(C)Josh Barnett/Genesis
2020年10月23日、素手のボクシング「Genesis」が無観客のPPVイベントとしてポーランド・ウッチで開催され、ジョシュ・バーネット(米国)が地元のマルチン・ロザルスキに2R終了時 TKO勝ちした。
「Genesis」は、米国の「BKFC」(Bare Knuckle Fighting Championship)とは別団体で、ポーランドでマーチン・レワンドウスキーとともにKSWを共同創設したマチェイ・コバワルスキがプロモートしている。
ジョシュ・バーネットの前戦は、MMAでは2016年9月の『UFC Fight Night 93: Arlovski vs. Barnett』でアンドレイ・アルロフスキー(ベラルーシ)に3R、リアネイキドチョークで一本勝ち。グラップリングでは、2018年10月の『QUINTET 3』でゴードン・ライアンに三角絞めで敗れている。
新型コロナウイルスのパンデミックが世界に広がるなか、米国以外での試合の機会を探し求めていたバーネット。現在、Bellatorと契約中だが、今回の試合はBellator側の承認を得て、ベアナックルでのファイト「Genesis」に参戦する。
対戦相手のマルチン・ロザルスキは、バーネットと同じ42歳でMMA7勝4敗。極真空手出身で、キックボクシングでも22勝8敗1分けという戦績を持つ。
顔面、頭部も含めた全身がタトゥーだらけの“入れ墨獣”として知られ、2017年5月にフェルナンド・ロドリゲス・ジュニオール(ブラジル)を1Rわずか16秒でKOに下し、KSWヘビー級王者に。2018年4月には「DSF Kickboxing Challenge 14」でK-1でも活躍したピーター・グラハムをキックルールで判定で下している。
メインイベントで、開催国に敬意を表し、ポーランドのメタルバンド・behemothの「Conquer All」で入場したバーネット。
巨大カーテンが割れると、コロシアム風の無人の観客席が映し出されたスクリーンをバックに花道を進む。続けて登場のロザルスキのバックはオペラハウス。
両者は四角いリングではなく、巨大な四角いケージの中に入って行く。
BKFC同様に、拳には手首を守るためのバンテージが巻かれているが、拳頭の部分は剥き出しとなっており、両者ともにボクシングシューズあるいはレスリングシューズを履いている。
バーネットは今回の試合のために、かつてマイク・タイソンとも対戦した元WBC世界ヘビー級王者ピンクロン・トーマスをコーチしたバンブルビー氏等からボクシングの指導を受けてきた。
1R、オーソドックス構えのバーネットに対し、サウスポー構えのロザルスキ。ガードを高く構えるロザルスキの真ん中に左ジャブを突くバーネット。グローブが無いため、ガードの間を拳が抜ける。
遠い間合いから頭から突っ込んでいくロザルスキ。クリンチするバーネットは、近距離でのダーティボクシングから左ヒジを当てる。金網まで押し込みヒジを狙うが、MMAと異なりここはすぐにブレーク。
ジャブのダブルからワンツーでクリンチするバーネット。左手でロザルスキの首後ろを抱え、右でヒジをヒット! さらに右アッパーをボディーに突く。バーネットは左目尻から出血。
バーネットの左のジャブのトリプルを受けたロザルスキは右目瞼から出血が多くなる。ワンツーアッパーのコンビネーションで攻めるバーネットはパンチが多彩だ。
金網際でのブレークでワンツーから右のロングフックはロザルスキ! バーネットのアゴを打ち抜くが、バーネットは倒れず。下がりながらサイドステップでかわす。
バーネットはここで逆に詰め返して今度は右手で首を抱え、左のヒジを連打! 下がるロザルスキに右ボディアッパーを突いて前かがみにさせると右のショートフック! ロザルスキがダウンする。
ダウンカウントのなか立ち上がるロザルスキ。残り12秒、勇気を持ってロザルスキの左右をかわしてワンツーで詰めるバーネットだがゴング。
2R、長い左ジャブから右を振り押し込むバーネット。左で差して金網に押し込むと、右で小手に巻きクリンチするロザルスキに空いた右手でボディ連打! 互いにダーティボクシングもヒジを当てるのはバーネット。ブレークも、ロザルスキの右目周辺が一気に腫れ上がり、肩で息をする。
ロザルスキのワンツーを遠い距離でステップしかわすバーネット。キックが無い分、上半身を屈めてパンチを防ぐダッキングを見せるバーネット。ワンツーをかいくぐって中に入ると、すかさず右アッパー! これで2度目のダウンを奪う。
ここも起き上がり片ヒザをマットに着くロザルスキだが、ファイティングポーズを取る。残り1分20秒でドクターチェック。地元ロザルスキにとってはインターバルを置けるドクターチェックだ。
再開。遠距離のジャブ、至近距離でのダーティボクシングで徹底するバーネットは、詰めて右アッパー、右ヒジ、左ボディ、肩パンチと近距離でラツシュ! ブレークに腰に手を当てるロザルスキ。再開。ロザルスキの左右フックをかわしてアグレッシブに左ジャブ、クリンチしての右アッパー、右フックを当てるバーネットが攻勢のままゴング。
3R、右目周辺を骨折したか、ロザルスキは試合続行不可能で、バーネットがロザルスキをハグ。最後に勝ち名乗りを受け、左上腕のタトゥー、バルナット(ヴァルクヌートとも呼ばれる北欧神話由来の3つの三角形。「戦闘で殺されし者達が天界ヴァルハラに迎えるための結び目」を意味する)を誇示した。
試合後、バーネットは初のベアナックルファイトの感想を、「教会で神と語らうような感じだった」と語った。
2R終了時TKOも「3Rあるつもりで戦った」というバーネットは、素手のボクシングで、ロザルスキが頭から突っ込んできたことについて、「頭の硬い部分を殴って拳を壊さないように注意したよ。指のカットは相手の歯に当たって切ったかもしれない。拳が腫れたね」と苦笑しながら、「もっと外側で角度つけて戦うべきだった」とカットした左目尻を下げて笑顔を見せた。
【写真】ピンぼけだが、ジョシュから送られてきた、腫れた右拳の写真。
クリンチボクシングや離れ際の打撃を効果的に使い勝利した“ウォーマスター”は、「ベアナックルはすごく危険だけど、良いポジションを取れば大丈夫。拳だけでなくヒジも使った」と、クリンチの中で頭を置く位置に気を付け、拳を壊さないようヒジ打ちも駆使して戦っていたことを明かしている。
「拳を冷やさないといけない。頭もちょっと痛いし」と言うバーネットは、リングアナウンサーから「ファストフードとビールで勝利の乾杯でしょうか?」と問われると、「ステーキとウイスキーだよ。生死を分けた戦いを越えたから、今日生きていることを感謝するために、彼とどこかで呑み交わしたいね。僕が作ったバーボン? あれは売り切れなんだ」と、バックステージで微笑みを浮かべた。
今後について、「僕の生徒の石井慧をKSWに上げたい」とリクエストしたバーネット。
また、試合前に、ワールド・ストロンゲストマン・コンテスト3連覇・5回優勝者にして、KSWではパウエル・ナツラ、ホーレス・グレイシーらに勝利しているマリウス・プシャノウスキー(ポーランド・13勝7敗1NC)との対戦を希望したことを聞かれ、「彼をスープレックスしたいだけなんだ。とてもリスペクトしてる。人間としての能力に驚くよ。あんな腕をアームバーできる?」と絶賛し、「ベルトを賭けた戦いで?」と問われ、「ただ強い人と戦ってみたいんだ。もちろんリングに上がる以上、常にベルトが目標さ」と語った。