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レポート

【Parus FC】ビクター・ヘンリーはいかに敗れたか。UFC王者ヤンの練習仲間ウラルの柔道王が躍進。ハリトーノフはトンプソンを1R KO

2020/11/10 18:11
【Parus FC】ビクター・ヘンリーはいかに敗れたか。UFC王者ヤンの練習仲間ウラルの柔道王が躍進。ハリトーノフはトンプソンを1R KO

(C)PaRus Fight Championship MMA

 2020年11月7日(日本時間8日)アラブ首長国連合・ドバイにて『Parus Fight Championship2020』が行われ、DEEPバンタム級王者のビクター・ヘンリー(米国・33歳)が出場。「FEMFPバンタム級王座決定戦」としてデニス・ラヴレンティエフ(ロシア・32歳)と対戦し、判定3-0で敗れ、王座戴冠ならなかった。

 3Rのチャンピオンシップで、ヘンリーが対戦したラヴレンティエフは2018年12月のRussian Cagefighting Championship「RCC 5」でヘンリーが判定勝ちしている相手。現在UFCで2連勝中のカイラー・フィリップスにも2018年10月の「CXF」で判定勝ちしている実力者ヘンリーは、その後、日本のDEEPで元谷友貴に判定勝ちし、RIZINでもトレント・ガーダムに一本勝ち、金原正徳を2R TKOに下すなど、「RCC 6」での1R TKO勝ちも含め、MMAでは8連勝をマークしていた。今回もセコンドには、10月の素手のボクシングマッチ「Genesis」で勝利したジョシュ・バーネットが付いている。

 対するラヴレンティエフは柔道出身。8年間ロシア代表として活躍し、2010年のサラエボでの欧州U23選手権66kg級で優勝。2012年にはリオのグランドスラム、2013年にはクロアチアのグランプリ・リエカも制している。

 MMAは10勝2敗。ジャクソンウィンクMMAでの2年間のトレーニングを経て、2017年のデビュー戦こそバックフィストを受け黒星を喫したものの、その後、2018年12月の「RCC」でヘンリーに判定負けするまでは6連勝。ヘンリー戦後もRCCで3連勝し、今回のタイトルマッチの機会を得た。

 2018年5月に、「TUF Brazil 4バンタム級トーナメント2015」優勝のヘジナウド・ヴィエイラ(UFC本戦1勝2敗)に判定勝ち、同9月にはUFC3勝1敗のテイラー・ラピルス(フランス)にも判定勝ちしており、プロデビューからわずか18カ月で、2人の元UFCファイターを下したことになる。2019年3月には、WEC、Bellator、ACBで活躍するアンソニー・レオーネにも2R TKO勝ちをマークしている。

 1R、ともにオーソドックス構えから。時折スイッチするヘンリーは右ロー。しかし蹴り足を掴まれ右を受け、そこにニータップを合わされ尻餅を着く。草刈を狙い立ち上がるヘンリーはなおも右ローを連打。さらにオーソから左ミドルも。左右を当て前に出て蹴り足を掴まれても今度はヘンリーは片足で右を入れる。

 ボディロックから差し合いとなり離れ、互いに右ローを蹴り合う。ラヴレンティエフの左ジャブにも右をかぶせるなど打ち返しを入れるヘンリー。ラヴレンティエフは速い左ハイをガード上に当てる。

 右を伸ばし、左で差して組むヘンリー。金網に押し込むが体を入れ替え右ハイを打つラヴレンティエフ。左ジャブを伸ばすが、ヘンリーもすぐにワンツーで追う。下がりながらも右ローを当てるラヴレンティエフ。詰めるヘンリーも右ローを当て前進し右ストレートも。潜って右に回るラヴレンティエフは右から左フック! これを浴びたヘンリーが一瞬動きが止まると、ラッシュのラヴレンティエフは首相撲&右ヒザ蹴り。突き放すヘンリーも左フックを入れる。

 互いに右の蹴りから、右ハイを当てたヘンリーが右ストレートからニータップを狙うが、それを腰の強いラヴレンティエフが押し返して逆にテイクダウン! インサイドガードに入ると細かいヒジ。ヘンリーは左で脇差し潜る。ラヴレンティエフのラウンドに。

 2R、左ジャブ、右ストレートを打つラヴレンティエフに左ミドルを合わせるヘンリー。詰めると右ボディストレート、しかしサイドに回り、巧みに体を入れ替えるラヴレンティエフも右を返す。オーソから左ミドルを2度当てるヘンリー。詰めてきたラヴレンティエフに右を当てる。右ローを打つラヴレンティエフに強い右ローはヘンリー。ラヴレンティエフはくの字で蹴り足を取りに行く。さらに右ローはヘンリー!

 バランスが崩れるラヴレンティエフは組みに。クリンチボクシングはヘンリーに手数。細かいステップと打撃で詰めるヘンリーにワンツーはラヴレンティエフも単調に。追うヘンリーに右のバックフィスト! ブロックするも歓声が上がる。ヘンリーの組み際に右ヒザを突くラヴレンティエフ。ヘンリーも近距離で右のショートフックを返す。ジャブのダブルで前進し右ストレートを突くヘンリー。ダックして打ち返してくるラヴレンティエフの左に対し、脇を潜りスタンドバックに着く。

 背後のヘンリーのお株を奪うかのようにストレートアームバーを狙うラヴレンティエフ。体を起こし足をかけるヘンリーにラヴレンティエフはキムラに切り替え上に。クラッチは外すヘンリーだが、パワフルなラヴレンティエフは左手でヘンリーの右手首を掴んで固定し、インサイドから右ヒジ! さらに右で差しながら右に片足をパスするとレッグドラッグ気味にヘンリーを半身にさせ、金網に押し込みながら右ヒジを落とす。パワフルな抑え込み&ヒジに、動きに精彩を欠くヘンリーは残り10秒で腰を戻しフルガードにしたところでゴング。この回もラヴレンティエフのラウンドに。

 3R、左ジャブ、右ボディストレートはヘンリー。しかし距離を取るラヴレンティエフはオーソから左ハイをブロック上に当てる。ラヴレンティエフのジャブに左右の蹴りをカウンターで合わせるヘンリー。左ミドルも打つが、そこにすぐにラヴレンティエフも右ハイを器用に突く。ノーモーションの左ジャブのラヴレンティエフ。組んでの打撃も突き放し右ハイはラヴレンティエフ。ガードするヘンリーだが、右フックを被弾する。

 前に詰めようとしたヘンリーに、ラヴレンティエフはヒザ着きながらもスピーディーなダブルレッグテイクダウン! 下になりラバーガード、ヒップスローを狙うヘンリーは、下からの4の字ロックを解き、腕十字を狙うが、右で差すラヴレンティエフは腰を抱き左足を抜き、ハーフからヘンリーに背中を着かせる。足を戻しフルガードにするヘンリーだが、立ち上がれず、半身で下からアームロックを狙う。

 パワフルなラヴレンティエフはそれを潰すと、上半身を立てて胸を合わせに向き直りのヘンリーをさらに剥がして背中をつかせて肩固め狙いに。ケージを蹴って後転して亀になるヘンリーは立ち上がり! スタンドで左ジャブを突くラヴレンティエフ。さらに低いが速いダブルレッグで再びテイクダウンを奪う!

 クローズドガードのヘンリーは足を開き十字を狙うが、中腰から押し込み上下に細かくパウンドするラヴレンティエフ。オープンガードにするヘンリーだが下のままゴング。再戦でラヴレンティエフにリヴェンジを許し、FEMFPのベルトを巻くことは出来なかった。

 世界の強豪が揃うバンタム級でまたも大物喰いを果たしたロシア勢。ラヴレンティエフは現UFC世界バンタム級王者のピョートル・ヤンとも練習を積んでおり、所属のJUDO URALのみならず、タイガームエタイでの練習の模様も見ることが出来る。

 柔道出身とはいえ、柔道の投げ技のみならず、強い体幹を活かした打撃の中でニータップ、ダブルレッグテイクダウンを決めるなど米国でのMMA技術を採り入れ、自身の強みと融合させている。

 プロMMAデビューから3年での快挙の連続。一口にロシアと言っても東スラブ勢のみならずダゲスタンハビブ・ヌルマゴメドフを筆頭とするカフカス(コーカサス)出身選手の躍進、そして、ウラル山脈を境に極東へと広がるシベリアのピョートル・ヤンを含む「ロシアMMA最後の未開の地」アジアロシア出身選手のラヴレンティエフらの活躍は、今後の世界のMMAの勢力図を変えていきそうだ。

 なお、同大会のメインでは、PRIDE、DREAM、Bellator等で活躍中のセルゲイ・ハリトーノフ(ロシア)が、IGF、KSWにも参戦したオリィ・トンプソン(英国)と対戦。

 ともにオーソドックス構えから左ジャブを腹、顔面に突くハリトーノフは、右ロー、右アッパーも打ち込みトンプソンを詰めると、右のフェイントを一瞬入れてから、右の打ち下ろしのストレートをヒット。足が揃って受けたトンプソンが前のめりに倒れ、すぐにレフェリーが間に入った。1R2分50秒、ハリトーノフがKO勝ちでParus FCヘビー級王者となった。

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