繁那「芸術的な目で見てほしい」

関西を中心にキャリアを重ね、最近はONEへの出場など外での経験も増えている繁那。初参戦となるKNOCK OUTでどういう戦いを見せようとしているのか?
──今回はWBC ムエタイの王座決定戦で、KNOCK OUTにも初参戦ということになりました。話が来た時はどう思いましたか?
「単刀直入に、うれしかったですね。WBCムエタイは獲りたかったというのもあったので」
──繁那選手は9月にトーナメントを制してNJKF王座を獲って、このチャンスが巡ってきました。あのトーナメントを振り返ると?
「初めはトーナメントというのに抵抗もあったんですけど、必然的にやらないといけないからというのでやった結果、自分でもああやって2試合KOで勝って優勝という結果になるとは正直思ってなかったので、結果的にはよかったですね。6月の決勝の相手(藤井昴)も、前にやった時は3分3R戦ってドローとかだったので、3分5R戦ってまた判定になったり、負ける可能性も十分あったので。4月も6月も合わせていい勝ち方ができたというのはなかなか珍しいことなので、よかったと思います」
──今回、初参戦となるKNOCK OUTにはどういう印象がありますか?
「KNOCK OUTはけっこう、強い選手が多いなと思ってて。出るのは初めてですけど、全然緊張とかもないし、食える人は食ってやろうみたいな感じです。KNOCK OUTのチャンピオンとか倒せば、より日本一に近づけるというか」

──今回の相手の壱・センチャイジム選手は、NJKFでは去年、嵐選手と戦って、勝っています。そのあたりで意識したりは?
「55kgの選手なので意識はしてたんですけど、ホンマに戦うとは全く想像もしてなかったですね。僕はどっちかというと、うまいこといったら森岡悠樹選手と戦うことがあるかなというイメージはしてたんですけど、壱選手と戦うイメージは正直そこまでしてなかったです」
──実際、今回壱選手と対戦するにあたって、どういう印象ですか?
「経験がかなりあって、試合運びもうまくて強いなという感じですね。ダウンを取られたら取り返すとか、しっかり戦い切るという気持ちも強いと思うので、そこは警戒しないといけないポイントかなと思います」
──自分としては、どういう試合にしてどう勝ちたいと思っていますか?
「倒したいのは倒したいんですけど、10回やったとして、『5回勝ってたし5回負けてたような内容やな』とかじゃなくて、10回やっても、これ10回とも繁那が勝つなって思われるような試合にはしたいですね」
──最終的にはどう勝ちたいですか?
「もちろん倒したいっていうのもありますし、3分5R戦ってフルマークで勝つというのも、倒すより難しいことだと思ってるので。しかも相手のリングの試合じゃないですか。そこで5R戦ってフルマークで勝つというのも、一つの目標でもありますね」
──繁那選手はずっと大阪、関西での試合が多かったと思うんですが、去年ぐらいからは東京での試合が増えてますよね。
「そうですね。最近はもう東京か海外ばっかりですね」
──遠征試合にももう慣れましたか?
「慣れましたね。初めの方はけっこう慣れなくて、食事の面、リカバリーの面とかでも、用意してもらうのと自分でやるのとでは全然違うし、全ての段取りを自分で組まないといけないので。あとは場の雰囲気ですね。やっぱり後楽園ホールって、有名な人が戦ってきた『聖地』なので、『どういう見方されるのかな』みたいな感じで周りの雰囲気も全然違ったり、そこに慣れるまではちょっと苦しかったですね。今は十分慣れましたけど」
──地元だと単純に友達とかの応援が多いですよね。遠征試合だとアウェーな感じになると思いますが。
「やっぱり地元の方が応援の人も3倍、4倍とか来てくれるし、声援もデカいのでうれしいですけど、アウェーの中でも勝てたらすごいので、それも気合いに変わりますね」
──あと、「繁那(ばんな)」という名前はジェロム・レ・バンナから来てるんですよね。お父さんがファンだったとか?
「そうですね、お父さんがバンナ選手のファンだったのでこの名前になりました。子供の頃は格闘技とかキックボクシングとかに正直あんまり興味がなかったので、ジェロム・レ・バンナ選手の試合を見るようになったのも高校生の頃、格闘技を始めるちょっと前ぐらいなんですよ」
──そうなんですね。
「もともとは空手をやってたんですけど、寸止め空手やったんで、そこまで意識はしてなくて。でも、今思えばホンマにメチャクチャいい名前やなと思います。日本中探しても、たぶん僕ぐらいしかいないですよね」
──きっとそうでしょうね。
「噂では、ピーター・アーツから取った『アーツ』はいるらしいんですよ。でも『バンナ』はいないって聞いてるんで、特別感があってメチャクチャうれしいです。昔から特にイヤとかはなくて、珍しい名前やし、ずっと自慢の名前でしたね」

──ただ、バンナ選手みたいな戦い方ではないですよね。目指しているというわけでもない?
「そうですね。お父さんからもバンナ選手のどこが好きなのかはあんまり聞いてないんですけど、そこを目指しているわけではないですね。でもいろいろ試合映像を見たりすると、『1000年に一度のKO』(2000年4月、フランシスコ・フィリオ戦)とか言われてたりするのは、やっぱすごいなと思います」
──すごい存在だけど、ファイトスタイルについては「自分は自分」というところも大きいと。
「はい。でもバンナ選手の映像を見る前から僕はサウスポーやったし、そこは運命かなみたいに思ってます」
──この名前で注目を浴びる部分もありますよね。
「たぶん、この名前だから『おっ!』て思う人も多いでしょうし。いずれはバンナ選手ともいろいろしゃべったりしてみたいですね」
──では最後に、当日の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「自分的に売りにしたいのは、いろんな技を多用するところですね。芸術的な目で見てほしいなとずっと思ってます。自分のためだけにやってるわけじゃなくて、お客さんを楽しませるためにやってるんで、そこをまず見てほしいです。あとは自分も顔を売りにしてるんで、そこも見てほしいです。壱選手にも負けないんで」


