バカみたいにお金を使うんだったら身体を使った方がいい

――今回、5月31日(日)東京・後楽園ホールで開催される『K-1 REVENGE』の中で、兼子さんが出場するマスターズの試合が組まれましたね。
「僕も驚いたんですけれど(笑)。最初は驚きましたが、PRとしてはいいんじゃないかなと思っています」
――マスターズという部門をアピールするには絶好の機会。
「そうです。お客さんに見に来てくださいねっていうことではなく、僕と同じように出て、社会人としての実力、人力というものを出しませんか、磨きませんかっていうのを、経営者とかビジネスライフのリーダーたちにお伝えしたいですね。ぐちゃぐちゃ口で言うよりも、K-1に出てドロドロにやった方があなたの魅力が上がりますよって言いたいんです。それがマスターズの魅力だと思います」
――今回リベンジが大会テーマになっていますけれども、どう考えていますか?
「試合自体はリベンジではないんですけれど、キックボクシングに取り組むこと自体が僕のリベンジなんです。現役の時には中身のあるキックボクシングの競技ができなかったことと、自分のパフォーマンスが思うようにできなかったっていうリベンジで、K-1さんに出てるっていうのが僕の中であるんですね。
もう一つは、これは全選手に言えることですけれど、キックボクシングっていうこれだけ過激なスポーツをやっているのに、社会的に還元ができない、引退したらみんな普通のバイトしてるんですよ。引退したら注目されなくなるんです。
社会にその時の経験を生かすという、そういう方法論を知っている人もいない。それも僕が悔しく思っているところで、僕はキックボクシングの経験は社会に生かして成功した例なんですけれど、そのリベンジでもあるなという。僕は社会人としては成功しましたけれど、キックボクシングを兼ね備えた成功をしていると思っていない。なので、競技としていい成績を出しながらも、それを社会にもっと還元できているっていう、その結果を出したいというリベンジですね」
――なるほど。兼子さんはマスターズというものに対して魅力を感じて注力していきたいということですが、今後はどのように展開していきたいと考えていますか?
「僕と同じように、同じ価値観を持った経営者や社会のリーダーの人たちに出てきていただいて、 マスターズを通じて自分の価値を上げていく、そういう人たちを増やしたいですね。そこに分かりやすいものがあったらいいと思うので、僕がK-1さんにお話ししているのが、チャンピオンベルトを作ったり、ランキング制を作ったり、もしくは国別対抗戦をチームでやるような感じで、競技としても面白みを出していきたいと考えています。その中の一人一人が各企業の社長だったりリーダーだったりすることは、これまた面白くて。社会でバトルしてる人たちがK-1でバトルする、というような感じですね」
――今までのシニアのキックボクシング大会とは規模が違ってくるというか。
「規模も違いますし、価値観が違いますよね。おじさんが年齢いってるのに頑張ってるねみたいな感じも、もちろんありますよ。でも試合だけではなく、それをやっている過程に価値があるっていうか、出場するまでに頑張ってるところが社会的な信頼と結びついてくる。
そうすると自分の各企業の価値が上がるじゃないですか。そんな人がやっているんだったら、この会社に頼んでみようとか、この会社に依頼してみようっていう認知になります。さっき言ったような1000の広告費にバカみたいにお金を使うんだったら、お金を使わず身体を使った方がいいよ、ということなんです。僕は『負けたって価値があるよ』ということが言いたいんです」
――そういうお知り合いの社長さんにも声をかけてられるんですか?
「いや、まだ声はかけてないです。僕の道場の生徒には出たらいいんじゃないの? と言います。初めたばかりの人たち、全くやったことがない50代のおじさんが『兼子さんみたいに出たいから来ました』っていう人もいました」
「そうですね。僕は年2回ぐらいできたらいいな思っていて。K-1さんに提案したところ、今年は8月23日と11月29日の2大会が開催されることになりました。年に2回は毎年あるような形にしていって、ランキングを競い合う、タイトルマッチを取り合う。男性だけではなく女性部門もできたらいいなと」
――女性部門も?
「そうですね。僕のジムにも50代で出たいって人がいますから」
――ベルトがあると、やる側としては相当励みになりますね。
「違いますね。この間もK-1のスタッフさんに言ったんですけれど、頂上がない山なんて誰も登らないんですよ。頂上があるから登るんです。その頂上を目指すからみんなモチベーションが上がって奮起するんです」
――もうプレイヤーとしてだけではなく、運営の方にそういうアイデアを出しているんですね。
「勝手に案を出してるだけなんですけれど(笑)。ただ僕が申し上げたのは、さっきも言ったように頂上が分からない山なんて誰も登らないということです。そして頂上は一個じゃなくて、そこにランキングがあれば登っていく過程が分かります。階級も50kg、60kg、65kgとあって女子もあれば、頂上がいっぱいある山だったらみんな登るじゃないですか。
それでいて、その過程で負けた人も勝った人も価値がある。普通のアマチュアスポーツだと勝ちを前提にやってるものなんですけれど、シルバースポーツってそういうものなのかなと。例えば僕はアイアンマンというトライアスロンもやってるんですけれど、1レース3000人ぐらい出て、一人12万かかるんですよ。でも、年間売り上げで5億ぐらいの企業価値があると言われているんです。
アイアンマンでは、ゴールした人は全員勝者だと、そういうコピーがあるんです。順位じゃない、タイムじゃない、ゴールした人は全員勝者だっていう格言があって。30歳から80歳ぐらいの人までゴールしてるんですね。僕はそれに凄くリスペクトがあって、K-1マスターズもそうなるのかなって思っています。K-1というブランドと、K-1マスターズっていうものの価値を皆さんが理解していただければ。勝者だけが勝者じゃないんですよ。
みんな仕事をしていて時間を割いて、身を削って出るわけじゃないですか。出てもお金にならないですよ。アイアンマンと一緒で、K-1マスターズに出た人間は全員が勝者なんです。ただ、試合に勝ち負けがあるだけ。マスターズには敗者はいないと僕は思っていますね」





