2025年3月23日にさいたまスーパーアリーナで開催された『ONE 172』大会後の記者会見において、チャトリ・シットヨートンCEO兼会長が、シュートボクシング協会から抗議を受けていた海人(TEAM F.O.D)について語った「オーバーしたのはたった300グラム」、「彼は怖がって戦わない道を選んだ」等の発言について25日、公式HPで謝罪・撤回した。また、ONEは大会前日の公式計量およびハイドレーションテストの基準等をあらためて説明している。
以下、全文。
「2025年3月23日に開催された『ONE 172: 武尊 VS ロッタン 大会後の記者会見』において、当団体会長兼CEOのチャトリ・シットヨートンが海人選手に関して行った発言について、以下の通り公式に声明いたします。ONE Championshipは全ての選手を尊重し、公正かつ安全な競技環境の提供に全力を尽くしております。
チャトリ・シットヨートン会長兼CEOコメント
「ファンや関係者の皆様と同様に、私はマラット・グリゴリアン選手と海人選手の試合を楽しみにしておりました。グリゴリアン選手は制限時間を過ぎてハイドレーションテストをクリアし、350グラムの体重オーバーとなりました。この時点で、グリゴリアン選手にはファイトマネー総額の20%が没収され、海人選手に渡るというペナルティが課されていました。体重オーバーが1ポンド(約454グラム)未満の場合、世界の主要な格闘技団体における標準的な対応は、キャッチウェイトでの試合を交渉することです。当然ながら、海人選手が試合を辞退されたことに私は残念な気持ちを抱きました。
しかしながら、ONE ChampionshipのCEOとして、このような感情を記者会見の場で表現したことは不適切でした。海人選手の勇気の欠如に関する発言につきまして、心より謝罪し、正式に撤回いたします。海人選手は日本で高く尊敬されているチャンピオンです」
ONE Championshipの医療基準について
ONE Championshipはアスリートの安全性において世界最高水準の基準を持っています。これはF1、NBA、MLB、プレミアリーグなどの世界最大のスポーツ団体と同等のレベルです。実際、ONEは医療プロセスとアスリートの健康管理に、他の99%の格闘技団体がイベント全体にかける費用よりも多くの資金を投じています。
我々の医療プロセスには、以下が含まれます:
・試合前の義務的な身体検査(心電図、血圧、可動域など)
・神経学的検査
・感染症血液検査(HIV、HBsAg、抗HCV、および全血球計算)
・脳MRI/CTスキャン
・眼科検査
・ランダムなパフォーマンス向上薬物検査
・アスリートの過度な脱水を防ぐための水分状態評価
ONEは常勤の医療専門家(医師や医療の専門家を含む)をスタッフとして雇用しています。また、試合に関連した怪我に対する全ての医療費(医学的検査、入院、手術、リハビリテーション、必要に応じた薬など)をアスリートのために負担しています」
採尿には必ずONEコンペティションチームが立ち合う
上記がONE Championshipからリリースされた声明だ。
本誌の取材では、グレゴリンは計量規定時間前の9時30分頃に予備計量に訪れており、その姿をメディアも確認。また、計量規定時間外の13時45分頃に計量会場にガウン姿で現れ、ONE競技スタッフがチェックのもとハイドレーションテストをパス、『155.75lbs』で340g体重超過だったことが本誌含む複数のメディアの前で読み上げられている。その際に日本のドクターは不在であったとされている。
実際には、ONEでは、これまでも計量ミスをした選手を対象に、キャッチウェイト戦の可能性も含め、規定時間外の計量およびハイドレーションテストを行っている。今大会ではスーパーレックや小川健晴も規定時間外に計測を行った。
ONEのルール説明では「割り当てられた3時間の規定時間内にハイドレーションテストおよび計量を通過できない場合、その時間外に尿検体を提出し、その後計量ができる。これ以降、体水分状態が適切な状態で選手と対戦相手の双方の体重差が105%以内であれば、キャッチウェイトの交渉が可能になる」となっており、「キャッチウェイトが合意に至った場合、選手はファイトマネーの一定割合を対戦相手に譲り渡す」と定められている。
今回のグレゴリアンのケースでは、規定時間内に検査規定の検尿量に達せず、規定時間後にONE競技オフィシャルであるコンペティションチームおよび日本の医療従事者が立ち合いのもと、ルールに基づいた形で採尿。
さらに対戦相手の陣営、関係者が立ち合うことが可能な公開された計量場にて、ONEの医療専門家を含むコンペティションチーム立ち合いのもと、計量およびハイドレーションテストを行っている。
今回のケースでは、チャトリCEOが会見での発言を謝罪。一方で、海人陣営が疑問を呈した「ハイドレーションテストには疑念が残る」部分に答える形となっている。