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インタビュー

【UFC】メラブ戦の初黒星から再起のウマル・ヌルマゴメドフ「パッチー戦の勝ち方を見て“次はこいつだな”って」×UFC8連勝中のマリオ・バティスタ「ウマルにあそこまでレスリングを仕掛けたやつはいなかったから、良い手本になった」

2025/10/25 21:10

マリオ・ バティスタ(バンタム級8位)「肩書きで自分にプレッシャーはかけない。同じように血が流れて同じように練習してる。頭の中で相手を自分のジムのスパーに連れてきて、そこで折れていく姿を思い浮かべるんだ。俺のジムは厳しいから、あの“オーラ”もそれで剥がれる」

──かなり久しぶりの海外、とくに初の国外での試合になるという理解で合っていますか?

「そうだね。試合で海外は初めてで、海外に出たのも11歳のときにメキシコへ行った一度きりなんだ。ただ、メキシコもロサンゼルスやフェニックスと部分的に雰囲気が似ているからね。ここは全く別物に感じるよ」

──フェニックスからアブダビまでは長旅だったと思いますが、移動はいかがでしたか?

「ヒューストン経由で、そこから13時間のフライトだった。機内ではずっと寝るようにして、全体的にスムーズだったよ」

──海外、あるいはここで試合をした経験のある仲間やコーチに、時差ボケ対策や到着タイミングなどを相談しましたか?

「コーチからいろいろ聞いたよ。最近だとマーカス・マギー(バンタム級15位)もここで試合してるから、彼からも助言をもらった。早めに来て時差に合わせろってね。俺たちもそうしたし、調子はいい」

──今回の相手はウマル・ ヌルマゴメドフ(バンタム級2位)です。あなたがパッチー・ミックスに勝った流れで、このマッチアップを予想していた人は多かったと思います(※ミックス戦=2025年6月『UFC 316』で判定勝ち)。ウマルは2025年1月に『UFC 311』でメラブ・ ドバリシビリ(バンタム級王者)に敗れましたが、パッチー戦のどれくらい後にオファーが来たのでしょうか?

「そんなに時間は空いてない。1~2カ月後くらいには話が出て、そこから一気に進んだ。俺が望んでた試合だし、いちばん筋が通ってた。他の連中はだいたい埋まってたし、タイトルに最短で行くにはこのカードがベストだと思った」

──メラブ戦は、ウマルが勝っていたという見方も当時はありました。とはいえ現在では“メラブはバンタム級GOATだ”という声も増えています。あの試合、あなたはどう見ましたか?

「俺はメラブが勝ってたと思う。3、4、5Rを取って試合を掌握したし、見せ場も作ってた。コントロールもあったしね。だから俺の採点はメラブだ」

──あなたは対戦相手の研究をかなりするタイプだと過去のメディアデーでも伺っています。メラブ戦や、コーリー・ サンドヘイゲン(バンタム級4位)との試合から、今回の試合に活かせるポイントは(※サンドヘイゲン戦=2024年8月『UFCファイトナイト・アブダビ』でヌルマゴメドフが判定勝ち)

「主に見るのはメラブ戦だね。さっき言った3、4、5Rのところ。メラブはプレッシャーをかけ続けて、ウマルにレスリングを仕掛けた。ウマルにそこまでレスリングを仕掛けたやつはいなかったから、良い手本になった。要は自分のゲームプランを徹底すること。自分のベストをぶつけて、やるべきことをやるだけだ」

──「アップ&ダウンの展開になる」と話していましたが、文字どおり立ち技と寝技を行き来する、という意味でしょうか?

「両方の意味だね。パッチー戦みたいに完全なスタンドの勝負にはならないと思う。マットに行く場面も出てくるだろうし、あっちが優勢に見える時間帯もあれば、俺が巻き返す時間帯もある。お互いオールラウンドで、どの局面でも戦えるから、面白い試合になる」

──メラブのコーチのジョン・ウィットが「メラブは地道に勝利を重ね続けたマリオを尊重している。メラブも同じ立場だったから」と話していました。ここで勝てば、次はタイトルマッチだと思っていますか?

「その話は聞いたよ。王者がそれを尊重してくれてるのは嬉しい。メラブも長い道を歩んで、たしか9連勝くらいでタイトルに辿り着いたはずだろ。そういうリスペクトはありがたいし、結局はライト層も含めたファンの声が大事になってくるからね。王者にリスペクトをもらえたのはデカい」

──パッチー戦のあと、反響や生活の変化はありましたか。ジョゼ・アルド戦の後は批判の声が大きかったですが、ファンが戻った印象もあります(※アルド戦=2024年10月『UFC 307』でスプリット判定勝ち)

「SNSはちょっと落ち着いたくらいで、ほかは特に変わってない。あまりそこにフォーカスしないようにしてるし、UFCに来たときからのルーティン?毎日の流れ、週の流れ?はずっと同じ。スケジュール面で大きな変化はないよ」

──ロシアやダゲスタンの選手と戦う相手は、SNSが彼らのファンで溢れる、なんて話も耳にします。今回、DMやコメントは増えましたか?

「そうなると思うだろ? でも意外にも、まだアルドのファンのほうが多い。ロシアのファンよりも、いまのところはね。ブラジルのファンは、とにかく声がデカいよ」

──あなたは“パーティー・クラッシャー”という評判がつき始めています。ジョゼ・アルドの復帰戦を台無しにし、ベラトールから来たパッチー・ミックスも片づけた。いわゆるアンダードッグの立場、相手側にばかり注目が集まる状況は、むしろ得意ですか?

「得意ってわけじゃないけど、アンダードッグでも全然気にしない。相手がアルドだろうがパッチーだろうが“3度の世界王者”とか“前評判が凄い”とか、そういう肩書きで自分にプレッシャーはかけない。みんな同じように血が流れて、みんな同じように練習してる。俺は頭の中で相手を自分のジムのスパーに連れてきて、そこで折れていく姿を思い浮かべるんだ。俺のジムは厳しいから、あの“オーラ”もそれで剥がれる」

──昨日、ウマルは打撃に自信を見せていて、打撃に関しては自分に分があると言っていました。あなたはどこで優位に立てると思いますか?

「どこか一つじゃない。この試合は全部を使うことになる。上下に動かして、MMAの試合にしないといけない。パッチーのときと同じことはできない。ウマルの打撃はパッチーよりずっと上だと思ってるし、だからこそ全部を使う、上でも下でも混ぜていく必要がある」

──いまMMAコミュニティでは、再戦の話題ばかりです。メラブとピョートル・ヤン(バンタム級2位)の再戦が終われば、次はメラブとウマルの再戦だ、と。実際には目の前の相手はあなたなのに、あなたを飛ばして次の話をしているようにも見えます。どう感じますか?

「試合が終われば分かる。俺は流れを変える機会を得たし、この階級をひっくり返すチャンスがある。もしウマルが勝てば、しばらくは再戦の話ばかりになるだろう。メラブと、サンドヘイゲンがまた上がってきて、みたいなね。だからこそ俺が流れを変えるつもりだし、そのつもりでここにいる」

──あなたはUFCで6年、12戦してきましたが、インスタグラムのフォロワーはまだ2.6万人ほど。アルド、パッチーに勝っても“メディア向きじゃない”と言われたりもします。ウマルに勝てば、人気や露出はもっと伸びると思いますか?

「伸びるかもしれないけど、正直そこにはあまり重きを置いてない。俺は家にいるのが好きで、やることは練習だけ。派手な生活はしてないし、でも少しずつ歩み寄ろうともしてる。今回の試合が終わって、フォロワーが少し増えたら嬉しいし、タイトルショットを得る助けになるなら、メディア対応ももう少しやるよ。とはいえ、俺が集中するのは勝つことだけ。勝てば、行きたい場所に辿り着けるからね」

──コーリー・サンドヘイゲンとの再戦が組まれれば、受けたいですか?(※サンドヘイゲン戦=2019年1月『UFCファイトナイト・ブルックリン』で1R一本負け)

「もちろんだね。俺も向こうも昔とは違うファイターだし、あのリベンジを果たせたら最高だと思ってる。ぜひもう一度やりたいよ」

──UFC 323(日本時間12月7日・日)にメラブ・ ドバリシビリとピョートル・ヤンの再戦があります。ヤンの陣営は「前回は一番の武器である右手をケガしていて使えなかったが、今回は違う」と自信を見せています。今回の再戦、どう展開すると見ていますか?

「前回と同じになると思う。メラブもその間にさらに良くなってる。前と同じメラブじゃない。ここ数試合も素晴らしい内容だし、進化してる。だから俺はメラブが勝つと見てる」

──では、メラブを倒すには何が必要だと思いますか。タイトルマッチやメラブの試合を分析してきた中で、どこに糸口があると感じていますか?

「ショーン・ オマリー(バンタム級1位)との初対決でもそうだったけど、最後のラウンドにメラブはボディで効かされていた。あれは早い時間から仕掛けていかないといけない。ラウンドを通してスタミナを削るためにね。まずはそこから始めて、タックルに来たら代償を払わせる。そこからがスタートなんだ(※オマリーとメラブ・ドバリシビリの初対決=2024年9月『UFC 306』でメラブの判定勝ち)」

──あなたは「ウマルを1Rで仕留めるつもりだ」とも話していました。強力なレスリングを持つ相手に対して、1Rでのフィニッシュをどう描いていますか?

「1Rノックアウトがいちばんいいね。そう言うのは、早く家に帰れて、残り2ラウンドを相手にしなくて済むからさ。理想のシナリオはそれ。とにかくフィニッシュだ。ノックアウトで終わらせるのが一番だと思う」

──一本勝ちよりもノックアウトをイメージしている?

「そうだね。一本よりKOのほうが取りやすいと思う。ウマルはグラウンドがかなりいいから、いまの俺のプランではKOのほうが現実的だと思ってる」

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