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【RIZIN】朝倉未来とダニエル・サラスの告白「憎しみを持って戦っているわけじゃない。ノビてた相手を殴る必要はなかった」

2020/02/26 13:02
2020年2月22日(土)静岡・浜松アリーナで開催された『RIZIN.21』のメインイベントで、朝倉未来(トライフォース赤坂)とダニエル・サラス(メキシコ)が68.0kg契約で対戦。2R2分34秒、未来が左ハイキックからのパウンドでKO勝ちした。 試合後、両者はインタビューに応じ、互いの強さを語った。また、未来は試合翌日にもYouTubeで初ライブ配信を行い、試合の機微を振り返っている。 試合後、サラスが「1Rすげえエンジョイしてた」と語った通り、序盤のサラスは海外選手特有の長いリーチから、得意のメキシカンボクシングで朝倉と渡り合った。 未来はサラスについて、「YouTubeには上がっていない動画があって、直近の試合が去年の10月でそれを見る限り、かなり強い選手だなと思っていた。ネットでは“かませ”と言われていたけど、YouTubeに上がっている5年前の動画だったら、俺だってアウトサイダーの頃だし、(いまの自分の)相手にならないように見えるけど、俺は油断せずに準備をしていた」と実力者と評価していたことを明かす。 また、「実際、試合をしたら思った以上にトリッキーで、(ルイス)グスタボと手の長さが似ていた。届かないだろ? というパンチが届いて焦った。打たれ強さとボクシングテクニックがあった」という。 当初、未来はもともと右利きのオーソドックス構えでの戦いを考えていたが、「右で行くつもりが対面したときに違うなと。思った以上にアゴを引いていて右のパンチだと頭に当たるなって。4月も出ないといけないのにこれ(右)で殴ったら拳を痛めるし倒せそうになかった。対面した感じで左の方がアゴを狙える」と感じ、サウスポー構えを選択。さらに、中盤から左のパンチと蹴りを上下に散らしてかく乱した。 サラスのボクシングを警戒し、「戦いのなかでは出来るだけリスクを減らしたいから、途中から蹴り主体に作戦を変更した」未来は、「右ストレートを打つ時に(サラスの)頭が下がるからヒザ蹴りを合わせようとかアッパーを入れようと考えていたけど、あんなにボクシングテクニックあるとは思ってなかった。それにもっと組み技に来るかと思っていて、そう来たら俺はテイクダウンデフェンスは強いから相手のスタミナを削れると思ったけど、それがなかったからびっくりした」とサラスの戦いに驚きがあったことを語っている。 1R後半にはサウスポー構えの未来の左ストレートでサラスが右目尻周辺をカット。サラスは「パンチだったと思う。ブンっって、かすめるような感じで切れた。すごく強いパンチの数々と、特にカウンターが速くてすごくクリアだった。ミクルは速くて強いめっちゃくちゃいいカウンターを持ってる」と、あらためて未来のカウンターの精度を称えている。 そのカウンターについて未来は、「相手が拳を出したときに、考えて出していない。カウンターは頭にパターン化されているから、右ストレートのときはこのカウンターというのが何パターンかあって、それを肩の動きとか顔の表情を見て、“次、右ストレートが来るな”と思ったら用意している」と語る。 さらにそのコツについて「試合でノーモーションは出来ない。絶対に力む。ちょっと肩が力んだ瞬間に目線が下を向いていたらボディを狙っているだろうし、上級レベルになるとあえて下向きながら上を狙ったり、それが俺が使った下を向きながらのハイキック」と、カウンターとともに、フェイントのかけあいのなかで今回のフィニッシュも導き出されたことを明かしている。 未来もサラスもストリートファイトで拳を磨いてきた。満たされない思いと、貧困からの脱却。未来の打撃をまともに受けながら向かってきたサラスについて、未来は、「KO負けも1回しかないし、絶対倒れない、という気持ちの面が強かった」とサラスのハートの強さを語っている。サラスも未来と対し、そのメンタルの強さを感じたという。 「ミクルのメンタルはすごく強いと思う。ファイターになるためにはメンタルっていうのがすごく必要なもので、歴史を振り返っても世界の優れた選手たちで裕福な出自の選手というのはなかなかいなくて……俺みたいに貧困な社会から這い出してきた人間が多いと思う。スポンサーもいなくて身ひとつで、しかもメキシコは他の国と比べたら全然違う状況というか、政治家は俺たちみたいなのを他の国がそうするように助けてはくれなくて、それがつらいことなんだけど、だから自分は“リングで戦う戦士”のメンタリティを持つに至ったんだ。もちろん、彼のメンタルはすごく強い。彼のことをよく知らなかったけど、試合後には友情が生まれるというか、とてもメンタル的に、いい人だと思う、大いにリスペクトしてるよ」と、自らの出自を振り返りながら、互いにストリート出身のファイターとして、敬意を感じたことを語った。 試合後にはサラスが未来の控室を訪問。エールを交わした。 未来は「試合が終わった後に挨拶に来てくれて。足をひきずっていたね。(サラスは)顔面の防御はすごいけどボディが開いてたから。ローとボディを効かせれば顔面に打撃も入る。そこが弱点だった。あれは試合の途中で作戦を立てた」と上下に散らして、フィニッシュを狙ったという。 左ミドル、さらに左ハイと高さを変えてサラスからダウンを奪った未来。最後の中腰でのパウンドは、サラスの頭が後方に飛んだところで、レフェリーより先に未来が拳を止めた。 「完全にノビてたから、1発で。ノビてた相手をもう1発殴る必要はないでしょう。別に憎しみを持って戦っているわけじゃないんで。そこはスポーツマンシップじゃないけど、俺の方がレフェリーより近かったから、俺の方が先に(ノビているのに)気づいたから、先に止めた」と未来は最後の瞬間を振り返る。 [nextpage] 未来「たしかにクソガキなんで。俺に引退を賭けてもいいの?」 試合後には、リング上で「初めての浜松大会、結構、相手強かったんでKO出来て良かったです。ちょっと今日、怪我も無いんで4月(19日)も出ようかな。みなさん横浜アリーナで会いましょう」と、連続参戦を宣言。 そこにリングサイドで試合を見ていたKRAZY BEEの朴光哲がリングインし、「いま朝倉選手、横浜でやると言ったんですけど、誰の挑戦でも受けるっていうんで自分、立候補してもいいでしょうか。どうでしょうか」と未来に対戦を要求している。 さらに朴は「ぜひ、やらせてもらいたい。まあ未来選手とは同じジムの矢地(祐介)君も負けているし、KRAZY BEEとも因縁もあるし……でもそれも過ぎたことだし、矢地もよろしくやってるんで(笑)、純粋にいちファイターとして、いま一番勢いがあり稼いでいる未来選手と、ファイターとしての進退を賭けて戦いたい。負けたら辞めます」と引退を賭けての対戦を、リング上で榊原信行CEOに認めさせている。 4月、横浜大会で対戦することになった元修斗環太平洋ライト級王者&元ONE FC世界ライト級王者の朴について未来は、「たしかにあの人からしたら“クソガキ”なんでね。ただ、よく知らないんだよね、ぶっちゃけ。42歳? もっとめちゃめちゃ強い他団体のチャンピオンとやる方が気が楽だわ。ああいう『引退を賭けて』なんて言われても、その人にそんな思い入れがあるわけじゃないから、俺に賭けてもいいの? って感じ。俺にとってはリスクしかない。ほんとうに気は乗らないですね」と、やりにくい相手であることを語っている。 「THE OUTSIDER」王者から「ROAD FC」「DEEP」を経て、2018年8月からRIZINに参戦。ここまで日沖発、カルシャガ・ダウトベック、リオン武、ルイス・グスタボ、矢地祐介、ジョン・マカパ、そしてダニエル・サラスに勝利してきた。 「RIZINに出て1年半くらいで7戦全勝(MMA8連勝中)。奇跡的に連勝できたけど、4月は花粉がひどいから」と苦笑した未来。9週間後の連戦でベテランの試合巧者を下すことが出来るか。 「試合では勝ちたいんだけど“負け無し”でいたいというよりは格闘技を広めたいって気持ちの方が強い。格闘家のことをみんなめちゃくちゃ尊敬しているんだけど、なんか日本以外で格闘家はすごくリスペクトされているんだけど、日本において格闘家って、そんなに知名度が無いし、そんなに尊敬される存在じゃないのかなって。たとえばラグビーとかでは優勝すればニュースに取り上げられる。でも俺たちの試合が翌日に(テレビで)ニュースに流れることはない。そのへんでもすごく違うし、自分たちでも発信して格闘技のことをもっと広めたい。自分がやっている総合格闘技ってものがだんだん認知されてきて、もっと注目されるように。叶う? 間違いなく叶うと思う」と笑顔を見せた未来。その“未来”は、自身の手で照らしていく。 [nextpage] ダニエル・サラス「俺みたいに貧困な社会から這い出してきたファイターは多い」 ──朝倉未来選手との試合を終えた率直な感想からお願いします。 「うーん、気分はすごくいいし、すごくハッピーだよ。ここRIZINに来ることがずっと夢だったからそれを実現して、自分が望んでいることは良い試合をするっていうことで、それができてハッピーという気持ちはあるんだ」 ──朝倉未来選手の印象は? 「うん、アサクラはすごく強くて、この階級のトップファイターだと思う。動きも速くてクリーンなボクシングができると思った。俺はそういう対戦相手とベストを尽くして自分なりに良い試合をできたから、すごく幸せだよ」 ──同じストリートファイターとして朝倉選手に特別なメンタルを感じましたか。 「ああ、うん、彼のメンタルはすごく強いと思うし、ファイターになるためにはメンタルっていうのがすごく必要なもので、歴史を振り返っても世界の優れた選手たちで裕福な出自の選手というのはなかなかいなくて……俺みたいに貧困な社会から這い出してきた人間が多いと思う。スポンサーもいなくて身ひとつで、しかもメキシコは他の国と比べたら全然違う状況というか、政治家は俺たちみたいなのを他の国がそうするように助けてはくれなくて、それがつらいことなんだけど、だから自分は“リングで戦う戦士”のメンタリティを持つに至ったんだ。もちろん、彼のメンタルはすごく強い。彼のことをよく知らなかったけど、試合後には友情が生まれるというか、とてもメンタル的に、いい人だと思う、大いにリスペクトしてるよ」 ──今後の展望は? 「俺は格闘技というこの競技を愛しているから、もちろん格闘技を続けていきたい。格闘技は俺の人生そのもので、格闘技無しでは生きていけないんだ。だから選手生命が終わってからも格闘技には関わっていくつもりだし、現役としては、おれは今31歳。まだ3、4年もうちょっとくらいは選手としてやっていけると思うから、世界の戦場で戦い続けたいし、もし可能なら、RIZINにもまた出場したい」 ──右目の負傷は左ハイキックなのかどんな攻撃で負傷したのでしょうか。朝倉未来の攻撃で一番効いた攻撃は? 「いや、パンチだったと思う。ブンっって、かすめるような感じで切れたと思う。すごく強いパンチの数々と、特にカウンターが速くてすごくクリアだった。彼は速くて強いめっちゃくちゃいいカウンターを持ってる」 ──序盤は余裕の笑みを浮かべたり楽しんでいる様子でしたが、途中から朝倉選手の攻撃を受けて表情が変わったように見えました。強さや脅威を感じたタイミングは? 「うん、1Rすげえエンジョイしてたんだよ。なんかおかしくなっちゃって。だってずっと夢見てたRIZINの舞台に上がって、その一員になったっていうか、こんな一流の選手と試合が出来るなんてと。だからすげえ楽しくて、思い出してもあの瞬間が大好きだな、自分も良い動きができていたと思うから。それで“カモン! カモン! もっと速く! もっと強く! もっと打て!”って感じで、よい展開にできてたってことがすごく良かった。あの時の俺は好きだよ。そして、相手が強い攻撃を繰り出してくるなかで、“彼を打ち負かしたい”と考えるようになって、それで目つきが変わったんじゃないかな。やっぱり俺はこの仕事が好きだよ」
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