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2020年9月10日(木)東京・渋谷O-EASTにて、『Road to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』が有観客で開催され、ABEMAを通して世界同時生中継される。
メインの青木真也(Evolve MMA)vs.江藤公洋(和術慧舟會HEARTS)ととともに、コ・メインイベントとなる第5試合では、ONE世界ストロー級1位・猿田洋祐(和術慧舟會HEARTS)と、同級2位・内藤のび太(パラエストラ松戸)による、ストロー級最高峰の日本人対決が実現する。
元ONE世界ストロー級&修斗世界同級王者(2019年11月30日に返上)の猿田は、2019年4月のONEインドネシア大会でジョシュア・パシオとの再戦に敗れ、ONE王座陥落も、2019年10月のONE両国大会でPANCRASE王者の北方大地に2R TKO勝ちで復活。ベルト奪還を目指している。
対する内藤も猿田同様に元ONE世界ストロー級王者にして元修斗世界(フライ級)王者。2018年9月にジョシュア・パシオに判定負けを喫し、ONE王座から陥落。2019年3月には レネ・カタランにもTKO負けし、キャリア初の連敗となったが、2019年5月にアレックス・シウバに、11月にポンシリ・ミートサティートに、いずれも判定勝ちし、現在2連勝中だ。
内藤・猿田ともに現ONE世界ストロー級王者のジョシュア・パシオと1勝1敗のため、決着戦にこぎつけてベルトを奪還するためにも、今回の日本人対決は絶対に負けられない試合となる。
しっかりフィニッシュして、パシオ選手にプレッシャーかけて現地に乗り込みたい
――5月のインスタライブで、現ONE世界ストロー級王者のジョシュア・パシオとともに1勝1敗という猿田洋祐選手と内藤のび太選手が対談しました。こんなに早いタイミングで、2人の試合が実現すると思っていましたか。
「こんなすぐやるとは思っていなかったですね。どこかでやるだろうとは思っていて、そのときはやろうとは思っていましたけど」
――試合オファーにご自身で即決でしたか。
「はい。自分で決めてましたね。場所と日時と対戦相手だけ聞いて『やります』と。毎回、オファーが来たときが、本当にベストタイミングだなと思っているんです。この機会を逃したらもしかしたら無いかもしれないという。毎回、後悔がないようにと思ってます。怪我だったり、どうしてもできない状況でなければ、全部受けようと思っていました」
――あのインスタライブでは、対パシオを通して、内藤のび太選手を滅茶苦茶、研究されているように感じました。曰く、「遠い間合いから前足の頭打ちの低いシングルレッグばかりなのはなぜか」などと本人に聞いてましたね。
「(笑)。前もってテーマを言ってくれていたので、もう1回、試合動画を見直したりして、考えましたね」
――猿田選手の試合は、2019年10月13日のONE日本大会での北方大地戦での2R TKO勝ち以来の試合となります。
「約1年ぶりですね。今回の試合オファーも当初は、ONEなのかRoad to ONEなのか、どちらか分からなかったのですが、(オファーが)来たらいつでもやると。その準備をしてなきゃいけないなと思っていました」
――海外での試合の場合は、日本人対決じゃなかったかもしれません。のび太戦は修斗時代から望んでいた試合だったと。
「本当にこのタイミングじゃなかったら実現しなかったカードかもしれません。実現しようとは思っていましたけど、チャンピオンにならないと難しいんじゃないかなという気持ちもありました。チャンピオンになって、発言権というか、『この選手とやりたい』と指名できるような状態になればできるとは思っていたんです。ONE本戦だと日本人対決は難しいだろうと。じゃあ僕がベルトを獲って、日本大会でのび太選手を指名させてもらおうと思っていました」
──そこまで思い入れのある試合だったんですね。
「この試合はただのワンマッチではなくて、自分がフライ級からストロー級に落としたきっかけがのび太選手だったので。自分がタイトルに近づくことが出来ずにいた時に、1階級下でのび太選手はほぼ負けなしでチャンピオンまで駆け上がって。その後、ONEでも活躍して凄いなと思っていました。自分は勝ち負けを繰り返して上がってきたので、羨ましい気持ちというか、この選手に勝つことで証明できる、救われる気持ちがあったので、ずっとやりたいと思っていました」
――会見ではのび太選手を「いつも自分から苦しい展開に持っていって、相手を削って最後はフィニッシュしたりドミネイトして勝利に繋げる気持ちの強い選手」と評していました。猿田選手は、その展開に乗ってもいいと思っていますか?
「思っています。そこで勝とうと思っています。あのスタイルからみんな逃げようとするんですよね。苦しい展開を警戒して、シングルレッグを取らせないために、距離を取ってカウンターを合わせようとする。自分はそうじゃなくて、入ってきてもらって構わないという、そこで勝負してやるよという、そういうイメージも持っています」
――レスリングの猛者が揃うHEARTSで、あのスタイルに近い動きが出来る選手も周囲にいるのですか。
「まあいますね。ただ、どんな練習をしても、たぶんあそこの部分では、のび太選手は超一流だと思うんです。ずっとそれをやって勝ってきた選手なので、やられる部分はあると想定して、そこでうまく修正したり自分の展開に持っていく、臨機応変に対応できる力が必要なんじゃないかなと思っています。だから、試合中に修正できるように出来ることの幅を広げてきました」
――のび太選手はチャンピオンシップの5R戦でより持ち味を発揮します。今回の3R戦のイメージは出来ていますか。
「でも、のび太選手は最初から絶対ガッと組んでくると思うので、そんなにすぐ1ラウンドで勝とうとは思っていないです。イメージは1、2、3と真っ向勝負して、3ラウンド目で削り勝ってパウンドアウトできるかなと思っています」
――2019年1月にジョシュア・パシオを下し、ベルトを巻き、4月の再戦で奪還されました。あの試合を見返すことは今でもありますか。
「見ますね」
――4R、フィニッシュのパシオの右ハイは猿田選手が右ストレートを打ったときにもらいました。
「右を合わせようとしたときにもらった。あれは技術というよりも気持ちの部分が大きいです。普通だったら絶対そこで打たないというか、見ないで振り回すということはしないので、“ああやってしまった”と。それまで“早く試合を終わらせよう”なんて考えたことが無かったんですけど、あの時、初めて試合前に“早く試合が終わってくれないかな”という精神状態になっていたんです。不安な部分が多すぎました」
──2018年12月に15日前のオファーで元王者のアレックス・シウバと対戦して判定勝利し、2019年1月のパシオとのタイトルマッチも急遽、代役としての挑戦でした。そして4月に再戦という過密日程でしたね。
「普通に考えれば、2週間前で受けて、次も1カ月前で受けて、全部判定まで行った。再戦まで2カ月あるからもっといい練習が出来ると思ったんですけど、蓄積したダメージや、海外で試合すること、減量することでも疲労はかなり溜まっていました。2カ月で良くなるはずがないんですよ、あれだけ急な試合を続けて。だから1回リフレッシュすることが、今考えると必要だったのかなと。……身体がもう駄目でしたね。怪我もちょっとあったので、試合中にその部分でいろいろ考えなきゃいけないこともありました」
――怪我をカバーしながら戦う必要があったと。
「そうですね。それでもう行っちゃえという感じで入ったときに、終わってしまったという」
――半年後の北方戦(2R パウンドでTKO勝ち)では、試合までの持っていき方はいかがでしたか。
「あの時は、パシオ戦が終わって、格闘技をやっていた初めてですけど、1カ月以上、まったく格闘技をやらずに、ジムにも行かずに、しっかり休んだんです。その怪我のちゃんとした専門の病院に行ってケアして、ほぼ2カ月かけて、休養と怪我の治療に専念したことで、気分もリフレッシュできましたし、身体の状態も万全に出来たという状態ではありました」
――今回はコロナ禍があり、11カ月、試合間隔が空きました。
「空きすぎちゃいましたね(苦笑)。でもいい意味での緊張感もあります。自分はあまり試合で緊張はしないんですけど、今回、決定したときには、ちょっと“来たな”という気持ちにはなりました」
――有観客ですが拍手での応援ということもあり、セコンドの大沢ケンジ代表の声もより一層、聴こえそうですね。あの「行け」って声で、気持ちが決めて行くときもあるのでしょうか。
「自分はもう試合中は、自分の感情とか捨てますね。言われたらやるってだけです。言われたことをやるだけ。そのためにセコンドをお願いしてるので」
――なるほど。この試合をどう位置付けますか。
「ランキング1位と2位の試合なので、実質『挑戦者決定戦』だと思っています。勝てば、必然的にタイトルマッチは回ってくると思うので、そこをどういう勝ち方をするか。しっかりフィニッシュして、パシオ選手にプレッシャーかけて現地に乗り込むことができるかどうかということを考えています」