2025年6月22日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館『THE KNOCK OUT 2025』(U-NEXT配信)にて、KNOCK OUT-UNLIMITEDスーパーフェザー級王座決定戦3分3R延長1Rで倉本一真(リバーサルジム新宿MeWe/MAJESTIC)と対戦する、栗秋祥梧(KNOCK OUT クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。
昨年獲得したBLACKフェザー級王座も返上し、いよいよUNLIMITEDの道を邁進しようとしている栗秋。連日MMAの練習で揉まれているという彼は、初代王座の懸かったこの試合にどう臨もうとしているのか?
キックボクサーという枠を外して
【写真】昨年12月の元LFAフライ級王者カルロス・モタ戦は厳しい内容となった──12月の横浜武道館大会の後、ずっとSNSに「試合したい」という投稿をしていましたよね。結局半年ぶりの試合となったので、けっこう溜まるものがあったのでは?
「途中で試合の話が出たりなくなったりして、そのたびにモチベーションが上がったり下がったりしてたんですよ。確実な試合オファーが来た時にしっかりモチベーションを上げようと思って、落ち着いてましたね。あんまり先に上げ過ぎちゃうと、テンション下がっちゃうので」
──そして、最終的に念願のUNLIMITEDでの王座決定戦が決まりました。
「はい、一つの目標ができたなとは思いました。ただ、意外と冷静ではありますね。上げすぎることもなくという感じで」
──スーパーフェザー級ということなんですが、階級は上げるんですね?
「BLACKフェザー級の王座も返上しましたし、階級は上げようと思っています。MMAの練習で体重が増えたというのもありますし、MMAの減量方法もあると思うので、そこから新しく自分を作っていこうかなと思っています。キックボクシングの時は減量期間が短かくても普通に落とせたんですけど、体が大きくなって「あ、この期間では落とせないな」と思ったので、ベルトを返上しようと思ったのもあります。キックボクシングの試合は今のところやるつもりはないですし、今後はUNLIMITEDとかMMAでやっていきたいと思っています」
──もっと以前のお話では「近い将来キックボクシングを離れて、イコール格闘技からも離れて違う世界に行きたい」という感じでした。でも今は、格闘技の中で別の道が見つかったわけですね。
「そうですね。KNOCK OUTのベルトを獲って、形に残るものができてうれしかったというのはあったんですけど、もう自分の中ではキックボクシングはやり尽くした感がありましたからね。その分もあって、UNLIMITEDという道が見つかって、さらにそのタイトルマッチが組まれたのはうれしいです」
──何度もお聞きするようですが、そんなにUNLIMITEDが魅力的なんですね。
「本当に通用しないんですよ。キックボクシングでどんなにポテンシャルがある人でも、MMAに転向したら全然通用しないという例も多いじゃないですか。それがMMAの厳しさだと思うんですよ。自分もこれまでキックの試合ではポテンシャルを生かして自分の得意なもので勝負して、練習しないで勝ったりしてたんですけど、MMAでは練習でさえ、何もできないんですよね。本当にゼロに戻されているという感覚が面白くて、ハマりました。本当に新しく自分を作っているというか」
──なるほど。
「『運動神経はずば抜けていい』とか言われるんですけど、そういうのすら通用しないんですよ。そこをゼロから作るというのが、今ハマっているところで。それがキックボクシングでできるかといったら、自分の中ではそう思えないですし。だからMMA寄りの戦い方で、なおかつMMAの選手からすると戦いづらい戦い方をやりたいなと思っています。だからこそUNLIMITEDが面白くなるし、そういう武器をこの半年間、作ってきました」
──では、12月にカルロス・モタ戦で負けたことすらもいい経験になっている?
「そうですね、あの時はやっぱりナメてたので。気が抜けてたというか…本当にケンカだという覚悟ではやってたんですけど。その覚悟も忘れちゃいけないんですけど、やっぱりちゃんとした技術は必要なんですよ。タックルの技術、タックルを切る技術もそうですし。そこが勝敗が変わってくるポイントでもあるし、そこに気づかされた試合だったので、よかったと思います」
──今回の王座決定戦の相手は倉本一真選手です。12月には重森陽太選手と戦いましたが、あの試合はどう見ましたか?
「うーん…『メッチャ投げられてるな』としか思わなかったですけど(笑)。今見返しても、『何でこういうことをしなかったんだろうな』というのは思うんですよ。MMAの選手って、距離が遠いんですよね。その中で自分が仕掛けようとすると、四つになったりタックルされたりするんですけど、そういう間合いが分かってなかったと思うんです、それは自分も含めて。そう考えると、ものの1ヵ月も練習したかどうかぐらいの“重にい”があれだけ戦ったのはすごいなとは思います。そういう面では、自分はキックボクサーという枠を外して、MMAファイターとして今取り入れているもので戦いたいなという気持ちがあります」
──では、今までのキックでの試合やモタ戦までで僕らが見ていた栗秋祥梧の戦い方とは、全然違うものになる?
「はい、全然違うと思います。今はキックボクシングの練習は全くやってなくて、MMAの選手たちとしかやってないんですよ。クロスポイントには行ってるんですけど、隣でMMAの練習ばっかりやってて」
──打撃はこれ以上磨かなくても大丈夫ということですか?
「まあ、そうですね。ただ週2日はKNOCK OUTクロスポイント渋谷に行って、代表のソニーさんというフランス人のトレーナーにミットを持ってもらってはいます。ソニーさんはもともとMMA選手のミットも持っていた人なので。でも、打撃しかやらないと通用しないので、打撃以外の部分でも勝負できるように磨かなきゃというのを一番に思ってますね。打撃は今まで死ぬほどやってきたので、あとはタイミングとかを磨けばいいかなと。キックボクシングでは一発当たれば倒せてたんですけど、UNLIMITEDやMMAではそうじゃないなというのを痛感してるんですよね。前回のモタ戦みたいに、一発を持っていても使えない時もあるし。タックルにガンガン入られれば、得意の打撃も封じられるというか。そこを見越して、そういう状況になってもちゃんと立てるような練習をしています」
──やはり見る側としては、強烈な投げを持つ倉本選手に対して、栗秋選手は「投げさせないようにしたいのか」というのが一つの焦点かなと思うんですが。
「全然そうは考えてないですね。『投げてください』という感じです(笑)」
──そうなんですか!
「『投げられないようにしよう』と思うから、“重にい”みたいに固まっちゃうんですよ。僕は柔軟に対処するので、怖くないです。だって、投げが得意な選手に対して、絶対に投げさせないというのは無理ですからね」
──まあ、そうですよね。
「周りから見て『投げられるのか、阻止するのか?』みたいな感じの方が面白いのかは分からないですけど、自分は今回の試合が決まる前から投げられる練習、その後の対処の練習もしているので、まあ、投げるなら投げてくださいという感じです」
──投げられることがあっても、そこから打ち勝つ練習をしていると。
「はい。今回この試合が決まって、重点的にそういう練習ばっかりやってます。『組まれて、こういう展開になったらこうしよう』とか『組まれる前にこうしよう』というのを、KRAZY BEEの選手たちに見てもらっています」
──では最終的にはどういう勝ち方がしたいんですか?
「狙っているのは本当にKOなんですけど、何で倒すかというのは決めていなくて。今回は本当に、トータルで勝ちたいですね。組んでも勝ちたいし、組んでからの展開も作っていきたいです。あくまで自分の経験なので」
──モタ戦の前の中村優作戦(24年6月)の時とも、心構えは全然違うわけですか。
「全然違いますね。あの時は何も知らなくて自分にとっては未知の世界で、イケイケだったのもありますし(笑)。それに中村選手は組みの選手じゃなかったですからね。その分戦いやすかったし、打ち合ってくれるって分かってたので。今回はそうはいかないし、逆に向こうは『打ち合いにしたくない』と思ってると思うので。そういう展開を想定して、ずっと練習させてもらっています。ありがたいです」
──今度こそ、本当にUNLIMITEDらしい試合をして、倒して勝つ自信がある?
「あります。今のチームに支えてもらって、気持ちの面でも『負ける気がしない』と思えるようになっています」
──勝てばいよいよ初代チャンピオンということになります。このタイトルを獲って、ガンガン先に進みたいという気持ちがあるわけですよね?
「そうですね。MMAもやりたいですし、そこは倉本選手と一緒で、MMAもUNLIMITEDも並行してやっていきたいという気持ちがあります。ベルトを獲ることをゴールにしちゃうと、僕は飽きちゃうので(笑)、それ以上のものをやっていきたいし、むしろUNLIMITEDでそれ以上のものを作っていきたいです。そこは山口元気会長に全部任せているので」
──繰り返しになりますが、聞けば聞くほど「格闘技から離れる」と言っていた頃とはモチベーションが全然違いそうですね。
「違いますね。最近、『イキイキしてるね』って言われることが多いんですよ(笑)。僕、練習で1回も勝ったことがないんですよ。いつもケチョンケチョンにされてるので。でもそれが楽しいんですよ。だから今回の試合は、心配せずに見てくれっていう感じです」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「相手も相当強い選手だと思いますけど、それに負けないぐらい僕も強くなっているので、そこを見てほしいですね」