【写真提供】北岡悟
北岡悟が2020年7月31日(金)、自身が主宰するパンクラスイズム横浜にて、無観客の自主興行『iSMOS.1』(イズモスワン)を開催する。
新型コロナウイルスの影響で大会がことごとく自粛・延期が続くなか、同大会では、北岡自ら復帰戦に臨み、現ZSTライト級王者の小金翔と対戦するほか、同ジム所属の元PANCRASE3階級王者・近藤有己の試合など全4試合が行われる。
試合の模様は7月31日20時から、ニコニコ生放送(ニコニコプロレスチャンネル)で生中継が予定されており、クラウドファンディングサービス「Makuake」にて同大会のサポートも募集し、開催資金に充てている。
『iSMOS.1』の「1」は第1回大会を示すナンバリングだ。継続開催も視野に入れる北岡は、なぜ自主興行に踏み切ったのか。そして自身のキャリアを縮めるかもしれない相手をどのように選択したのか。話を聞いた。
存在を否定されているような思いをしている人はいる
――まずは、北岡選手自身が主宰しているパンクラスイズム横浜の道場で、自主興行を行おうと思ったきっかけから教えてください。
「きっかけは、ABEMAの『Road to ONE:2nd』を見て、ですね」
――あの大会は4月17日の開催でしたから、東京(を含む7都府県)を対象に出された「緊急事態宣言」の発令が4月7日だったことを考えると、かなりナーバスな時期だったと思います。
「そうですね。本当にあの時期にやったのはすごいと思いますね」
――あのときはネットで試合をご覧になったのですか?
(C)Road to ONE Executive Committee/ABEMA
「ジムで、ABEMAの中継で見てたんですけど、『ここ(パンクラスイズム横浜)でやれる』と思ったんですよね。結局、大会を開催するとなると場所の問題が出てくる。貸してくれなかったり、クラスターが起きたら消毒にお金がかかることを危惧されたり……でも、別に、普段ジムで練習しているのと、無観客で試合をするのはそんなに変わらないんじゃないかと思うんです。リスクとして考えたら同じじゃないかと。無観客だったら来る人も不特定多数じゃない。でも、そう思えたのもあのABEMAの『Road to ONE:2nd』があったからですね。ABEMAで北野(雄司プロデューサー)さんが実際にやったから、“ここで出来る”と思いついたことだから、その案が浮かんだときには相談しました」
――本質的には、いつもやっていることと変わらないと。実際には、緊急事態宣言入りした4月7日より前に感染はピークアウトしていたのでは、という報道もありますが、いくつかのジムと同じように、パンクラスイズム横浜は過度な“自粛”はせずに、各々が注意してプロ練はもちろん一般開館も続けていましたね。ジムを開けたのは練習をしたい人、する必要がある選手がいるから、だったのでしょうか。
「そうですね。来たい人が確実にいたから、何も変えませんでした。もちろん、その人の周辺で疑わしいことがあったら、それぞれが日にちを置いたりもしていましたし……」
――互いに注意すべきことを注意してやっていたという感じだったんですね。
「まあ、別にそれって、格闘技選手をやる限り、普段の生活も含め、体調を崩さないように管理するってこととあまり変わらないと思うんです。家族のつながりが深い環境にいる人は、それを優先すればいいし、ウチのジムの場合は、今大会に出てくれる選手──近藤(有己)さんだったりも変わらず練習を続けていた。そういう同じ志みたいなものを持つ人がいるから、ジムは続けていましたね」
――経済を二の次にしても命を落とす者は出てきますし、結局は当事者はその場で命と経済のバランスを取らざるを得ない。経済だけでなく、それを生業として、格闘技に向き合っている人にとっては、練習や試合が出来ないというのは死活問題で、生きがいを奪われるようなものだとも感じていました。
「それは、僕らだけじゃなくて、存在を否定されているような思いをしている人はたくさんいるんじゃないでしょうか。イベントがあるかどうかさえ分からない。イベントがあったとしても、声がかかるかどうか分からない。僕自身は、今この戦績や状況で、仮にRIZINのイベントがあっても、優先的に試合を組んでもらえる立場ではないから。そういう中でいい取組みをして、いいコンディションを作ることは難しいですよね、正直」
――ほんとうに戦う人にとって、成すべき仕事や目標がないなかでそれでも作っていかないといけないのは厳しいことだと。
「大会も試合のオファーも、対戦相手だってギリギリにならないと分からないでしょうし」
――そういう中で、『Road to ONE:2nd』があって、自分たちでやる、という選択肢が出てきたのですね。
「そうですね。あの大会をどこでやったかは表に出せないですけど、ウチでやったほうが画的にもバエるんじゃないかなと思いました。赤色のケージがあって、ここでライティングしてとか」
――そこまで考えていたんですね。
「はい。そういったことを考えないと、イベントをやろうとは思わないですよね。入場の花道の代わりに何をどうするかとか。ABEMAの試合中継を見て、数日間はそういうことばっかり考えちゃいました」
松嶋こよみとSARAMIのサポートには瑕疵がある
――自主興行をやるにあたって、関係のある団体に相談したそうですね。試合の日程などを確認されたのでしょうか。
「自分はこういうふうに思っていると。まずはパンクラスの坂本靖さんに相談したら、『MMAをやるんですよね』と聞かれて『それは引きはあるでしょう』と言ってもらえて、もちろんDEEPの佐伯(繁)さん、RIZINの笹原(圭一)さんにも相談をして……。試合が決まらない間、周囲からどこどこで試合するのはどう? と言われたりもしたんですけど、普通に考えて、僕の今までの関係性から、ちょっと出るわけにはいかないなというのはあって。別にパンクラス、DEEP、RIZINの関係者から、何も悪いことはされていないんですよね」
――先方からは、まだしばらく組めないという状況だったんですね。
「そうですね。まあ、待てば……パンクラスに関しては、(試合について)話したりはしてたんですけど、結局うちの子たちが試合がある中で、特に松岡(嵩志)と松本(光史)さんの試合を放っておいて、自分が試合するというわけにはいかないなというのがあって。松岡は松本さんとやるということにこだわって頑張っていたし、松本さんも、わざわざメッセンジャーで挨拶を送ってくれて、『ロータス(世田谷)に本当は(練習に)行きたいんだけど控えます』と言ってくれて、『勝負ですね』と言って、気持ち良くやりとりできていて。その試合は大事にしてあげたいというなか、ようやく8月か9月には決まると(※4カ月の延期を経て8月23日に決定)。
DEEPにもこの話はして、結局DEEP側から『お前の試合を組むから』という話は出ていなくて、僕から頼めばもしかしたら組んでもらえるかもしれないけれど……。RIZINに関しては、年末も一瞬は名前は挙げてもらったらしいし、年末無ければ2月と言われてたんですけど、『2月は松嶋(こよみ)の試合(※ONEジャカルタ大会でキム・ジェウンに3R TKO勝ち)があるから』と断っていました。じゃあ4月か5月で、みたいな話をしてたけど、4月はSARAMIのONEウォーリアーシリーズ(WS)があるから、と。SARAMIの試合も無くなった瞬間に、『俺、試合できます』というやりとりはしてたんですが、こういうこと(大会中止)になったから」
――北岡選手の動きは、パンクラスイズム横浜の所属選手の試合と切り離せない形になっていますね。
「そういうことですね。まあ……いろいろ思うところはあるというか。僕はやっぱり自分を頼ってくれるものに対して──僕も100点満点の人間にはほど遠い人ですが──僕のできることはしてあげたいと思っていて。昨年のジョニー・ケース戦と松嶋のONEのタイトル戦が並んで(7月28日にRIZIN、8月2日にONE)、僕はああいう負け方をして、翌日にマニラに飛ぶはずだったのが行けなくて。松嶋の一番大事な試合、ONEにおける一番大事な試合(フェザー級王者マーティン・ニューイェンに挑戦)を、納得いくサポートが出来なかったというのがあって(※北岡は頭部検査後、7月31日には現地入りを果たしている)。せめて自分が勝ったならともかく、自分も負けて(予定が変わるのは)ちょっとないなと。瑕疵があったという思いがあるから、だからこそ2月(松嶋のセコンド)は譲れなかった。その部分で言えば、SARAMIの10月の試合(ONE WSでキム・ソユルに判定負け)も、自分としては納得がいかないサポートをしてしまったと思っています」
――納得するというのは難しいものですね……。
「SARAMIにも瑕疵があると思ってたから、自分の試合を抑えてでも、4月はサポートをするつもりだったんです」
真っ先に思い浮かんだのは近藤さん。小金選手は大きな意味で後輩
――その関わり方が北岡選手のパンクラスイズム横浜の代表としてのやり方というのは分かるのですが、身体と時間には限りがあります。そんな中で、各大会がどんどん延期・中止となり、ご自身の試合も先が見えなくなった。じゃあ自分のジムでやる、というのもありなのかと考えたわけですね。
「そうですね。4月の『Road to ONE:2nd』が終わった瞬間に、6月か7月だなって。ジョニー・ケース戦が7月だったから、(前戦から1年の)7月がデッドラインだなと。“7月までには俺は試合をするんだ”と決めたんです。ほかの選手の日程も考えたら、これがハマった」
――そのときに、ご自身の試合とともに所属選手で試合が組めるかも、と考えたのが、このコロナ禍も一緒に練習してきた近藤有己選手の試合だったのでしょうか。
「そうですね。自分のワンマッチみたいなイベントをしてもいいかとは思ったんですけど……昔、ism興行みたいな形があったじゃないですか。これだけ仲間がいて、毎日会う選手がいて。特に近藤さんは真っ先に浮かびました。近藤さんに、『もし僕がここで無観客大会をやったらどう思いますか?』というようなことを言ったら、『それはぜひ、試合を』と言ってくれたんです。僕と近藤さん(vs.餅瓶太)がMMAの試合をやるって、最低限のラインには達しているかなと思うんですよ」
――「最低限」どころか、北岡選手と近藤選手が試合をする、しかもパンクラスイズム横浜興行で、というのはメジャー団体での試合とはまた違った意味合いを感じることができます。しかも、ふたを開けてみれば、対戦相手が現ZST王者の小金翔選手だった。小金選手とは練習したことがありますよね?
「練習、バリバリしたことあります。後輩みたいなものだと思います、大きな意味では」
――ご自身のマッチメイクって難しいと思うんです。どんな経緯で小金選手に決めたのでしょうか。
「難しかったですね。でも、小金選手は本当にパッと最初に浮かんだ一人ですね。ベルトを持ってるチャンピオン──。小金選手に決まる前に、今大会をアシストしてくれている関係者から『話題になる』と言ってもらった2選手にオファーはしたんですけど、駄目だった。あらためて坂本(靖)さんと話してたら『北岡悟に勝てると思っている若い選手とやるのがいいんじゃないか』と。だったら、最初に浮かんだ小金選手がいいなと。今大会の本部席でイベント進行もしていただく木下(雄一)さんが小金選手のマネジャーをされていて、『僕の対戦相手としてどう思われますか?』と聞いたら『良いと思います、面白いと思います』と言ってくれたんです。それで、本人はやる気だと。ZSTにも確認して了承いただき、柳(武見)社長からもありがたい言葉をDMでいただきました」
――2019年11月にZSTの合同練習会があって、「他団体にも出て、強い選手と戦って評価を上げたい」と語っていたのが印象的でした。180cmと長身で四つが強い。久しく負けた試合を見ていないです。
「8連勝中ですからね。僕は直近2勝6敗ですから。すごく厳しい戦いですね」
――最後に小金選手と練習してからは時間が経ちますか?
「いや、年始の練習に来てくれましたね。彼は練習より試合のほうが絶対強い」
練習ありがとうございました!
— 小金翔 Sho Kogane (@shokogane) June 5, 2020
みんなに協力して貰えてます。
改めて大事な試合だなと感じました。 pic.twitter.com/kOG80Q5Gef
――小金選手はGENでの練習に加え、タイガームエタイにも出稽古(2月)して、今年期するものがあるのだと思います(6月1日に「自分の中では集大成な試合。オファー頂いた時はびっくりしましたが、今闘わなかったら一生出来ないかもしれない。全力で挑みます」とツイート)。そういった厳しい相手と「ジム興行」という言い方もできるような大会で戦うというのは“らしさ”を感じます。
「ジム興行……それこそ『BRAVE FIGHT』のような大会ですけど、でも、こんなiSMOS(イズモス)という名前をわざわざつけてやるんだから、単なるジム興行じゃないぞということなんですけど」
――リリースによれば「パンクラスイズム横浜」の前身が『パンクラスism』で、その「ism」の語源であるギリシア語が『ISMOS』だと。iが小文字なのは系譜を正当に受け継ぐ証とのことでした。そこに北岡悟だけでなく、近藤有己という名前が並ぶと趣深いです。さて、北岡選手にとっては約1年ぶりの試合。RIZINでのジョニー・ケースとの試合は、北岡選手の中ではどのように総括しているのですか。
「ジョニー・ケースとの試合……それだけでもう話が埋まっちゃうくらい」
ケース戦での悔い、絶望を感じるくらい真剣に取り組んできた
――ジョニー・ケースとの試合後、担架で運ばれた北岡選手は病院に搬送され、CT検査を受けて異常は無かったものの、試合については喋っていないですよね。
「全然、喋ってない」
――あの試合だけを切り取ってみる話ではないのかもしれませんが、矢地祐介選手を2R TKO、サトシ選手を1R TKOに下したジョニー・ケースが強豪だったことは間違いないと思います。
「いや、僕が駄目だったなと思っていますね、あの試合は。すごいいろんな意味で」
――駄目だった。それはご自身の中で改善の余地がある駄目な部分なのでしょうか。
「そう思っています。そう思わなきゃ、もうやらないほうがいいですよね」
――それを踏まえたうえで、ここまでの練習でもう一度、作り直してきた。と
「それを踏まえたこの10カ月だったと思うし、まあ別に、ずっとそんないい気持ちでやってない。苦労とか労苦は自慢する話じゃないですし、改めて言う必要はないと思うし。丁寧に……技術的に丁寧にという部分でいうと……簡単に言うと、やっぱりいろいろな意味で諦めちゃったことが、すごい後悔ですよね」
――試合中にですか?
「そうですね。あまりそれも種明かしを何でもかんでもしたくないんですよね、試合に関して」
――……。
「僕の中ではそう思っているけど、それを改めて、まだ次の試合で勝ち星という結果を出さない段階でしたくないんですよね、種明かしを」
――では、ひとつだけ確認をさせてください。ケース戦はハーフガードから足関節などのトライを幾度も仕掛けながらダメージを負い、1R終了後にセコンドからのタオル投入でTKOとなりました。北岡選手が「すごい後悔」「諦めた」というのは珍しいことです。丁寧さに欠けたとしたら、それは、気持ちが折れたという類のものではないですよね?
「気持ちが折れた、に等しいんじゃないでしょうか」
――では、それを諦めなくてもいい形に、もう1回積み上げるしかない?
「簡単に言うとそうです。諦めたことがないなんて言ったら嘘になる。それは逆に、絶望を感じるくらい真剣に取り組んできたというのが、自負でもあります」
――克服すべき課題を持ちながら、コロナが同時に来てしまい、試合が流れて行った。そういう状況で気持ちが揺らぐことはなかったですか?
「揺るがなかったです。それは大丈夫だった。なぜか……まあ、そういう人たちが、結局周りには多いからかもしれない。ロータスやTRIBEに出稽古に行けば、青木(真也)がいるし、僕らに引っ張られるように八隅(孝平)さんもいる。あと何人か確実に来る子たちが──岩本(健汰)さんだったり、上久保(周哉)くんだったりがいる。ジムに行けば近藤さんが絶対来ていて、大谷啓元が必ずいる。逆になんで揺らぐの? という。揺らぐほうが解せない」
――最初に語っていただいた通り、ほかの物事と同じようにコロナにもリスクがある。注意すべきことや自己申告もありながら、接触する競技ですから考えることはあったでしょうけど。
「まさに一蓮托生ですよ。青木がABEMAで言ってくれてましたけど、僕も練習で(感染しても)別に恨んだりしないです。それより発症しないように体調管理しろよという話ですよね」
――きっちり対策すべきことも含め、北岡選手は早くから「コロナは慣れだ」と言っていましたし、北岡選手が感染症について意識が薄いとは思えないんです。コロナのずっと前から、密の場所では必ずマスクをしていましたよね。体調管理の部分でも……。
「はい。だから、僕じゃないところで不可抗力で起きる恐怖みたいなのはないわけないですよね」
――そして、銭湯やサウナが休みになった。
「疲れが取れない。真面目なところ、本当に整体も閉まってという期間があったので、けっこう練習の量配分とかも考えましたけど、絶対、ずっとこの休業状態が続くわけじゃない、というのは思っていたから、それこそ我慢のときだと思って、練習をちゃんと選んで、一部練とかにするようにしてましたね。ブッ壊れたら意味ないから、そういう失敗もこの数年でしてきたから、そうして学んだものを逆に生かす機会でした」
――試合が決まらない中、練習内容で変えたこともあったのでしょうか。
「細かい技術でこれをやるようにしてる、とかはあるけれど、基本的には変わらない。量配分的に、例えばトレーニングの量を抑えたりとかはあるけれど、むしろ、このトレーニングは俺にとって大事なんだということでリクエストしたり。そのためのスケジューリングを大事にしています。それも、結局、1回コロナで抑えざるを得なくて……今はまた整体とかも受けることが出来て、身体のケア、メンテナンスも出来るようになってきているから、徐々に“7月31日仕様”に変えています。この数週間はそのスケジューリングが一応、ハマっている。大会発表から7週間、頑張る感じですね、ここから」
――ようやく本当に試合が決まってとなったら、いつものルーチンに戻ってくる。
「いや、怖いですけどね、まだ予定だから。ニコニコ(生放送)も上手くいくか心配ですし、世の中的にどうしようもなくて出来なくなるとか危険性はあるので。ただ、いざとなったら俺はとにかくやるぞと」
この世界にいる二十数年の繋がりが形になった
――そういった中で、青コーナーにはパンクラスイズム横浜所属の4選手が並ぶことになりました。木村裕斗選手はゼロ戦クラブの友實竜也選手と対戦します。木村選手はPANCRASEとDEEPのアマチュア二冠。友實選手はDEEPジム時代の北岡選手の後輩でもありますね。
「ほんとうに今の僕の後輩とかつての後輩が戦うという。友實選手は7連勝中なんですよね。間違いなく僕のエキスが入っています。もちろん木村にも。2人とも格闘技をやっていく上で僕の考えが入っている。木村にとっては、デビュー戦としては厳しい相手かもしれないし、どこで怪我をするか分からないくらい追い込むでしょうから、このまま試合が無事に行われるかどうかも分からないですけど、自信は持っています、この試合に」
――矢澤諒選手は北岡選手とのYouTubeで有名です(笑)。そこに大井洋一選手が相手として出てくるのも味があります。
「矢澤に『誰とやりたい?』と聞いたら『大井さん』と。矢澤はDEEPのフィーチャーキングの1回戦で優勝した選手(CAVEの原虎徹)といい試合をしていて、その時に大井さんが出るかもという話があったんです。それで試合をしたいと。大井さんにも『ありがとうございます』としか言えないです」
――北岡人脈の試合が揃ったわけですね。
「そうです。ありがとうございます」
――コピーに「生きる、戦う、そして勝つ」という、その一つも疎かにしない北岡選手のイズムも表れていると思います。
「ずっと僕を見てきてくれている人には響くものが用意できると思うし。それをやりたいですね……先ほども言いましたが、この数カ月は仲間がいて揺るがなかった。だからこそ試合をしたいと思っていました。別に仲間がいたって、いざケージに入ったときは自分で一人で戦うんだけど、一緒に戦いを形作ってくれるという。そういう繋がりがあって、イベントが行える。この世界にいる二十数年の繋がりが形になって、こんなふうになるとは……今回のリリースの英訳も出してもらって、『Sherdog』や『MMA TAPOLOGY』などのデータサイトに結果が載るようにしたいと動いています」
――ジム興行ではあるけど、公式戦として1勝として、1敗としてカウントされる大会にすると。
「そうです。大会を思い浮かべた時点でしたかったことの一つです」
――あらためてファンに向けて、どんな大会を見せたいと思っていますか?
「イベントを“2時間番組”にするつもりなんですけど、2時間でギュッとしたものを作ります。それをお金を払って見てください。月額の550円で視聴が可能(解説は水垣偉弥)です。そしてクラウドファンディングでスポンサーを募っています。ケージウォールとかマット、バックパネルの広告枠がまだ空いてしまっているので、ぜひご協力をお願いします!」
――営業担当はいないんですか?
「営業担当はいないです。僕が営業をするしかないです。でもそんな無理なく、“練習基本”で生きてます、変わらずに」
――では、再開した整体や銭湯でしっかりメンテナンスもしてください! 大会を楽しみにしています。