MMA
インタビュー

【UFC】村田夏南子がUFCと契約「私にとっての金メダル、UFC世界王者になりたい」

2020/07/05 05:07
【UFC】村田夏南子がUFCと契約「私にとっての金メダル、UFC世界王者になりたい」

(C)INVICTA FC/RIZIN FF

 日本のRIZINや米国のINVICTA FCで7連勝中の村田夏南子(フリー)のUFC参戦が決定した。現役UFCファイターは、ウェルター級の佐藤天、女子ストロー級の魅津希に続き3人目。村田はUFCで女子ストロー級(-52.2kg)に参戦する。

 中学まで柔道で国際大会で優勝するなど活躍した村田は、高校ではレスリングに転向し、2011年ブカレスト世界ジュニア選手権55kg級で優勝。同年12月の全日本選手権では吉田沙保里に敗れたものの、第一ピリオドにおいて2ポイントを奪うなど健闘。2012年12月の吉田が欠場した全日本選手権では初優勝を果たしている。

 2016年4月の「RIZIN.1」のナタリア・デニソヴァ戦でMMA(総合格闘技)デビューし判定勝ちを収めると、国際戦で4連勝。2016年12月に元UFCファイターの中井りんと57.15kg契約で対戦し、3R リアネイキドチョークで敗れるも、以降7連勝。2019年11月には、米国『INVICTA FC38』でエミリー・ドゥコッティ(米国)に判定勝利し、浜崎朱加に続く日本人で2人目となる同団体の王者に輝き、UFCとの契約を決めた。契約は2020年の3月でこの度、発表した。MMA戦績は11勝1敗。

【訂正】近年、日本人でUFC世界王座に挑戦しているのは、岡見勇信(2011年8月「UFC 134」でミドル級王者アンデウソン・シウバに2R TKO負け)と堀口恭司(2015年4月「UFC 186」でフライ級王者デメトリアス・ジョンソンに5R 腕十字で一本負け)でいずれもあと1歩、世界の頂に立つことは出来ていない。果たして村田は、日本人初のUFC世界王者となれるか。

 本誌のインタビューに村田は「私にとっての金メダルであるUFC世界王者になりたい」と、力強く語った。

UFCとの契約は、RIZINとINVICTAが送り出してくれたおかげ

――村田夏南子選手のUFC参戦がようやく正式発表となりました。デビュー戦の日程は決まっているのでしょうか。

「3月にUFCと契約したのですが、新型コロナウイルスの影響もあり、発表する期を逃してしまい、このタイミングになりました。まだ試合はいつかは決まっていないです」

――3月にUFCとの契約が決まったときは率直にどんな気持ちでしたか。

「2015年の年末にRIZINのリング上で参戦発表の挨拶をしたときに、『ロンダ・ラウジー (元UFC世界女子バンタム級王者)に憧れてレスリングからMMAへ転向した』と話しました。その当時の気持ちから変わりはなく、ずっと思い続けていました。RIZINの榊原(信行)代表に改めてその思いを伝えたところ『夏南子が思い出作りじゃなくて、本当に強い気持ちでチャレンジするのなら全力で応援するよ』と言われ、自分のなかでUFCに出場することが夢じゃなくて、明確な目標に変わりました。INVICTAのシャノン・ナップ代表にも快く送り出していただいたことで、UFCと契約が実現できたことなので、本当にRIZINにも、NVICTAにも感謝の気持ちでいっぱいです」

――米国を練習拠点としていた村田選手が日本に帰ってきたのは?

「日本に帰ってきたのは(2019年の)12月の初めくらいです。年が明けてダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナウイルスの集団感染が発生して、そのときは米国はまだ落ち着いていたのですが、いまはジムがあるカリフォルニアでも人数を制限して、最小限にして練習しているそうなので、日本で練習が出来るようになったのは良かったなと思います」

――ジム練習が再開されるまで、公園の遊具で自主トレーニングに励んでいたとも聞きます。

「はい。公園の遊具を使って懸垂したり、タックルの練習をしたりしていました。でも、その後、公園も立入禁止になってしまったので、一人で様々なメニューに取り組んでいました」

――公園の遊具相手に「タックルを切る練習」もしていたと聞き驚きました。動くのは村田選手の方ですが、遊具からのタックルを切るというのは……。

「フフフ、イメージです(笑)。どんなことも想像して、遊具からのタックルもがぶるようにしたりしていました」

――さすがです。日本の「Me,We」ジムでは再開前も再開後も村田選手が来るときは、朝から夜まで練習していると山崎剛代表から聞きました。

「ジムには家よりもいますね。昼も買ってきたおにぎりとかを30分ほどでバーッと詰め込んで、練習をしています」

――そういった生活を柔道・レスリング時代から続けてきたのですね。さて、今回、UFCとの契約が決まり、周囲の反応はいかがでしたか。

「家族には言いました。3月に契約が決まってすぐじゃなくて、ちょっと経ってから。『あ、そういえば』みたいに(笑)」

――そのさりげなさはなぜ(笑)。

「お母さんとは、そんなに格闘技の話をしたりしないんですよ(笑)」

――お母さまは、INVICTA FCのベルトを獲ったときも米国に応援に来られていたじゃないですか(笑)。サプライズにしたんでしょう? 報告したときの反応は?

「『えーっ! いつ決まったのよ!?』って。さすがに喜んでくれました」

ウェイリーはRIZINで試合をしたかった選手

――そのとぼけた感じが村田選手の強さの秘密かもしれません。米国コンバット・スポーツ・アカデミーのキリアン・フィッツギブンスコーチとはどんな話をしましたか。

「試合が決まったら、米国で8週間ほどのファイトキャンプをやろうと話しています。コロナの影響でまだどうなるか分からない部分もありますが、8週間より短くても合宿出来るなら行ったほうがいいかなと思っています。そのほうが気持ちも締まるし、セコンドに入ってもらえるコーチとコミュニケーションを取れるので」

――UFCを目指し、自身の階級である女子ストロー級の試合はチェックしていましたか。

「UFCの試合……見てましたね」

――いまランキング的には、王者ジャン・ウェイリーを筆頭に、1位ジェシカ・アンドラージ、2位ローズ・ナマユナス、3位タチアナ・スアレス、4位ヨアナ・イェンジェイチック、5位ニーナ・アンサロフ、6位クラウディア・ガデーリャ、7位カーラ・エスパルザ、8位ミシェル・ウォーターソン、9位マリアナ・ロドリゲス、10位ヤン・シャオナンと、アジアから中国の2選手が名を連ねています。ランカーで練習で絡んだことがある選手もいますか?

「以前、サンディエゴのジムに行ったときに、スパーリングはしていないのですが、13位のアンジェラ・ヒルの動きは見たことがあります。でもランカーの選手と直に絡んだことはないです」

――なるほど。2020年3月には、コロナ禍の真っただ中、ラスベガスで開催された「UFC世界女子ストロー級選手権試合」で、ウェイリーとヨアナが5Rにわたる凄まじい試合をしました。あの試合をどのように見ましたか。

「あの頃、中国のウェイリーはアメリカ入りするだけでも大変だったと思いますが、そんななかでもすごい試合をして王座を防衛して。どんな状況でも強い人は強いなと思いました」

――ジャン・ウェイリーとは2018年5月の『RIZIN.10』で一度は対戦が発表されていましたね。ウェイリーが練習中の怪我で欠場となり、村田選手はランチャーナ・グリーンを相手に1R ダースチョークを極めています。あの試合前にウェイリーの実力をどのように考えていましたか。

「あの当時から強いなと思っていました」


(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC

――ウェイリー選手は2016年に日本の「Kunlun Fight」で藤野恵実選手を相手に凄まじいヒジ打ちなど強さを見せていたので、村田選手との試合が楽しみでしたが、欠場し、3カ月後のUFCでデビューを果たしています。見方によっては、村田戦を回避して16連勝のままUFC入りを決めたとも考えられます。

「怪我なので仕方ないですが、あのとき、コーチと作戦を立てて準備をしていたので、試合をやれてたら良かったなとは思いました。ただ、UFCでヨアナ、アンドラージとの試合を見て、強いなとあらためて思いましたし、すべてが出来て、すべき攻撃を取捨選択ができる、すごいチャンピオンだなと思っています」

(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC

――明日(日本時間7月3日)にはINVICTA FCでエミリー・ドゥコッティ(米国)とジュリアナ・リマ(ブラジル)が対戦します。2019年11月に村田選手が判定勝ちしたドゥコッティと元UFCファイターのリマの対戦で、村田選手のUFCでの可能性を感じたいと考えてしまいます。

「試合は相性だと思うので、誰が誰に勝ったとか、そういうのはそんな気にしないですけど、私も試合が楽しみですね(※ドゥコッティがリマに判定勝ち)」

――なるほど。ところで、村田選手は人見知りもしますし、英語が堪能というわけではなくても、米国修業を決めています。あらためてですが、なぜ単身、米国で練習をすることにしたのでしょうか。

「向こうに、ヘンリー・セフード(北京五輪男子フリースタイル55kg級金メダリストでUFC史上7人目の二階級制覇王者)にレスリングを生かした打撃を教えたコーチがいると聞いて、習いたいと思ったのが一番大きいです。言葉が通じないのはもう織り込み済みで、そんなに言葉が通じなくても、格闘技が共通言語なので、練習はなんとか大丈夫です(笑)」

――現段階で女子ストロー級でどのように戦えると考えていますか。

「最初からトップランカーと試合をするわけじゃないと思うので、まずは段階を踏んでいって一つずつ勝ち上がっていきたいです。打撃もレスリングも寝技も、今のままだったら全然駄目駄目なので、全部まんべんなくできるように取り組んでやっています」

――苦手な部分があるようでは勝てない場所だと。しかし、米国でのここ2戦を見ても、打撃での組み立てなど、INVICTAでベルトを獲った進化の手応えはあるのではないですか。

「後から考えたらですが、INVICTAのチャンピオンシップで5分5ラウンドを戦って競り勝てたことは大きな経験だと思っています。それはそれで自信にしたいですね」

――激戦区であるUFC女子ストロー級で戦う覚悟はできていると。

「覚悟というか、上に上がっていくためには、ああいった死闘を繰り広げている選手たちと絶対にやらなきゃいけないので、やるしかないなと思います」

私がUFCを日本に連れてきたい

――できればいつくらいにUFCの初戦を迎えたいですか。

「9月ですね。初めは8月の初めにみたいな話しがあったんですけど、その時点で2カ月を切っていて。米国はまだ本格的な再開はしていない状況でした。今すぐ米国へ行っても、たぶん日本ほどは練習は出来ないと思いますので、米国で合宿を張る日数も考え、9月以降に試合が出来たら、と考えています」

――最近は海外国籍の選手でもラスベガスに住み込んで試合に備える選手も増えているようです。マネージメントを担当するシュウ・ヒラタさんは魅津希選手との練習も考えているようですね。

「そう聞きました。米国の感染状況もあるのでどうなるか分かりませんが、ぜひ練習できたらと思います」

――いまはフロリダからラスベガス、そしてアブダビの「ファイトアイランド」で大会が開催されますが、UFCで試合をするならどの大会を希望しますか。

「……日本がいいですね。マネル・ケイプ選手も言っていましたが、自分がUFCを日本に連れてきたいです」

――おおっ、いまは状況が厳しいですが、もし日本で村田選手の試合を観られたら、吉田沙保里さんらレスリング仲間たちも観に来れますね。

「はい!」

――当初は2020年に東京オリンピックが開催される予定でした。レスリングからMMAに転向した村田選手にとって、2020年までに世界最高峰の舞台であるUFC参戦を果たしたい、という考えもありましたか。

「最初言っていたのは、東京オリンピックのときにチャンピオンベルトを巻いている、ということでした。INVICTAではベルトを巻きましたが、(UFCのベルトを巻く目標は)だいぶ遅れてるんですけど」

――東京オリンピックが2021年になったことを考えると、まだ1年あります。

「そうですね、頑張ります!」

――最後にRIZINでの試合を応援していた日本のファンにメッセージをお願いします。

「まだ目標を達成したわけじゃないですけど、みなさんの応援があっての自分で、やっとスタートラインに立つことが出来ました。『(UFCでも)応援してください、とは言いません』とは思うんですけど、やっぱり、これからもみんなの応援がないと……私は応援してくれる人がいるとすごく頑張れます。応援してくれる人あっての自分だと思うので、これからも応援よろしくお願いします!」

――オクタゴンで、まだUFCの日本人世界チャンピオンは生まれていません。ぜひ日本のRIZIN出身の世界王者になってください。

「なりたいですね、チャンピオン。私にとっての金メダルです。頑張ります!」

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