上から抑え込み、パウンドを打っていくコールマン。1Rはほぼこの体勢が続いた
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。31回目は2000年5月1日、東京ドームで行われた『PRIDE GRANDPRIX 2000 決勝戦』より、マーク・コールマン(アメリカ)vsイゴール・ボブチャンチン(ウクライナ)のトーナメント決勝戦。
トーナメント準々決勝で桜庭和志vsホイス・グレイシーの90分間にわたる死闘があったこともあり、決勝戦開始のゴングが鳴ったのは午後10時50分だった。
初戦でグッドリッジと、準決勝で桜庭と激闘を繰り広げたボブチャンチンはさすがに疲労の色を隠せない。もう一方から上がってきたコールマンは初戦で小路晃と15分フルに戦ったものの、準決勝の藤田和之戦は2秒で終わり、余力は十分。
コールマンはプレッシャーをかけてボブチャンチンをロープ際に追い込むと猛然とタックル。ロープに押し付けるとその反動を利用してテイクダウンに成功する。ボブチャンチンのガードには腰を浮かし、上から抑えつけるとパウンドの雨を降らせる。ボブチャンチンが下からパンチを打ったり、、ヒザやヒジを差し入れて隙間を作ろうとしたりしても、上から力で潰してはパウンドを打ち込んでいく。延々とそれが繰り返された。
15分が経過(決勝は20分無制限ラウンド)した頃、コールマンがボブチャンチンの右腕をアームロックで極めにかかった。しばらく耐えたボブチャンチンが腕を引き抜くが、コールマンは平然と上から抑え付け、再びのパウンド。ボブチャンチンはほとんど何もできないまま最初の20分を終えた。
判定があればこのラウンドでコールマンの勝利になっていただろう。だが、決勝はホイスのごり押しで通った完全決着ルール。試合は2Rに突入した。
コールマンはボブチャンチンをコーナーに追い詰めてタックルし、コーナーに叩きつけた反動でテイクダウン。足を担ぐようにパスガードするとサイドポジションから上四方に移行し、足を大きく振り上げてのヒザ蹴りをボブチャンチンの頭に叩きつけた。
仰向けの状態のボブチャンチンにヒザが叩き込まれ、ボブチャンチンはたまらずタップ。勝利が決まるとコールマンはその場で飛び上がり、リング下まで降りて狂喜した。午後11時15分、PRIDE GRANDPRIX 2000は終了。過酷なトーナメントを制したのは古豪コールマンだった。
試合後、コールマンは「ボブチャンチンは打撃が強く、肉体的にも強い。だからあんなに早く終わるとは思わなかった。彼がタップアウトしてくれて幸運だった。今頃でもまだ戦っているんじゃないかと思っていたくらいだから。でも、観客が皆帰ってもまだ戦っていられるくらいの厳しいトレーニングを積んできたんだ」と、まだ戦えると胸を張った。
そして「本当に長い道程だったが、私はここまで来られると信じていた。特に、妻には感謝したい。彼女が子供の世話をしてくれるので私が一日中、トレーニングに打ち込めたんです」と家族への感謝を口にし、声を詰まらせた。