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インタビュー

【RIZIN】フライ級GP1回戦勝者・扇久保博正「僕にとってタックルは逃げじゃない」×ホセ・トーレス「この気候がなければ体重を落とせていなかった」=『超RIZIN.4』

2025/07/30 15:07

ホセ・トーレス「片足を掴んで倒したころでその先が何もなかったから──」

「今まで負けた後にインタビューを受けたことがないのでなんだか新しいですね(苦笑)」

──試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。

「まだ現実をしっかり受け止めている最中ですが、率直に言えば、自分に対して不満があります。自分自身に関しては、思ったより、自分が望んでいたほどアグレッシブにできなかったですし、本当に言い訳みたいなものを言い出したらキリがないので、あまり言わないようにはしますけれども、本当に今回、体重を落とすのはすごく大変で、それだけはちょっと言わせていただきたいんですけど、実際それも影響したと思うので。

 試合自体は、扇久保選手がすごく賢い戦いをしたなと思いますし、非常にテクニカルな試合だったと思います。試合後半で、ダメージにならないだろう、みたいなコツコツした打撃を出してきていて、ああいう細かい部分も、やっぱり自分がアタックする、攻撃をすることを阻むために手を出していたものなので、ああいうものは効果ないように見えて、実はすごく効果があったと思います。本当に素晴らしい選手だなというふうには思いますし、扇久保選手は本当にいい選手だと思う反面、この試合はやっぱり自分が勝ったのかなというふうに思っていましたし、2、3Rにいい打撃を当てていて、彼はサバイブする、生き残るのに必死だったという感覚もあったのですが、そういった中で、まあいろんな現実を受け入れるのに今、時間がかかってるんですけども、まあ体は無事ですので、前を向いて進むしかないと思っています」

──扇久保選手の対戦前のイメージと実際に戦ってからイメージが違ったところはありますか。

「一つ予想外だったものは、まったく様子見をせずに扇久保選手がボディを狙ってきたことが本当に予想外でした。自分はプレッシャーをかけながら戦うファイターなので、当然そのボディを狙って、ガス欠を狙うっていう部分はセオリーではあるので、非常にそういう部分でも賢いなと思いますし、あの最初の3発、本当に様子見もせず、いきなりボディに直接打ってきたので、そこは完全な予想外で、いつもみたいな動きが見られなかったので、そこにはちょっと面食らったという部分もあります。

 その後、1Rの途中から自分は扇久保選手が何やりたいのかに気づいて、そこに対応してから、扇久保選手もハイを入れてきたりとか、対応してきたんですけれども、やっぱり1Rの途中から作戦を変えてからはそんなに僕はダメージはもらってないと思うんです。頭に1、2発ぐらいもらって。あとは足への攻撃だったりはありましたけれども、基本的には何にもされてないな、という気持ちあるんですよね。で、あとはグラップリングの展開でも、もう少しポジションを変えたり、隙間ができるように、自分がミスするように誘うための動きをするのかな? と思ったら、意外とそんなに動かなかった。

 テイクダウンしてからもそこに押さえつけるっていうことをしたんですけれどもそこも予想外でしたね。それが自分の柔道だったり、バランスだったりという、その能力があるからこそ動けなかったのか分からないんですけど、もしかしたらカウンターで出すヒザが脅威だったのかも分からないんですけれども、多分彼がクリンチに来た時に、よりダメージを負ったのは自分自身だと思うんですね。彼の方がクリンチを仕掛けてきて。で、そこに自分が打撃を与えて、彼がダメージを受けて、またリセットっていう形になったと思うので、本当に先ほども言いましたけれども、やっぱり現実をちょっとまだ受け入れる作業だっていう感じなので、本当に彼はクリンチをして、賢く戦って、勝ちを得たのですけれども、まあ残念ながら自分としては負けてしまった上に、ちょっとつまんない試合になっちゃったのかなということで、残念だと思います」

──減量のSNSが注目されたことが、扇久保選手のチームの目に触れ、それで向こうに作戦を変えられてしまった可能性はありますか?

「まあその可能性はあるか分からないですけど、いずれにしろ彼はすごく賢い選手なので、彼はいつも接戦での判定ですごい僅差で勝てる理由は彼が賢いからだと思います。技術で勝っているとかではなく、すごく頭脳で戦うからだと思います。自分も、もし自分自身と戦うのであれば、いろんな予定だったり時差だったり、ウェイトカットだっていう部分を考慮するとプレッシャー・ファイターに対してボディを狙っていくことは自分でもそうやりますし、扇久保選手はそれを実践しました。非常に賢い選手だと思います。

 当然メラブ(・ドバリシビリ)とやるんだったら、頭を狙うよりもやっぱりボディから攻めていかなければいけないと思いますし、そういう意味で、彼はもともと賢いし、そういう戦略をやったのだと思います。あとは、日本は本当に美しいところですが、夏で暑くてすごく湿気が多いですが、この気候がなければ自分は体重を落とせていなかったと思います。土曜日に日本に来た時は70キロあったんですけど、そこから毎日、1日2回、朝と夜に走って13キロ落としました。一度もジムで練習はしてません。なのでそういった気候の部分もあって、今回減量できたのですけれども、本当にキャリアのなかで一番辛い減量だったと思います。

 一箇所、東京を走っていた道があるんですけれど、すごい上り坂があって。もう本当に最後の一本がどうしてもできず、体がもう、筋肉が動かなくてできないと、途中でやめてしまうかと、もう全部をやめようかなっていうふうに思った時もあるんですけれども、チームと一緒にそこを乗り越えて、日本の坂も乗り越えて、ここまで来れたとは思いますので、本当にとにかく厳しかったですし。あと日本ではフアン・アーチュレッタが体調オーバーして、すごく嫌われているような印象があるんですけれども、アーチュレッタは自分の良き友人なんですけれども、自分と彼は違う。体重は約束したら必ず作ります。そういう思いも込めて今回は戦いました」

──あの判定はすごく難しいとは思いますが、見ていて思ったことがひとつあり、扇久保選手はすぐシングルレッグに入って、シングルをずっと取れていたので、自分のリズムが作れたかな、と思います。逆にトーレス選手はあそこまで掴ませてレンジとかでコントロールせずに足を取らせたのは、なぜなのでしょうか。

「そうですね。基本的には自分は怠け者なので、そこの対応はあんまりしないという感じだったのですが。でも自分のスタイルとしては、すごく前屈みな前重心のボクシングタイプのスタイルで打撃を出すのが好きなので。あと基本的に自分の前足を掴むというのは一番簡単な作業になると思います。

 ただ彼はその、掴んだところで何もその先がなかったという部分がありますので、彼が掴んでる間に自分は何発も打撃を当てて削っていたと思っているのですが。時にはすごく手応えのあるヒザとかも当てましたけど、そこの、彼がしてきたことに対して、自分ももう少し色々とできたら良かったかなとは、後付けで思いますけれど、まあ実際、体が重くて思うように動かなかったという部分はありますので、彼としては、いい拾い勝ちというか、いいように使ったんじゃないかなと思います」

──今後の展望・目標を教えてください。

「格闘技に関しては、プランは無いですね。ただ、日本にあと3日間いますので、31日に帰国するんですけども。自分としては5月30日に戦って、実家に戻って、で、しばらく休めるかなと思っていたところ、RIZINから電話がかかってきて、すぐファイトキャンプに入ったので、自分としてはまだここのところ全然休めていないっていう部分があるので、本当にあの一日だけでもいいから、何もしない日を作りたいなというふうに思っていて。自分としては、何もしないで食べて太って、気分が良ければ、ええ、それがいいのかなと。そういう日にちが1日でも2日でももらえればいいかなと思いますし。自分はそうする権利があるのかなというふうに思ってますんで。そういう日を楽しみだなっていうふうに思います。

 まああとはRIZINの次戦の投票システムがどうなるのかちょっと分からないんですが、もしかしたら敗者復活みたいのがあるのかもしれないという話も聞いていますので、そこに期待をしながら、自分は本当に負けたと思っていないので、あとは自分が今、Xの方で、判定についてトレンドしているという話も聞いたので、そもそも自分がこのグランプリに入れたのも、Xの数のおかげですし、まあ、今回この判定でXがバズっているのだとしたら、またもしかしたらそういうチャンスをもらえるのかなと思いながら、今は過ごします。

 追加の情報なんですけど、8月2日は自分の誕生日でして。えっと、23歳でプロデビューしてから10年間、一度も誕生日に家族と過ごしていなくて。今回初めて、10年ぶりに家族と誕生日を過ごせると思いますので、それはひとつの自分に対してのプレゼントだと思ってます。日本でちょっとした休暇を楽しんでから実家に帰って母親の料理を食べて、1週間ちょっと過ごしてからメキシコシティに戻って、次の試合のために準備したいと思います」

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