MMA
コラム

【ONE】いかに選手を育成し、レベルアップに繋げるか──ONE Championshipと修斗の「パートナーシップ契約」について

2019/01/29 00:01
【ONE】いかに選手を育成し、レベルアップに繋げるか──ONE Championshipと修斗の「パートナーシップ契約」について

3月31日の東京・両国国技館大会で日本に初進出するONE Championshipが、プロフェッショナル修斗およびアマチュア修斗と複数年にわたる「パートナーシップ契約」を結んだことを1月25日、プレスリリースにて発表した。

その翌日の1月26日、AbemaTVの番組制作拠点である渋谷区のChateau Amebaにて、秦アンディ英之ONE Championshipジャパン代表、坂本一弘サステイン代表、佐藤ルミナ日本修斗協会理事長が、同契約についての会見を行った。

25日のリリースでは、主に下記4点が発表されていたが、会見では、今回のパートナーシップ契約に至った経緯、その詳細が3氏によって説明された。

◆2019年1月以降に新たにプロフェッショナル修斗世界王者を戴冠した選手は、自動的に「ONE Championship」の契約選手になることができる。(※修斗で防衛戦を行うことも可能)

◆全日本アマチュア修斗選手権の優勝者は1年間、シンガポールに拠点を置くメガジム「EVOLVE」へ、奨学生として招聘される。

◆「ONE Championship」は、今回のパートナーシップを契機に、修斗の興行をサポート。同時にマーケティング/プロモーション/経営などのノウハウを提供する。

◆修斗は今後行われる「ONE Championship」日本大会開催をサポートする他、引き続き選手スカウティングや推薦などを積極的に行なっていく。

上記に加え、会見で新たに明らかになった点は、以下の通り。

●ONEと修斗のパートナーシップの提携期間は3年間。

●全日本アマチュア修斗選手権の優勝者が1年間シンガポールのEVOLVEジムへ奨学生として招聘される、そのサポートの詳細はこれから決定。最大期間が1年間で、選手の仕事などの状況から、日本とシンガポールを行き来するなど、個々で期間は異なる。

●自動的に「ONE Championship」の契約選手となるのは世界チャンピオンのみ。修斗世界王者以外の選手が他団体を選択することは可能。

●ONEとの提携により、修斗のルールが変わる可能性は現時点ではないが、「これまでの修斗は良いと思えば変えてきた。今後も同じで、計量における減量の水抜き規制などは参考にしたい」(坂本氏)

●プロ修斗の活性化として、VTJを復活させたり、ONEから選手を借りることができれば招聘していく。

北米を拠点とするUFCの日本大会が開催されず、UFCも積極的な日本人選手との契約を行っていないなか、さらに海外強豪選手の招聘も困難な状況で、いかに日本で世界レベルの選手を育成していくか。

ビジネスと繋げて人材育成から取り組んでいくことはもはや必須の状況で、アマチュア修斗からプロまでのピラミッドを持つ修斗が、ONEの投資を呼び込んで今回の契約に至ったことを、選手はどうレベルアップに繋げるか。

修斗には「世界最高峰」に挑戦を続けてきた歴史がある。

UFCではなくONEなのか、と見る向きもあるだろうが、まずは日本のトップ選手でも結果を残すことが難しくなってきたアジアで、しっかりと底上げをする必要がある。同時に、日本での大会の質も上げ、キャリアアップできる厳しい試合機会を増やすことも求められる。すでにONE効果か、『SHOOTO 30th ANNIVERSARY TOUR 開幕戦 Supported by ONE Championship』と大会名が変更された27日の後楽園大会では、充実したカード編成もあり、熱戦が多く生まれ、ONEをモチベーションのひとつに挙げる選手もいた。

もちろん、北米の狭き門を目指す選択が可能となるキャリアを積む選手も現れるだろう。そのためにも、高いレベルでの切磋琢磨の環境ができることをプラスととらえ、力をつける選手が多く生まれることを期待したい。

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◆坂本一弘サステイン代表「次へ進むために」

「チャトリさんはムエタイや柔術をやっていて、私自身も選手をやっていたこともあり、格闘技のバックボーンがある点で共通しているのですが、ONEを視察させていただいたときにチャトリさんの『選手ありき』という言葉が印象的でした。

プロ化30周年を迎えた修斗は世界で一番古いMMA競技であり、アマチュアを基盤としたピラミッド構造があります。アマチュアの全日本大会の優勝を目指して、選手たちが過酷な戦いをしていることをチャトリさんに説明したところ、チャトリさんからは『アマで優勝した選手をEVOLVEで1年トレーニングさせてはどうだ』と、すぐに明確な答えを提案されたことに驚き、チャトリさんの頑張る選手たちを応援する気持ちに感銘を受けました。そして、これまで修斗は『良いものは良い』と採り入れてきた歴史も踏まえ、次へ進むために、今回のパートナーシップ契約を結ぶことになりました」

◆佐藤ルミナ日本修斗協会理事長「修斗と共通するものを感じた」

「チャトリさんは選手のことをすごく思ってくれている方で、MMAをビジネス・スポーツとして長く続くものにしたいという思いがあり、修斗と共通するものを感じました。全日本アマチュア修斗優勝者のスカラシップ(奨学生)のこともありがたいですし、ONEのタイ大会の会場の雰囲気やスタッフの様子を見て、信用できるイベントと感じたので、具体的にこうなった次第です」

◆秦アンディ英之ONE Championshipジャパン代表「WIN-WINの関係に」

「私は過去5年間、世界最大手のスポーツ調査会社(ニールセンスポーツ)に勤めていました。様々なスポーツの現場を見てきて感じるのは、いかに成功するためのエコシステム(※新たな技術の導入や様々なアイデアの結びつけを企業が単独で行うのではなく、それぞれが得意とする領域の技術やノウハウ、知見を持ち寄って事業を発展させていくこと)を構築するかが重要です。日本における格闘技界の基盤を作る上で、選手ありきの環境を作ること。今回のパートナーシップ契約は、どちらかが乗っ取ったり、覆いかぶさったりするものではなく、お互いが伸びる、WIN-WINの関係にしていきたいと思っています。選手の育成、飛躍を含めて経営面、マーケティングやスポンサー獲得のノウハウを共有しながら発展できればと思います」

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