金)発売の『ゴング格闘技』3月号(NO.312)に掲載されるロングインタビューからカーフキックについての重要な証言を、MMAPLANETとのコラボレーションで、ここに紹介したい。
──いやぁ、取材前にYahoo! に掲載されたインタビューを読ませてもらったのですが、あんなに詳しく試合を振り返られ、今後の話までされるともう私の出番もないな、と(笑)。困ってしまっていますよ。
「アハハハハ。うわぁっと思ったところもありましたけどね(笑)。原稿チェックって立場が逆だと嫌だろうし、そこは言わないようにしているんですけどね……アハハ」
──書き手の立場からすると、ちょっと使われてしまいましたね(笑)。では早速、大晦日の朝倉海選手との試合ですが、一昨年8月の時と比べると動きが滑らかでした。前回はこうやって動ける堀口選手と比較すると、柔らかさがなく体がつんのめっていました。
「前の試合はもう焦って動いているだけでしたね。相手の方がタイミングを掴んでいるのに、ただ前に出て。今回は自分の体調も良くて、作戦も上手くハマりました。まぁ体調に問題がなければ、こういう結果になるとは思っていました。前は体調が悪くても勝てると思って受けているんだから、負け負けですけどね」
──あの敗北で学べたこともあったのではないでしょうか。
「ハイ、一度断った試合はやるべきではないということですね。自分主体じゃないですけど、プロとして体調をしっかりと考えて試合を受けるべきだと思うようになりました。それでも自分としては、どうしても『漢ならやるでしょ!』というアマチュアみたいなところがあるので。漢って感じなのが、好きなんで。言われた相手と戦う……まぁ、そういう方がドラマも生まれるとは思いますけど、本当のプロはそういうところで自分を優先するはずです。若いうちは『漢なら』で良いかもしれないですけど、一つひとつの試合が大切になってくると、断る時は断る必要があるかと思います」
──では今回の試合、もし2週間前にヒザや腰、首のケガをするようなことがあったら、どうなっていましたか。
「まぁまぁまぁ、やるしかないですよね。アハハハハ」
──変わっていないじゃないですか(笑)。
「やはり皆に期待されているじゃないですか。そこですよ」
──なるほど。ところで、試合後の話題がカーフキック一辺倒になっているのですが、正直、カーフだろうがローだろうが、もともと堀口選手に下段を蹴る印象はなかったです。高校時代に出場していた、全空連のポイント空手には下段蹴りは無かったですよね。
「無かったです。一期倶楽部でも下段はやっていなかったですね。ただ足払いがあって、そこは動き的には似ていました」
──空手のステップを顔面パンチに生かしていた。それが堀口恭司の“カラテin MMA”という印象でした。
「そうですね。ただ、それも距離ですからね。下を蹴る距離なら下を蹴るように自然となっていました」
──あの踏み込みから蹴るのも、ミドルやハイが多かったような印象があります。
「あぁ、そうかもしれないですね。でも下段も使っていましたよ。VTJでイアン・ラブランドとやった時もローを蹴っていましたし」
──あの時はオーソドークス構えのラブランドに対して、前足となる左足でインサイドローを蹴っていて、今回のような奥足となる右のアウトサイドローではなかったかと。
「前足が多かったかもしれないですけど、右でも蹴っていたと思います。試合で使い分けていましたし。左右どちらが得意とか、不得意は無かったので。ただカーフっていう意識はなかったですけどね。
ヒザをケガする前ですけど、ジョズエ・フォーミガ(現UFCフェザー級)に初めてカーフを蹴られたんです。左足をバシって。感覚的には平気だったのですけど、もう踏ん張れなくなっていて。これは凄い威力だなって思いました。それからですね、自分も使うようになったのは」
──シングルレッグ(片足タックル)からバック奪取の名手によって、カーフの洗礼を受けたのですか!
「アハハハ、そうなんです。試合でカーフを意識したのは、今回の試合が初めてでした。自分の感覚でやっているところで、マイク・ブラウンがこういう角度なら蹴りやすいとか指導をしてくれて。そうやって今回は練習してきました。一発でダメージを与えて、3発で試合を決めることができるように。狙い通りになりました。海君は身長が高いので、カーフ3発で動けなくなるという読みでした。やはり線が細いですし」
──カーフは蹴り過ぎると、自身も痛めることはないですか。
「カットされれば痛いですよ。でも海君は全くカットしていなかったし、反応も無かった。『あっ、これはいける』と思いました。本来は寝技に持ち込むとか、色々とプランがあって。一番はテイクダウンをして、寝技で攻めることだったんですけど、マイク・ブラウンからも『打撃でもいける。キョージが大丈夫だと思ったら、打撃に切り替えれば良い』と言われていました」
──二瓶弘宇先生(一期倶楽部館長)の指導を受けた踏み込みは、パンチからテイクダウンに凄く応用できるステップだと思っていました。
「ハイ、ずっと言ってくれていましたよね」
──ただ、カーフで終わらせることができることに応用できるとはまるで思っていなかったです。
「本当ですか(笑)」
──自分の知識ではカーフは相手のパンチをかわすために、インサイドに踏み込んでそこから蹴って足を戻す。もしくはMMAだとそのまま蹴り抜いて、踏み込んだ足の方向に進むのでパンチに繋げることが出来ないと思っていたんです。でも堀口選手はアウトに踏み込むし、そのままパンチにも繋げていて。これはカーフ後もある、カーフだと。
「まあ、出来ますよ。それこそ足の動かし方です。アウトで踏み込んでも、そのまま戻すとパンチを出せますし。実際、カーフで海君の姿勢が乱れても、蹴り足を戻してから左を当てることができましたしね」
──そのパンチこそ、個人的に今回の試合のベストムーブでした!
「アハハハハ。あれやると、まぁ反応できないですよね。そこまで身体に覚えさせて、試合に臨みました」
さらなるカーフ論、ATTでの対策練習、そして堀口恭司のこれから、が語られたロングインタビューは、2021年1月22日(金)発売の『ゴング格闘技』3月号(NO.312)にて掲載。