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2020年11月23日(月/祝)、後楽園ホールにて、サステイン主催「プロフェッショナル修斗公式戦」が開催され、メインイベント前に、修斗世界フェザー級王者の斎藤裕(パラエストラ小岩)がケージイン。「RIZIN.25」大阪大会で朝倉未来に勝利し、RIZIN初代フェザー級王者となったことを報告した。
試合後に病院で検査を受け、「目は眼窩底骨折ではなかったですが、鼻は折れてましたので、治療をして体を治していきます」と記していた斎藤は、腫れの引いた顔で登場した。
ケージの中で斎藤は、「大方の予想を覆して(笑)、RIZINで勝ちました。修斗のみんなは僕の勝ちを予想してくれていたと思いますが、RIZINのフェザー級チャンピオンになることができました」とホームで勝利を報告。後楽園ホールの観衆から大きな拍手を受けた。
続けて「アマチュアからプロまで修斗でやってきて、ここで戦った経験でRIZINでも勝つことができました。選手としてもチャンピオンとしても、これからも強さを証明していきたいと思います。まだ次の試合は決まっていませんが、次も勝てるよう頑張ります」と修斗ファンに挨拶した。
自分には負けなかった。地道に頑張って行くしかない(斎藤)
また、試合翌日には、自身のYouTubeチャンネルで「朝倉未来戦を終えて」をアップ。勝因を語っている。
試合後の夜は一睡もしなかったという斎藤。「いつも試合後の夜は眠れない。興奮しすぎてアドレナリンが残っていて。いろんなプレッシャーはあったけど。ホッとした。みんなの喜んだ顔を見れて良かった」と率直な感想を語った。
新型コロナウイルス対策で客席が限定されるなか、チケットは完売し、5,487人の観衆が集まった。
試合前「この世はミクル様によって救われる」「斗いを修めし神よ、永遠たれ」と事前動画が会場に流されるなか、斎藤自身は、会場の空気に後押しされたという。
「意外と僕に対する歓声が多くて、すごく心強かった。リングに上がって感動しました。気持ちよくリングに上がれましたね。みんなが盛り上げてくれて『頑張れ』という声も多かったんで、8月のとき(RIZINデビュー戦)よりいい精神状態でリングに上がれた。嬉しかったです」
試合は、序盤は慎重な展開に。サウスポー構えの朝倉に対し、右前足の外を取る斎藤。朝倉は内側に入り左の前蹴り、左ストレートを狙う。1R、残り1分で斎藤は最初のニータップでテイクダウンを狙いに行くが、朝倉はその組み付きは切っている。
斎藤は「単純に強かったですね。身体が強い。日本人選手には感じない体幹を組んだときに感じました。簡単に(テイクダウン)取れないなと思いました。すごく自分が“見られているな”とは感じました。攻撃に対してどういう反応をするのか。そういう選手だとは思っていたので、そこの勝負には負けないようにとも思っていました。冷静ですよね、彼は」と、朝倉の体幹の強さを語る。
1Rには、左構えと右構えの喧嘩四つによる朝倉の左インローがローブローとなり、斎藤は中断を余儀なくされる。
その金的蹴りについては、「オーソとサウスポーは当たりやすい。下から蹴り上げられて痛かったけど、あれで終わりは無い。休む時間を与えてくれたので、落ち着いてもう1回、やろうと。動けるところまで戻ったので。やると言ったら支障はない」と、試合を続行するつもりだったことを語ると、「だいたい1分半くらいで相手のリズムとかイメージは掴める。休みながらも相手のイメージを掴んでいた。この先どう戦おうと。痛かったけど落ち着いていた」と、インターバル中に、1分48秒で掴んだ情報を整理していたという。
中盤から斎藤がいい形で組むことに成功するが、スタンドバックにつかれた朝倉はコーナーまで歩き、ロープ際でのテイクダウンに腕の引っ掛け、さらに、尻を着かされても早めのブレークもあり、斎藤は試合をコントロールしつつも、最後は打ち合いに「行かないとダメだと思いました」と言う。
「勝負かけないとダメですね。仮に1R・2R取ってたとしても、“行かなかった後悔”は取り戻せないんで。ジャッジの見方によってポイントを、寝技を取る・テイクダウンを取る・打撃を取るというのもある。行けるところで行こうと思ってやっていました。
左をもらってヨロヨロとして、“ここで終わったらマズい”と思って“取り返さないと”と。ダウンしているつもりは無いんですが、見栄えは良くない。映像で見たら、結構、振っていましたね。あそこで退かなかったのが、勝ちになった理由なのかなと思いますね。あそこで受けていたら、向こうについたかもしれないし。そういう意味では、自分には負けなかったのかなと思います」と、最終局面で守りに入らず、打ち合いの中で、腰を落としながらも、すぐに反撃して前に出たことが勝利につながったとした。
判定は“ちゃんと見てくれていた”感じはあります(斎藤)
ダメージ優先で、3Rを通したトータルジャッジのRIZIN。判定は3者が斎藤を支持した。
「取ってるなとは思っていました。負けは絶対無いなと自信を持って言える。でも判定はどうなるか分からない。自分では勝っているつもりでも、どういう風に見られているかも分からないので、“ちゃんと見てくれていた”感じはありますね」と、安堵の表情を浮かべた。
勝因は「映像も3R、見返したんですけど、トータルで見ると要所要所のテイクダウンがポイントだったのかなと思ってます。打撃もやりましたけど、要所要所で自分が組んで攻撃を入れられたのが印象的に良かったのかな」と語る。
試合を楽しんでいたか、と問われ「楽しくはない。やらなきゃやられるから」と緊迫した大一番を振り返った斎藤。試合後はベルトを巻いたリング上で、涙を見せながら「人生いいことばかりではないですけど、頑張っていればいいこともあると思います。これからもっと精進して試合をして実力をみせていきたいです」とマイクで語っていた。
その「人生いいことばかりではない」と話したことについては、「良い時、悪い時はみんなある。格闘技選手としてすごく辛くて孤独を感じていた時期があったんですけど、いまは、いろんな人たちに背中を押されて、チーム体制で戦えることが嬉しくて。良くないときはあるけど、巡り巡っていいときってくるんで、“今日はダメだから明日もダメ”じゃないし、“今日がいいから明日もいい”わけじゃなくて、地道に頑張って行きましょうという感じです。今年、特にそれを実感したんで、同じ境遇にいる人たちに共感してもらえるんじゃないかなという思いもあり、自然と出ました。今回、試合に辿りつくだけでいろんなことがあったので、試合が出来て勝てたことで言っておきたいなと思って、言いました」と説明している。
そして、退場する朝倉には「対戦を受けてくれた朝倉選手ありがとうございます。このリングに上がり続ければ、また会うこともあると思います。そのときはお願いします」と、語りかけていた斎藤。試合前のやりとりから実際に対峙した未来を「想像通り? うーん、そうですね……想像通りといえば想像通り、ということにしておきましょう」と言った後で、「まだあるかもしれないんで、“先”が。分からないですけどね」と笑顔を見せている。
最後に王者は、「彼は『再戦したい』と、ダイレクトリマッチをと言っているのを読みました。いろいろ負傷箇所もあるので、休養しながらまた次の試合を決めていきたいと思います」と、含みを持たせた。