2025年6月21日(土)神奈川・横浜BUNTAI『OURO presents RISE WORLD SERIES 2025 YOKOHAMA』のメインイベントにて、ISKA K-1ルール世界ストロー級(-51.5kg)王座決定戦3分5Rでハマダ・アズマニ(モロッコ)と対戦する那須川龍心(TEAM TEPPEN)のインタビューが主催者を通じて届いた。
那須川にとっては初の“世界”の名が付くタイトル戦。アズマニは3階級上のISKA K-1ルール世界フェザー級王者で、身長167cm、体重57kg。戦績は23勝(3KO)8敗1分。
兄・天心に“こいつマジか”と思ったこと
――決戦10日前にガチスパーリングをしていることに驚いたのですが、いつもこんな感じですか?
「今日が試合前、ラストのスパーリングだったんですけど、いつも通りです」
――動きが非常に良いように見えたのですが、ご自身ではどのように感じていますか?
「いつもより動きが良くて、疲労は溜まっているんですけど、キレの具合がピッタリ合ってきて良い感じです」
――具体的にはどんな所が良い感じなのでしょうか?
「減量していて体が軽くなってくるので、そのキレが出てきますし、パンチの威力は落ちるんですけど、その分キレが出てきたかな」
――今回はISKAの世界タイトルがかかった試合で、試合時間が3分3Rになりましたけど、その辺りはどうですか?
「3Rでも良いですけど5Rを経験してみたかった気持ちもあります」
――やっぱり3Rと5Rだったら作戦の組み立て方が違ってきますか?
「そうですね。前に5Rの試合をやった時も1Rで終わってしまったので、今回5Rで決まった時に、“5R目ぐらいまでに倒そう”っていうプランを自分の中で立てていたのが、3分3Rに変わってしまったので、プランは違ってきますよね」
――そのプランというのは綿密に立てられている感じですか?
「綿密にプランを立てる感じではないですけど、漠然としたイメージで5Rを戦ったら自分がどうなるのかを知ってみたかったですね」
――ちょうど3日前にはお兄さんの那須川天心選手がボクシングで世界前哨戦をクリアしましたけど、良い感じでタスキを渡された感じはありますか?
「そのタスキを受け取ったからには繋げないといけないですね。今までそうやって繋げてきたので。それと今TEPPENが良い流れで来ているので、その流れにも乗りたいしっていう感じです」
――天心選手は試合後に、龍心選手へエールを送ってくれましたか?
「エールは特になかったですけど、(減量中に)目の前でパンを食われましたね(笑)」
――ちなみに何パンを食べられたんですか?
「自分の所にタイ人のトレーナーがいたんですけど、その人が地元に帰ってしまって、そのお見送りの時に、地元に有名なパン屋さんがあるからそこに寄って帰るわって言って、パンを買って来てそのパンを目の前で食われました。“こいつマジか”って思いましたよ」
――現在の体重は何kgくらいなのでしょうか?
「今の体重は、朝に起きて残り5kgくらいですね」
――それは予定通りの体重ですか?
「はい。タイトルマッチの時から減量のトレーナーにもついてもらって、それの通りにやっているので、今順調です」
――相手の階級がちょっと上だったと思うのですが、ご自身でフィジカルトレーニングなどの対策っていうのはやってきたのでしょうか?
「対策っていうのはないですけど、普段からTEPPENで階級が上の選手とやっているので、今日2R目にスパーリングした選手も57.5kgで戦っている選手ですし、そういった選手とかと普通にやっているので問題はないですね。あと今回2週間タイでトレーニングをやってきたんですけど、そこの選手がほぼ階級上の選手で、そことも普通にやってきたので、全然問題はないかなという感じです」
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ヴェノムトレーニングキャンプへ
――そのタイでの練習はどこのジムでやられていたんですか?
「パタヤのヴェノムトレーニングキャンプという所ですね」
――じゃあMMAの選手とかもいたんですか?
「いました」
――そういう選手ともスパーリングはやってきましたか?
「やりました。結構野生的な動きというか、自分の意識している間とかリズムとかを無視して入ってくるので、本当に経験しておいて良かったなと思います」
――何が1番勉強になりましたか?
「今やっている自分のリズムですかね。日本人のリズムと海外の選手のリズムとか戦い方が全然違うので、そこを試合で初めて経験するのではなくて練習で経験できたので、そこが大きかったですね」
――試合前のこのタイミングでタイに練習に行くというのは、今回が初めてですか?
「初めてですね」
――ギリギリまでタイに行っていた感じがしたのですが、その辺りは調整方法が変わったりして不安などはありませんでしたか?
「めちゃめちゃ不安でしたよ。そこで減量をしなければいけないですし、せっかくの美味しい料理も食べれないし、『うわー』ってなりましたね。だから今度は試合がない時期に練習で行こうかなと思っています」
――それでもこのタイミングで行こうと思ったのは、やっぱり対外国人選手に慣れるという事が、1番の理由でしたか?
「そうですね。タイミング的にもここしかなかったし、TEPPEN GYMには色んなタイプの選手がいるんですけど、今回の相手選手みたいなタイプが全くいないので、今後も役に立ちますし、経験するなら今のタイミングがベストなのかなというのがありました」
――ヴェノムのチーム的にはタイ人はほとんどいないですよね?
「いなかったですね」
――多国籍なチームだと思うのですが、色んなタイプの人と練習できましたか?
「ダゲスタンの選手だったり、ジョージアの選手だったり、どこの国か分からない選手とかともやりました」
――今回の対戦相手も、ある意味何をやってくるか想像がつかない所もあるという点では、そういった人たちと初見で肌を合わせたというのが良い経験になりましたか?
「タイに行った初日に練習をして、全然リズムが違うということに面を食らったので、それを経験できたというのはめちゃくちゃ良かったです」
――ナビル・アナン選手とかもいましたか?
「いましたし、その弟もいました」
――一緒に練習はしましたか?
「ナビルとは練習しなかったですけど、その弟とはマスをしましたね」
――タイにいる時に風邪を引かれたと聞いたのですが、どのタイミングで引かれたのですか?
「先週の金曜日の練習終わりぐらいに風邪を引いたんですけど、月曜日がラストの練習だったのに、それも出れず、帰る日までずっと風邪を引いていて。帰国してから2~3日くらい復帰するまでかかったので、1週間くらい風邪を引いていました」
――それは不安になる環境でしたね。
「減量をして免疫が下がって、しかも慣れない場所でっていう最悪のコンディションが重なっている中で、寒暖差もあったので、急な風邪でしたね」
――それを踏まえて今日のスパーリングを見ると、完全に治った感じがしますね。
「風邪は完全に治ったので、そこの不安はないですけど『もしかしたらコロナじゃないかな』という不安があったので、日本に帰ってから速攻で検査をしに行って、陰性だったので安心しました。『もしかして試合欠場もあり得るかも』とか想像して不安でした(笑)」
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51.5kgでの試合はこれが最後かな
――今回の試合に関しては、初のビッグマッチでのメインイベントというところで、改めて試合が近づいてきた今の心境はいかがですか?
「試されているなっていうのは正直なところで、“今後こいつをメインで使えるのか使えないのか”っていうのがRISEからの試練なのかなって思いました。やっぱドSなのは一貫しているなと思います」
――ガチな感じがしますね。
「RISEも今『RUF presents 200万総取りトーナメント“GACHI!!”』をやっているじゃないですか。やっぱりガチだなって思いますね」
――キャリア的にも天心選手がISKAのタイトルに挑戦した時期と被ったりしていて、“こういう試合を受けていく時期だ”という自分の中での位置付けやテーマを持っていたぐらいのタイミングでしたか?
「天心が獲ったタイミングと近いですし、天心が初めてISKAの試合を経験した時に、試合後に救急車で運ばれていたイメージがあるので、『今回は何があるか分からないぞ』って自分の中で強く思っています。そこの危機感は強く持っているので、見ておいて良かったなと思いました」
――今回は初参戦の外国人が相手というところで、日本人対決とか皆んながよく知っている選手とやるメインとはちょっと違って、龍心選手的にも本当のメインというようなシチュエーションになりました。その辺りについては「自分でも敢えて背負って戦う」もしくは「あまり考えないようにしている」という、どちらの考えでいますか?
「今までの相手が、日本人のお客さんにも結構名前が知られていて、そこに『那須川龍心は通用するのか』という位置付けだったと思うんですけど。今回の相手は全く知らないので、自分の実力もそうですし、“見せ方”というか『どんなやつか分からない相手に、どう見せられるのか』が試されていますよね。本当に戦いですね。色んな戦いがあります」
――良い意味で皆の期待を裏切るようなパフォーマンスをやってみせて、龍心選手の言われている“革命”とか、もっとRISEを変えていきたいとか、もっと自分の高みを目指していきたいという感じですか?
「やっぱり期待を超えていかなければいけないですし、期待以下の試合というのは自分でもしたくないです。倒すのが全てではないですけど、倒した方が見え方も分かりやすいですし、どう倒すかっていうのは今回の鍵かなと思います。だけど自分のパンチ力は過信せずに、タイミングで倒しに行こうかなと思っています」
――RISEも6月と8月にビッグマッチがあって、RIZINやお兄さんのボクシングとか、色々格闘技のビッグマッチがありますけど、その中でも自分の試合でインパクトとか自分の存在を見せたいという気持ちはありますか?
「51.5kgでの試合はこれが最後かなと思っているので、これを獲って階級を上げて、どんどん上の選手に挑戦していって、年内には53kgのベルトも獲りたいと思っているので、それに向けての1戦かなと思っています」
――会場で天心選手のボクシングの試合を見て、どう思いましたか?
「ボクシングをする能力の安定感が増してきているなと思いました。最初は緊張しましたけど、途中からは安心をして見れたので、安定感が増してきていますよね」
――それが“遊び”の部分の話での梃子になっているかもしれないですね。
「ボクサーとして完成されてきているので、その中に“天心流”をどこに入れるかって話していたので、自分もキックボクシングのスタイルの中に“龍心流”を入れていかないといけないなと思うので、そこは見ていて勉強になります」
――天心選手が昇竜拳(ジャンピングアッパー)を出していましたが、ご自身では今回の試合で何か出したい技などはありますか?
「ちょっとやってみたいなと思いましたね。自分は『はじめの一歩のカエルパンチじゃん』と思って、やってみたいなと思ったので、何かやります」
――天心選手のカエルパンチの時に、天心選手が「もうちょっと自由に戦っていった方が良いんじゃないか」という話をして、龍心選手も意気投合していたと思うのですが、その辺りはどうでしたか?
「試合終わりに控室で天心と会って、色々話して『遊びを入れたほうがリズムが出てくるよね』って感じだったので、俺もそうなのかなと思ってやってみたら、遊びを入れたりした方が自然と力も抜けて力みが取れるので、そういうのは兄弟なので感覚が一緒なんだなと感じます」
――カエルパンチはマスの中で出したりしていたんですか?
「ふざけてやっていましたね」
――天心選手がボクシングで「パンチ力がない」など色々言われて、本人も反省するような所があったと思うのですが、キックボクシングではパンチでKOする試合も多くあったと思います。お兄さんのパンチ力に関しては龍心選手はどのように思っていますか?
「ないわけではないと思うんですけど、(キックボクシングでは)蹴りがあってのパンチだし、パンチがあっての蹴りなので、そこを制限されてパンチだけとなると、どうしてもディフェンスもしやすいですし、そこからどう当てていくかという工夫が必要なので、天心はそこに苦戦しているんじゃないですか。だから上手く打ち抜けないというか、ミートできていないと思うので。そこが自分は全く分からないので、天心がそこの技術を上げていけばもっともっといくんじゃないかなと思います」
――龍心選手は今4連続KO勝利をしていますが、ご自身のパンチ力をどう思っていますか?
「タイミングだと思っているので、別にパンチ力があるわけではないと思うんですけど、パンチ力があると思っちゃうと、どうしても試合中に力んでしまうので、そこはパンチ力があると思わないようにして、タイミングで倒す意識をしています」
――SNSの方でお兄さんと同じように日記をつけていると思うのですが、ご自身に何かプラスになる事はありますか?
「日記に書くことによって、練習していた時にどう思っていたとか、普段の日常からすごく目を向けられるようになりました。それで振り返る時間も自然とできるので、自分の身にもなりましたね」
――ふと見ると、襟足が長くなってきていますが、これは天心選手の髪型に寄せていっているのでしょうか?
「結構それは言われるんですけど、ずっと伸ばしてみたかったんですよ。襟足を育成している時に天心もちょうどあの髪型にしていたので、タイミングが被っちゃいました(笑)。あの髪型にはできないですけど、今回の試合では短くしようかどうしようかなって悩んでいます」
――また試合の時には違った髪型が見れるかもしれないんですね。
「もしかしたら短くするかもしれないですし、長いままかもしれないです」
――天心選手が言っていた「遊んだ方がいい」というのは、天心選手が自分自身に向けて発言した言葉だったんですか?
「天心と話していて『やっぱり遊びに行った方がいいのかな?』って聞かれたんですけど。僕は、僕とマスとか対面シャドーをやっている時の天心が1番強いと思っていて、何やって良いのか分からなくなるくらい色々なことをやってくるんですよ。その時ってやっぱり弟っていうのもあるから、ちょっと遊びを入れながらできて気が楽じゃないですか。そういう部分の遊びとかを話していて、『自分はそっちの方がやりづらいかな』っていうのを話しました」
――相手として、そっちの方が良いんじゃないかと言ったわけですね。それをフィードバックして、練習にも遊びを入れた方が良いよと話したんですね。
「そうですね。それで振り返って『自分もやってみよう』と思ったらハマった感じですね」
――龍心選手はお兄さんの髪型をどのように見ていますか?
「あれをカッコいいとは思えないですね(笑)。けど、めちゃくちゃ似合っていない訳でもないので、ちょっと様になりつつあるじゃないですか。それはすごいなと思いますね」
――“ダサいことをカッコよく見せる”というのがすごいという事ですか?
「あの髪型に自信を持っているじゃないですか。だからそこの度胸はすげーなって思います(笑)」
――食べ物はささみチーズカツが好きなんですか?
「めちゃくちゃ好きです」
――減量期は食べれていないですか?
「試合が終わった後にいつも食べています」
――今はどれくらいささみチーズカツ断ちしているんですか?
「2カ月前くらいから軽く節制し始めて減量しているので、2カ月くらいは食べてないですね」
――小さい時からそれが1番好きだったんですか?
「小さい時からたまに出てきたので、それが好きですね」
――最後にファンへメッセージを。
「6月21日の試合に来てくれる方々、今回自分が初めての大きい会場でのメインという事で、自分自身試されている1戦だと思うので、期待以上の勝ち方をしてしっかりかまそうと思うので、皆さん応援をよろしくお願いします」