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インタビュー

【K-1】須藤元気・新プロデューサーの“K-1改革”とは?(前編)「戦略的なポジションを取るためには、別のポジションをトレードオフしなければいけません」[特別掲載]

2025/09/22 12:09
 2025年9月3日、新K-1プロデューサーに就任した須藤元気。プロデューサーとして迎えた最初の大会である9月7日に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催された『K-1 WORLD MAX 2025~-70kg世界最強決定トーナメント・開幕戦~』を終え、何を思ったか。プロデューサーとしてこれからやろうとしていることとは? 『ゴング格闘技 No.340 2025年11月号』に掲載されたインタビューを前編・中編・後編の3回に分けて特別掲載! 今はフェーズが変わる時期なのでは ──K-1プロデューサー就任、おめでとうございます。まさかの抜擢で驚きました。 「ありがとうございます。経緯は会見で話したように、昨年カルロス菊田プロデューサーが辞められる時に一度話がありました。でも、そこでまとまらず、今回また話があり受けさせていただきました。僕自身がK-1に忖度していたら就任した意味がないと思いますので、言いたいことを言って、面白いこと、ワクワク感、あとは幻想ですね。それらをすべて取り戻したい」 ──話題になったのは、試合数を減らすことですね。やはり試合数は多いですか。 「そう思います。前回の大会に、格闘技のことをあまり詳しくない知人を呼んでみたのですが、13時の本戦から観戦したところ17時には『申し訳ないけど帰るわ』と連絡が来て。試合内容は面白かったようですが、あまりにも大会が長くて4時間パイプ椅子に座っているのが限界のようでした」 ──とくにK-1は、7時間興行になることが最近では普通ですからね。 「試合数が20試合くらいあれば、やはり長くなります。昔のK-1は放映権が収益を支えていましたが、今はチケット収入の比率が大きくなっていると聞いています」 ──今は、キックボクシング団体のほとんどが手売りビジネスになっている印象です。須藤プロデューサーが現役の時は、選手の手売りはそれほどなかったと思います。しかし今は、直売が要になってきています。SNSの発達で、選手とファンがつながることができたり、買いやすいということも背景にあるのだと思います。 「それは、悪いことではありません。そこはむしろ継続すればいいとも思っています。でも、そればかりが中心になると内向きのイベントになってしまいます」 ──内向き? 「はい。選手のチケット直売に頼り過ぎてしまうと、身内だけの大会というか、エンターテインメントと発表会の間という位置づけになってしまう。中途半端なポジションといいますか、プロ興行とは言えなくなってくると思うんです。僕も知り合いの選手からもしもチケットを買ったとしたら、お目当ての試合を見たら帰ってしまうかもしれません」 ──その光景は、今は普通に見られます。 「でも、それをやっていたらいつまでも内向きのイベントで終わってしまいます。プロデューサーの立場でも長いと感じる大会に、はたしてスポンサーのみなさんに投資をしていただけるのかなと疑問に思いました。選手の手売りだけに頼らず試合数を減らして収益を得る。それをしていかないとK-1のブランド価値がいつまでも高まっていかないのではないかと思いました」 ──必然的にそうなったわけですから、簡単な問題ではないですね。 「たしかに簡単ではないです。でも、きっとこれまでも原因は分かっているけど、何もできなかったのではないかなと思います。変えようとしなければ、物事は何も変わりませんからね」 ──新生K-1を支えてきた選手は、倒し合いをしないとK-1が終わる、チケットを売らないと大会がなくなるという危機感があって、ここまで築いてきたと思います。 「そういう時代があったとしても、今はフェーズが変わる時期なのではないでしょうか。僕にはそう見えます」 [nextpage] まずは変えてみるということ ──時代の価値観が、また変わると。 「僕の時代は格闘技ブームだったので、結果を出せばテレビに映ることができたし、有名になる手段も明確にありました。そして、この10何年かは一時期に暗黒時代があったものの、盛り返すことができた。ボトムアップ型として正しいビジネスモデルだったと思います。でも今は逆にボトムアップ型に限界がきて、外にあまり広がらないという弊害が出ている印象があります」 ──反面、選手層は厚くなりました。 「でも見方を変えれば、一般層、いわゆる格闘技に興味がない層に届いていない現状があるように思います。一般層に届かないと有名になれないし、それこそ試合数を増やしてチケットを手売りする選手を確保する傾向がより顕著になるのだと思います」 ──おっしゃる通りです。 「ちょうど昨日、会議があったのでそのことを話したところです」 ──変革するための計画ですか? 「まずは変えてみるということです。11月のK-1から、試合数を減らします」 ──すでに70㎏世界決勝トーナメントに加え、ターザンvsリュウ・ツァー、ロエル・マナートvsアリエル・マチャドのダブルタイトル戦、レオナ・ぺタスvs横山朋哉の試合が決まっています。 「まだ決定ではありませんが、試合を何部制かに分けようと考えています」 ──なるほど。 「戦略的なポジションを取るためには、別のポジションをトレードオフしなければいけませんから、そのための改革です。僕も選手だったので、いい試合順で試合を組んでほしいという気持ちは分かります。ですが、やらなければいけないことなんです」 ──具体的には。「例えばプレリミナリーファイトが1部だとしたら、2部はワンマッチとタイトル戦でまとめ、3部に70㎏世界トーナメントを行うとか。それぞれの開始時間を明記することで、その時間に来れば見れるように工夫するだけで、長く滞在することは回避できるかなと思います」 ──これまでも3部制とか同じイベント内で分けていましたが、より明確にすると。 「その方が、目的をもって会場へ来ることができると思います。すべて見たい方は、プレリミナリーファイトから見ることができるし、入れ替え制ではなく通しでも観戦を可能したら、好きな方はずっと席に座っていられるようにするとか。それぞれのニーズに合った観戦のやり方を提案するのが、必要かなと思っています。我慢して何時間も待つことなく、自分で選んで2部から見るとか、そうした多様性を提案していけば長いとか試合数が多いといった不満は少しずつ解消していけるのかなと思います」 ──チケット料金の設定をどうするのかという問題はありますが、観客に選択肢を与えるのは新しいやり方ですね。 「頭からダメとか、無理とか、そうした考えを持つ前にまずはやってみること。一番大切なのは、ここだと僕は思っています。そうすることで見えてくることはたくさんありますし、失敗してもいいんですよ。また改善してトライすればいい。人間ですからつい変化を恐れてしまう気持ちも分かりますが、それだと何も変わりません」 ──変化を恐れて何も変わらない、変えられない、ホメオスタシス(恒常性)と言われるものですね。でも、意外とやってみたら成功なんてことも実際にありますよね。 「そうなんです。失敗のリスクを恐れてやらないだけで、僕はやればいいのにと思ってしまいます。そうやって現役時代からトライアンドエラーでやってきました」 (次回に続く)
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