2025年7月19日(日本時間20日)米国・ルイジアナ州スムージー・キング・センターにて開催される『UFC 318: Holloway vs. Poirier 3』(U-NEXT配信)の会見が行われた。
メインイベントでは「BMFライト級選手権試合」(5分5R)として、地元ルイジアナ出身のダスティン・ポワリエ(米国・36歳)が引退試合で、マックス・ホロウェイ(米国・33歳)が持つBMF(Baddest Mother Fucker)ベルトに挑戦する。
▼BMFライト級選手権試合 5分5Rマックス・ホロウェイ(米国)26勝8敗(UFC22勝8敗)5位 ※UFC勝利数22(歴代3位)ダスティン・ポワリエ(米国)30勝9敗(UFC22勝8敗)6位 ※引退試合、UFC勝利数22は歴代3位
両者は3度目の対戦。1度目は2012年2月の『UFC 143』で、UFCデビュー戦のホロウェイを、ポワリエが1R 腕ひしぎ腕固めで極めて一本勝ち。
2戦目は2019年4月の『UFC 236』で「UFC世界ライト級暫定王座決定戦」として、フェザー級王者のマックス・ホロウェイが、ライト級で4連勝中のポワリエと5年ぶりに再戦。スタンドでもダメージを与えたポワリエが判定勝ちで暫定王座を獲得している。
両者の前戦は、ホロウェイが3連勝から2024年10月にイリア・トプリアに3R KO負け。ポワリエは、2024年3月のブノワ・サン=デニ戦でKO勝ち後、6月にイスラム・マハチェフのダースチョークに敗れている。
今回、BMF王座が賭けられた3度目の対戦は、同王者のホロウェイが一矢報いるか。それとも地元のポワリエが、ベルトとともに有終の美を飾るか。U-NEXTから届いた会見の一問一答を紹介する。
ダスティン・ポワリエ「俺のプランは──最初に俺が地面を指差して、相手が殴りに来たらダブルレッグで寝技勝負だ(笑)」
──これがキャリア最後のメディアデイになりますが、今どんな気持ちですか?
「ちょっと不思議な気分だな。普通のファイトウィークみたいに感じるんだけど、減量やインタビュー、試合のことが常に頭の片隅にある中で、“これが最後なんだ”ってふと思う瞬間がある」
──さっきブレンダン・アレン(ミドル級11位)が「家から通ってる」と言っていましたが、あなたはそういう選択肢は考えませんでしたか?
「無理だな。入っているスケジュールが多すぎるし、何度も往復するのは無理だ。数日間は家でチームと過ごして、自分のジムで練習して、昨日こっちに来たんだ」
──昨日のマックス・ホロウェイ(ライト級5位)とのフェイスオフ、何か感じたことは?
「アイツ、デカくなったな(笑)。でも、ああいう場で向き合えたのはいい気分だった。家族との思い出のあるニューオーリンズで、しかもあの教会の前ってのが最高だよ」
──試合の入場曲はもう決まりましたか? ヒントをもらえますか?
「ジェームス・ブラウンとリル・ウェイン、両方だ。ウェインが一緒に歩くしな」
──ジェームス・ブラウンは譲れない?
「当たり前だろ。俺は代償を払って“ボス”になったんだから、最後にこれを変えるなんて無理だ。あの曲を聞いて、あのバイブスを感じてからじゃないと戦えない」──今回のトレーニングキャンプでは酒もやめて、徹底的に仕上げたそうですね?
「そうだな。90日以上、酒もマリファナもせず、完全にシラフだった。肉とベリー、たまに野菜。人生で一番仕上がったし、今までで一番軽い体重でファイトウィークに入った」
──今回の勝利者インタビューはジョー・ローガンじゃなくて、ダニエル・コーミエーが担当するそうですが、それについては?
「ローガンが良かったけど、コーミエーもレジェンドだし、ルイジアナ・スポーツの殿堂入りもしてる。ニューオーリンズでルイジアナの男同士、最後に話せるのは最高だよ」
──試合自体について、マックスは初めてKO負けした(vs.トプリア)後で、耐久性に疑問の声もありますが、どういう展開を想定していますか?
「耐久性ってのは遺伝や生活習慣とか色々な要素が絡むから、実際に戦ってみないとわからない。だから俺の目標は、試合で確かめることだ。俺はずっと言ってるけど、これは13年かけて3回目の対戦で、お互い違う時期、違う男として戦ってきた。今回も全く違う戦いになる。マックスは殿堂入りにふさわしいレジェンド。すごいことを成し遂げてきたし、これからもそうだろう。彼のUFCデビュー戦の相手が俺で、俺の引退試合が彼っていうのは、まるで運命みたいだな」
──引退を決めた選手が「毎日やることがなくて寂しい」と話すこともありますが、あなたは“自分で決めて引退する”立場ですよね。試合後の翌日、自分が引退したことに満足していると思いますか?
「正直、分からないな。実際にその時を迎えてみないと。ただ一つ言えるのは、きっとどこかで肩の荷が下りるだろうってことだ。子供の頃からずっと戦ってきて、いつも練習やコンディション、相手が何してるか、最新のテクニックとか……ずっと頭のどこかに戦うことがあった。それが無くなるんだ。もちろんこれからもトレーニングはするし、フィットネスも続けるけど、もう最高レベルで戦わなくていい。その重圧はもう無くなる。それが良いことか悪いことかは、やってみないと分からないけどな」
──ここまで“これまでのキャリアを振り返って”という質問も多かったと思いますが、実際はまだホロウェイ戦が残っている。ちょっと気が散ることもありますか?
「そうだな。実感はまだあんまりないし、“キャリアを振り返るのはまだ早い”って感じてる。でも、たまに忘れてた昔の試合の映像とかを見て“こういうこともあったな”って思い出すことはあるよ。俺はただ夢を追いかけてる普通の男だと思ってるから、自分がやってきたことを“すげえな”って感じることはあんまりない。でも今回、ファンからの声とかリアクションをたくさんもらって、すごく嬉しかった」
──もし試合が激闘になって、残り10秒でマックス・ホロウェイが地面を指差して殴り合いを誘ったら……その時はギロチンを狙いにいきますよね?
「もちろんさ。俺のプランは最初に俺が地面を指差して、相手が殴りに来たらダブルレッグテイクダウンで、グラップリング勝負だ(笑)」
──今回、地元ルイジアナのアカディアナやラファイエットの人たちが会場に駆けつけてくれることについては?
「最高だよ。俺は裕福な家庭でもなんでもないし、これまで世界中で試合してきたけど、地元の人たちはなかなか見に来れなかった。今回はニューオーリンズで、車ですぐ来れる距離だから、家族や友達、ファンが実際に俺の試合を見られる。俺の最後の試合で、それが叶うなんて特別なことだよ」
──実際にニューオーリンズでの試合だと実感したのは?
「昨夜かな。寝る前にAirbnbで手続きをしてる時に“ああ、ほんとにこれが最後の試合なんだ”って思ったよ。でも、今がそのタイミングなんだと思う。俺はこのスポーツに引退させられたくない。自分の意志で去りたいんだ」
──引退マッチがこの場所であることは、試合に特別な感情を加えてますか?
「間違いなく、100%そうだ。このニューオーリンズの空気、引退マッチ、そして素晴らしい相手……すべてが特別に感じる」
──まず最初に、質問の前に……本当にありがとう。ルイジアナを代表してきたこと、誇りに思ってます。あなたが最後の試合をここでやるって、最高だと思います。ルイジアナで育った中で、何か印象に残ってることは?
「格闘技で言えば、2008年にニューオーリンズのスーパードームで試合したことがあるんだ。リッチ・クレメンテが主催したイベントで、車の展示会でケージを設置して試合をやった。あのスーパードームで戦ったのは、もしかしたら俺だけかもしれない。あそこでニューオーリンズ・セインツ(NFL)の試合を観て育ったから、地元の仲間たちの前で戦えたのはすごい思い出だよ」
──ルイジアナの人たちって、他とは違う特別な魅力があると思うんですが、それって何だと思いますか?
「ハードワークと粘り強さだな。子供の頃から、努力して手に入れろっていうのが身についてる。俺のファイターとしての根っこにはそれがある。毎日の地道な努力、それが俺たちルイジアナの人間なんだ」
──もし今ここにいてほしかった人がいるとしたら、誰ですか?
「祖母だな」
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ダイヤモンドはプレッシャーの中で生まれる。俺はそういう状況で輝く。アンダードッグでいることが、俺の強さだよ
──この20年近く、MMA界に大きな影響を与えてきましたが、引退後にどんな形でスポーツに関わっていくつもりですか?
「スポーツに恩返しはしたい。でも、ゼロからジムを開いて子供たちに教えるっていう情熱は正直あんまりない。今は、すでにキャリアのある選手にちょっとしたアドバイスをしたり、何か加えたりするのが好きだ。それに、ESPNの解説席とか、そういう形でスポーツに関わるのも楽しいと思ってる。完全に離れることはないよ。アメリカン・トップチームにも通うつもりだ。俺にとって格闘技はライフスタイルだから。髪が真っ白になって、股関節がぶっ壊れるまでマットには立ち続けるつもりだ」──キャリアを振り返って、MMA界に残したいものは?
「俺の名前が対戦一覧に載った時、みんな“これは絶対に激闘になる”って思ってくれる。それが俺のスタイルだ。ごまかしはしない。与えられた状況の中でできる限りの準備をして、全力で戦ってきた。だから、俺のことは“戦士”として覚えていてほしい」
──あなたの試合以外のことを少し聞かせて下さい。イリア・トプリア(ライト級王者)がチャールズ・オリベイラ(ライト級3位)をKOした時は、どう思いましたか?
「別に“絶対ない”とは思ってなかったけど、やっぱり驚いたよ。みんなもそうだろ? チャールズがあんな風に倒されるのは初めてだったし。止められたことはあっても、完全に意識を飛ばされたのは見たことがなかった。それに、イリアの連勝もすごい。俺もファンだし、あいつの試合は必ず観てる。言った通りのことを全部やってるし、まだ若い。無限の可能性があると思う。あいつは本物だ」
──イリアの次の相手は誰がいいと思いますか?
「ライト級はトップがずっとごちゃごちゃしてるからな。ジャスティン・ゲイジー(ライト級4位)がいいんじゃないか。もしイスラム・マハチェフ(前ライト級王者で、ウェルター級に転向予定)が勝ったらウェルター級でイスラムと戦うって話もあるけど、正直それは無茶だろ。イスラムはデカいし、イリアはそんなに大きくない。でも、あいつなら誰でも倒せる力はあるし、45kgから170kgまでどこでもKOできる。でもああいう体格で、あのレベルのレスラーと戦うのは未知数だろ。まずはライト級で防衛戦を何回かやるべきだな」
──じゃあ、イスラム・マハチェフがウェルター級に上がることについては?
「あいつはデカいから、ウェルター級でも問題なくやれると思う。階級を上げれば、減量のストレスも減るだろうし、きっとあの階級に馴染む。王者になれる力は十分にある」
──ジャック・デラ・マダレナ(ウェルター級王者)と戦ったら?
「試合の最初の数分がすべてを決めると思う。ジャックがどれだけテイクダウンから立てるか、どれだけイスラムを自分から引き離せるか。ジャックはデカいし、アスレチックだから面白い試合になると思うよ。楽しみだ」
──最後の試合、地元に戻ってきて、ホロウェイとの三戦目。しかもBMF王座がかかってる。これに勝ったら、どんな気持ちになりますか?
「夢が叶ったって感じだろうな。ルイジアナで最後の試合、そこでグローブを置く。UFCデビュー戦ではリル・ウェインの曲で入場したし、ラストもウェインと一緒に歩く。この夢を追いかけて、家族には素晴らしい人生を与えられた。自分自身も多くを学び、ビジネスを築き、生涯の仲間を得た。ルイジアナで勝ってBMFのベルトを巻いて、自分の州に飛行機でなく車で帰る。まさに絵に描いたような結末だよ。もし勝てたら、俺は永遠にBMFだ」
──“ザ・ダイヤモンド”というニックネームに込めた意味は?
「このあだ名は元UFCファイターのティム・クレイダーがつけてくれたんだ。アマチュア時代もプロになってからも、しばらくはニックネームなしで戦ってたんだけど、ある日ティムが“ダイヤモンド”って言ったんだ。ダイヤモンドはプレッシャーの中で生まれる。俺はそういう状況で輝く。アンダードッグでいることが、俺の強さだよ」