DEEP☆KICK 752025年9月7日(日)大阪・テクスピア大阪
▼ダブルセミファイナル2 DEEP☆KICK-57.5kg王座決定トーナメント決勝 3分3R延長1R〇戦闘員1号(SHOCKER☆EXARES)TKO 2R 1分17秒 ※セコンドからのタオル投入×荒川ルシファー大夢(心将塾)※戦闘員1号が第6代王座に就く。
当初、メインイベントで吉岡龍輝が保持するDEEP☆KICK-63㎏級王座に挑戦する予定だった嵐舞は減量中に体調を崩し、病院に救急搬送されたため、契約体重をクリアした吉岡の不戦勝による王座防衛となった。
そこでダブルセミファイナル2に組まれていた戦闘員1号と荒川ルシファー大夢の間で争われるDEEP☆KICK-57.5㎏王座決定トーナメント決勝がメインイベントに繰り上がった。
DEEP☆KICK3戦目でビッグチャンスを得た戦闘員1号は大勢の戦闘員たちと入場し、リング内を占拠。荒川陣営を取り囲む。大昔、子供向けの等身大のヒーロードラマで正義の味方にじりじりと詰め寄る悪役軍団の姿と重なり合う。
一方の荒川もキャラ的には完全にヒールながら、悪の濃さでは完全に戦闘員1号が上回っていた。
ドラマの中での戦闘員はヒーローに蹴散らかされ、いつのまにか映像からいなくなってしまう。いわば、ヒーローと怪人の一騎討ちの盛り上げ役にすぎないが、この日の戦闘員1号は一味違っていた。
試合開始直前、戦闘員のマスクを脱ぎ捨て素顔になって観客席をどよめかせるや、「イーッ!!!!」という奇声を発しながら、力強い右フック、左ストレートで荒川にプレッシャーをかけていく。
第1R開始当初は右のインローの連打などで1号を削ろうとしていた荒川だったが、時間が経つにつれ後退を余儀なくされてしまう。こうなると戦闘員1号の勢いは止まらない。どんどん手数を増やす形で、ラウンド終了間際には右ストレートで先制のダウンを奪う。
続く第2R、荒川は左ミドルで必死に試合のリズムを組み立て直そうとするが、戦闘員1号が掴んだ距離とリズムはそれを上回っていた。コーナーサイドでの攻防で体を入れ換えると、荒川にパンチの連打を浴びせ、最後は「左」一発で荒川の体を糸が切れた操り人形のようにグシャリと倒れ込ませた。
もうダウンカウントの必要はなかった。新王者となった戦闘員1号は勝ち名乗りを受ける前、再びマスクをかぶり正体不明の怪人に戻りマイクを握った。
「僕はこんな感じで精神的に弱い人間。(過去には)いろいろイジメにあったりもしていました。でも、格闘技と出会って何とかここまでやってこれた。ここまで負けたり勝ったりしてきたけど、(練習仲間でRISEのランカーでもある)大森隆之介のおかげでチャンピオンになることができました」と話し、母親への感謝も口にした。
ドラマの中では感情を見せない戦闘員1号も、リングの中では人の気持ちを動かす。こんな魅力的なやられ役は見たことがない。
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▼ダブルセミファイナル1 DEEP☆KICK-51kg王座決定トーナメント決勝 3分3R延長1R〇松本愛斗(月心会チーム侍)TKO 1R 1分42秒 ※レフェリーストップ×龍太郎(VALIENTE)※松本が-51kg第5代王座に就く。
KING陸斗の王座返上によって開催されたDEEP☆KICK-51.5㎏王座決定トーナメント。勝ち上がってきたのは松本愛斗と龍太郎だった。
松本はプロのキャリア全てをDEEP☆KICKで積み重ねてきた生え抜きで、今年3月には陸斗が保持する王座に挑戦するチャンスを得たが、その時点での実力差は如何ともしがたく2RKOで敗れた。
対する龍太郎は今回でキャリア20戦目というベテラン。過去に2度王座決定トーナメントに出場して、いずれものちに王者となる選手に敗れている。龍太郎にとって今回は3度目の正直だったが、その夢を20歳の松本は木っ端みじんに打ち砕いた。
1R開始早々、リング中央を陣取ろうとする龍太郎に右フックでダウンを奪う。その当たり方は「チョコンと」という感じだったが、こんな感じの方が相手には効くケースがある。
なんとか立ち上がってきた龍太郎だったが、ダメージが残っているのは明らか。松本はハイキックでグラつかせると、再び右フックを浴びせ2度目のダウンをとる。
そして、とどめは左ハイ。1R1分43秒、見事なTKO勝ちで第5代-51.5㎏王者となった。新王者となった松本は「このベルトを獲って終わりじゃない。次のステップに向かって、もっとトレーニングして強くなる」と決意も新たにしていた。
初代王者・塚本望夢、第4代王者KING陸斗のように、他団体での活躍が期待されるようなDEEP☆KICK出身ファイターになれるか。
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▼メインイベント DEEP☆KICK-63kgタイトルマッチ 3分3R○吉岡龍輝(及川道場/王者)不戦勝×嵐舞(TEAM TEPPEN/挑戦者)
嵐舞が体調不良により計量を行えず中止、前日計量をクリアした吉岡龍輝の不戦勝となり、吉岡の初防衛となった。
セミファイナル前、当初メインイベントでDEEP☆KICK-63㎏王座防衛戦を行なう予定だった吉岡がリングイン。マイクを持ち、「この試合を楽しみにしていた方々に申し訳ない気持ちでいっぱいです。いまは嵐舞選手の早期回復を願っています。いま自分は5連勝中。これからもっと上のステージで闘いたい。(具体的にいうと)RISEの上位ランカーと闘いたい。次戦の僕に期待してください」と現在の心境と今後の展開について述べた。
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▼第8試合 DEEP☆KICK-65kg挑戦者決定戦 3分3R延長1R×大野祐志郎(ALL-WIN team 華王州)判定0-2 ※26-27×2、27-27○大前洸貴(INFINITY KICK BOXING GYM)※大前がタイトルマッチ挑戦権を獲得。
過去にタイトル挑戦の機会を得るも失敗。さらに体重超過で試合を飛ばしたこともある大前洸貴が、階級を2つ上げてDEEP☆KICK-65㎏挑戦者決定戦に臨んだ。
対する大野祐志郎は“KO配達人”の異名を持つ郵便局員。今回がDEEP☆KICK初登場ながら、これまでに35戦(22勝)のキャリアを誇るマッチョなベテランファイターだ。
過去の大前は存在感を感じさせないファイターだったが、この日は一味もふた味も違った。試合開始早々、全身からやる気を漲らせて大野に向かっていく。
第1R序盤まで大野はテンカオを合わせるなど、対戦相手のプレスにうまく対応していたが、大前は右アッパーを織り交ぜた連打でどんどん前へ。プッシュしてスリップダウンを奪う場面もあった。このラウンドは手数とリングジェネラルシップで明らかに大前が優勢だった。
続く第2Rになると、試合は動く。大前は突っ込んで連打を浴びせ、右ストレートで先制のダウンを奪う。さらにコーナーに大野を釘付けにして連打ではやくも2度目のダウンをとる。
「大前のKO勝ちは時間の問題」誰もがそう思った刹那、大野はカウンターの左を浴びせ、ダウンを奪い返す。まだ試合時間は30秒以上ある。これで勝負の行方はわからなくなった。明らかにダメージが残っている大前に対して、大野はテンカオ、ワンツー、ローを畳みかける。
第2Rまでのオープンスコアは18-16(二者)、18-17で3者とも大前。しかし大野の逆転も棄てきれない。そんな思いを抱きながら迎えた第3R、王座挑戦に執念を燃やす大前は右目を腫らしながら前へ。蹴りやヒザで対抗しようとする大野を勢いで押しやった。以前の大前だったら、対戦相手にそのままもっていかれていたかもしれない。大前の意地とプライドが垣間見えたラウンドだった。
判定は2-0で大前。試合後、リングに招き入れられた現王者のTETSUは「ナイスファイト。めっちゃおもろい試合だった。最近自分はこのベルトの価値を下げているけど、12月の試合では大前選手をぶっ倒してDEEP☆KICKで一番盛り上がる試合をする」と早くも王座防衛を約束した。一方、大前は「大野選手は化け物でした」と対戦相手を評価しつつ、「12月はいま以上にしっかり仕上げてリングに上がる」と王座奪取をほのめかした。ただでは済まないタイトルマッチになるか。
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▼第7試合 DEEP☆KICK-53kg挑戦者決定トーナメント決勝 3分3R延長1R〇中田史斗(究道会館)TKO 1R 2分49秒 ※レフェリーストップ×大輝(DK9)※中田史斗がタイトルマッチ挑戦権を獲得。
今大会は当初予定されていたメインイベントが中止になったとはいえ、激闘が続く神興行だった。その中でもDEEP☆KICK-53㎏挑戦者決定トーナメント決勝に出場した中田史斗は個性の強い存在感を発揮していた。
トーナメント決勝を争った大輝に試合開始早々距離を狭めいきなり勝負を仕掛ける。ハンドスピードが速いワンツーで打ち合いを誘う。大輝のセコンドからは「付き合うな」の声が飛んだ。大輝のガードが高くなると、中田はローやミドルで削っていく。
回って距離をとろうとする大輝に対して右をジャストミート。相手は両腕でガードしているようにも見えたが、先制のダウンを奪う。とどめは左。大輝は大の字になったままピクリとも動かなかった。1R2分49秒、中田のTKO勝ちだ。
これで12月14日開催のDEEP☆KICK 76で棚澤大空が保持する-53㎏王座への挑戦が決定した。リングに上がった棚澤が「今年最後の試合を倒して盛り上げる」と口にすれば、中田は「2×8は?」と、掛け算ができないとカミングアウトしている棚澤に質問を浴びせ場内を盛り上げていた。25年のラスト興行で年間ベストバウトが生まれそうな予感。
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▼第6試合 DEEP☆KICK-70kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R〇進撃の祐基(京都亀岡キックボクシングジム)TKO 3R 0分57秒 ※ドクターストップ×榎木友星(ビンチェレあべの)※進撃の祐基がトーナメント決勝に進出。
惜しい、あと一歩。DEEP☆KICK-70㎏挑戦者決定トーナメント準決勝、榎木友星は十中八九勝利をモノにしているように見えた。
公式プロフィールだと進撃の祐基との身長差は5㎝ながら、リング上で対峙するとそれ以上あるように映る。しかしながら榎木はそんな差など感じさせることなく、サークリングしながらチャンスと見るやミドルやローを当てていく。
2R終盤には右をスマッシュヒットさせ、さらに試合の流れをたぐり寄せる。2R終了時のオープンスコアは三者とも20-19で榎木。もうあとがない祐基はラストラウンド、進撃の巨人と化した。
打ち合いの中、左のテンカオで榎木の顔面をカット。その傷口は想像以上に深く、リングドクターは試合のストップを宣言した。3R57秒、祐基の逆転TKO勝ちだ。結果的に祐基が勝負強さを見せた一戦となった。挑戦者決定トーナメント決勝は12月14日のDEEP☆KICK76で組まれる。
(文・布施鋼治/写真・石本文子)
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〈試合結果〉
▼第5試合 DEEP☆KICK-70kg契約 3分3R△龍威地(NJKF ARENA)判定1-0 ※29-29×2、30-29△財津大樹(TEAM BEYOND)
▼第4試合 DEEP☆KICK-55kg契約 3分3R×潤貴(KTF)判定0-3 ※28-30×2、28-29○ワンチャナ・ハマジム(HAMA・GYM)
▼第3試合 DEEP☆KICK-57kg契約 3分3R○ROSVIN(ONE LINK)判定2-1 ※29-28×2、28-29×岡村大成(TeamFreeStyle)
▼第2試合 DEEP☆KICK-46kg契約 2分3R×上田樹那(山口道場)判定0-3 ※28-29×3○辰巳璃央(TeamFreeStyle)※辰巳に「組んでからの連続攻撃」「ホールディング」「バッティング」で減点1有り。
▼第1試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R〇KING澪斗(ROYAL KINGS)TKO 1R 1分48秒 ※レフェリーストップ×井端刻也(健心塾)
〈オープニングイベント〉NEXT☆LEVEL提供試合
▼OP第3試合 -55kg契約 1分30秒2R×片山孝陽(EX ARES)判定0-2 19-20、19-19、18-20○小谷真一郎(ALL-WIN GYM)
▼OP第2試合 -40kg契約 1分30秒2R○北川大翔(ROYAL KINGS)判定3-0 ※20-19×3×辻畑陽気(Determination)
▼OP第1試合 -45kg契約 1分30秒2R×吉儀永翔(SOLARE KICKBOXING GYM)判定0-3 ※19-20×2、18-20○伊賀陽翔(NJKF TOP GUN GYM)