グラップリング
インタビュー

【QUINTET】桜庭和志プロデューサーに聞く、アイアンマンマッチのこと

2019/12/05 00:12
【QUINTET】桜庭和志プロデューサーに聞く、アイアンマンマッチのこと

2019年11月30日、秋田市文化会館にて「QUINTET FIGHT NIGHT 4 in AKITA」が開催された。

4チームによる5対5の団体対抗戦では、「TEAM CARPE DIEM」が2チームを破り優勝。V3を達成した。その対抗戦とは別に「Special Iron Man Match」として、「5分、どちらが多く一本を取るかを競う= QUINTET鉄人ルール」で行われたのが、桜庭和志vs五味隆典と、所英男vsミノワマンの2試合だった。

ファンを喜ばせる4選手のパフォーマンスに場内が沸いた一方、ルール&カード発表時から、リアルファイトの新たな試合形式に期待していたファンや選手からは、疑問の声が挙がった。試合後、「本誌ではそのルール発表時点からひとつの試合として認識し事前インタビューも行ったが、エキシビション的な内容の部分もあり、現在、主催者に確認中だ。もしエキシビションであれば、ほかの試合とは異なることを事前に明記すべきで、それはファンのみならずほか試合に出場した選手にとっても説明が必要な事柄だ」と記した。

そんななか、主催の株式会社ラバーランドを通じて、桜庭和志プロデューサーが電話インタビューを受けるとの連絡があった。移動中でもあり、限られた時間ではあったが、桜庭プロデューサーは、本誌の質問に真摯に答えてくれた。グラップリングが決して盛んとは言えない秋田の地で、多くの観客の目に触れたQUINTET(主催者発表1,093人)。翌日の「秋田ねわざ祭り」には160人を超える組み技ファンやアスリート、そして子供たちがセミナーに集まった。だからこそ、聞いておきたかった、あの試合について──。

──多忙でお時間があまりないなか、こうして質問を受けていただきありがとうございます。今回、「QUINTET鉄人ルール」で行われた「Special Iron Man Match」について、本誌ではカードおよびルール発表時から「試合」として注目してきました。大会前には桜庭プロデューサーにもインタビューをさせていただいて。でも大会後、本誌では「Iron Man Matchの2試合はエキシビションではないか」「エキシビションであれば、ほかの試合とは異なることを事前に明記すべきではないか」と指摘しています。SNSでもいろいろな意見が出ています。率直にうかがいます。「アイアンマンマッチ」はエキシビションではないでしょうか。

桜庭 もちろん広い意味でいうとエキシビションマッチなんですが、エキシビションというと前回まで僕もやっていた「おふざけ」のイメージが強いですよね(「QUINTET FN2」、「QUINTET FN3」で突如行われた審判団の美木航とのエキシビションマッチ。美木がそのまま着替え、エキシに臨んだ)。今回は真剣にルールを模索して、普段のスパーリングの良さをお見せできればと考えたので『エキシビション』とせず『アイアンマンマッチ』」という実験的なカテゴリーにしたんです。今回はあくまでもテストマッチですので、信頼のおける練習仲間と実験してみましたが、やはり一本で終わらないというシステムは緊張感に欠け、タップも早かったですよね。

──「公開スパーリング」は試合ではありませんし、「スパーリング」だとしても真剣勝負に見えない場面もありました。

桜庭 僕の中ではスパーリングも真剣にやっているので真剣勝負なんですけど、プロの試合でお客さんに見せるということを意識した展開になるのは仕方ないので、そこら辺を誤解されたとしたら申し訳なかったですね。自分がQUINTETで言い続けているのは「タップを大きく、お客さんやレフェリーにも判るようにしてくれ」とルールミーティングで言っていて、「我慢して怪我をしないように」と「早くタップするように」とも言っていますので、そのポリシーを自分でやって見せているんですけどね。

──……多くの人が、総合格闘技のなかでグラップリングの名場面をいくつも見せてくれた桜庭選手に敬意を抱いています。そしてこうした団体戦のQUINTETで、グラップリングを新たな形で世に出して模索していることにも。寝技に詳しくない年配の方が多い会場でも、試合で秋田出身の鈴木和宏選手と樋口翔己選手の激しく高度なスイープ合戦に大きな拍手が沸いて、感動しました。そしてミノワマンはスタンディング・リアル・フィストで会場を盛り上げました。

エキシビションは、エキシビションとして楽しめるのが、そのジャンルが豊かな歴史を築いてきた証だと思います。だからこそ、あのトーナメントのリアルファイトの「試合」とは別である「スパーリング」は一緒にはせず、事前に「エキシビション」であることを言っておくべきだと思うんです。でないと、あのルール発表からの流れだと、本誌も含め「試合」だと思っていたファンや選手は多かったと思います。そしてがっかりしたファンもいました。

桜庭 いずれにしてもQUINTETは新しいものを作っているので、ルールも見せ方も模索中なのはたしかなんです。これまでもQUINTETは大会ごとにルールをマイナーチェンジしていますし。僕の中で今回は「おふざけ」をするわけではないので「エキシビション」という言葉を使わなかった。お客さんに喜んでいただくための「試合」をしたつもりです。ただ、こだわりのある一部の人たちには「エキシビション」と書かないと誤解されてしまうのがわかったので、今後は「おふざけ」じゃなくても「エキシビション」と入れるようにしますね。僕はまったくこだわりがないので(笑)。

──取材を受けないという選択肢もあるなか、今回、指定されていた時間を過ぎても回答いただいたことに感謝します。これからのQUINTETに期待しています。

桜庭 こちらこそありがとうございました。頑張ります!

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